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写真展 silent 「田園(pastorale)」

 2024年4月25日~4月29日に大阪イロリムラで写真展silentを開催しました。 
 昨年ある展示を見た時に、「自分の好きなものとモデルさんの写真を組み合わせればもっと写真に広がりが出るのではないか?」と思い、すぐに閃いたのがベートヴェンの交響曲第6番「田園」もモチーフにして作品を作ることでした。
 クラシック音楽はタイトル無しの番号だけの曲が多く、音楽そのものが表現(絶対音楽と言われます)とされ、ストーリーに寄りかからない解りにくいものになっています(聞く人の感情と想像に委ねてるとも言えます)。
 ベートーヴェンは19世紀初頭、フランス革命と市民階級の台頭という社会状況の中で芸術音楽への道を切り開き、芸術家としての社会的地位と報酬を要求した最初の人でした(それ以前のモーツァルト、ハイドンなどは作曲職人でした)。
 その中にあって田園交響曲はタイトルの付いた表題音楽という比較的解りやすい曲で、自然の中での人間の豊かな感情の芽生えと自然への感謝が謳われています(ベートーヴェン自身は絶対音楽だと言い残してます)。
 コンサートで演奏される機会も録音も多く、日本では人気の交響曲です。
 
 こちらが展示作品になります。

 田園交響曲をモチーフにしようと閃いた時に、「日本の田園と言えば水田」「水田と言えばお米」と思い、水田とモデルさんの写真を組み合わせて日本人としての田園を作品にしようと考えました。
 日本人を育んで来た土地と水とお米(稲穂)を田園交響曲のモチーフに乗せることによって自然の中での人間の感情の動きと自然への感謝を表しました。
 交響曲の楽章ひとつで風景と人物を一枚ずつ交互に配置し(風景と人物を上下で分けると世界が分断されるような気がしました)、自然と人の感情が交わるように構成しました。
 風景は夏の琵琶湖岸の棚田で台風の到来を挟んだ時季に撮っていますが、人物は撮った季節も場所も異なります。普遍的なものを表すのにそういう事はあまり関係がないように思います。
  
 以前からきちんとした写真展らしい展示をしたいと思っていたので、A3額装(今回初めて額をレンタルしました)、マットはオーソドックスな白にし、ステートメントを作りました。
 
 こちらがステートメントになります。

 今回は写真もポートレイトも知らない人たちからの質問や感想がとても面白かったです(イロリムラで開催した狙いはここにありました)。
 
 モデルは清瀬エイミさんにお願いしたのですが、彼女を選んだ理由は僕の写真を好きだと言ってくれるからです。単に写しているだけに見える写真も彼女の力がなければ撮れなかったですし、意味が解るようで解りにくい撮影に助言もしてくれて、大変感謝しています(ポートレイトというよりは僕の写真の中に入ってもらう形でした)。

 大規模グループ展のような華やかさはありませんが、極少人数グループ展の醍醐味、地に足が付いた展示。
 
 反省点もありますが、得るものが大きい展示でした。

 曖昧な人間の「こころの揺らぎ」みたいなものを撮りたい、鑑賞者の心に余韻が残るものを作りたい。

 シンプルが一番難しい。

「ポートレイトという枠を越えたい」

 見に来て頂いた皆様、ありがとうございました。

 ※silentについてはこちらに書いています。

 ※交響曲第六番「田園」についてはこちらをご覧ください。
  ネットで検索すれば沢山記事が出てきます。


 

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