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ゴジラを飛ばした男の物語

 今日は、散髪に行った後、図書館で借りていた「ゴジラを飛ばした男 85歳の映像クリエイター 坂野義光」を読んだ。

 坂野義光氏とは、特撮ファンの間では、ゴジラシリーズ第11作「ゴジラ対ヘドラ」(1971年)を監督したことで有名な方だ。
 この作品、本のタイトル通り、ゴジラが唯一放射熱線で飛行しただけでなく、ゴジラシリーズで後にも先にもない、文章で書いても伝えきれないほどぶっ飛んだ映像表現が賛否両論を巻き起こした作品なのだが、この本には、坂野氏が生まれてから、助監督時代の経験、「ゴジラ対ヘドラ」の制作の様子だけでなく、その後のお仕事や、「GODZILLA ゴジラ」(2014年)のエグゼクティブプロデューサーとして参加する経緯について、かなり書かれていた。

 この本を読んでいて面白かったのは、「ヘドラ」を作って以降の、坂野氏の仕事についてだ。

 例えば、ネットによく「ゴジラを飛ばして、プロデューサーの田中友幸の逆鱗に触れた」という風に書かれていることだ。
 確かに、試写後の反応や生前のインタビューで、「ヘドラ」に何かしら不満を持っていたのは間違いではないのだが、それ以降のいきさつを読む分には、特段険悪な関係というわけでもなかったようだったのは興味深い。

 それ以外にも、東宝映像(現・東宝映像美術)の企画部長時代に、アニメ制作を手掛け、しくじったものの、それ以降、東宝がアニメに力を入れるきっかけになったと書かれていたのも面白かった。
 今や新海誠監督作品をはじめ、様々な劇場アニメ作品を作っている東宝だが、だいぶ前に読んだ本か何かで、東宝はそもそもアニメに対して、ほとんど理解がなかったという証言があったのと、東宝チャンピオンまつりまで、アニメの上映ラインナップがなかったことを知っていたので、東宝のアニメに対する意識が変わり、現在に繋がる様が、まさか特撮関係の本で読めるとは思わなかった。

 この本では、邦画が斜陽産業になり、東宝を離れて映画以外の分野で幅広く活躍しながらも、自らが描くべきものを突き詰める作家の姿を見ることができる。

 YouTubeにタレントや声優が参入し、様々な企業や個人がクラファンやオンラインサロンをし始め、ど素人が入り辛くなったと感じていた僕にとって、この本はとてもためになった。

 自分が見せたいもの、伝えたいもの、それを作りきる技術があれば、どんなものでも必ず誰かが観て、喜んでくれることを、これからも信じて突き進もう。

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