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町田でいただく職人のケーキ【アンカド】

人口43万人のベッドタウン、町田。
ここは東京なのか、それとも神奈川なのか。県境だけでなく欲望と喧騒が入り混じる混沌の街だ。

そんな街に私の行きつけのパティスリーがある。

『アンカド』だ。

2年前にケーキ好きの友人から、町田にすごいお店を見つけたんだと言われ足を運んだ。そして人生最大級の衝撃を受けたパティスリー。

今回はそのアンカドの山根シェフに取材をさせていただき、ガトー6品のこだわりを教えていただきました。


イヴェール

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新作のイヴェールはバニラとアーモンドのケーキ。
去年のクリスマスケーキとして販売されていたものに改良を加え、プチガトーとしてショーケースに加わった。

構成は
・バニラのガナッシュ
・タヒチ産バニラを使用したマスカルポーネのムース
・アーモンドクリーム
・ビスキュイ・ジョコンド
・クリスティアン

「クリスマスの時に比べて、底のクリスティアンを増やしました。1番上にバニラのガナッシュを加えることで、よりバニラを感じられる構成に進化しています」と山根シェフ。

なめらかなバニラのムース、そしてバニラのガナッシュの優しくも力強い香りを感じる。
アーモンドクリームはキャラメルのような食感。これもまた香りがいい。
全体的になめらかな食感のあと、底のクリスティアンが最後にザクっとした刺激を与えてくれる。

うまピヨだ。

センターのアーモンドクリームは自家製のアーモンドペーストにチョコレートとアングレーズソースを加えて作っているとのこと。
ケーキのセンターをどうするか悩んでいた際に、サンプルとして貰ったシチリア産アーモンドの香りと味の広がりが良かったことから、このイヴェールが誕生したという。

「イヴェールのこだわりは、バニラを強調した点です。バニラって脇役になりがちな食材ですが、バニラを主役としたケーキを作りたかったんです。例えば生クリームにバニラの香りを一晩かけて抽出して、よりバニラを感じられるよう工夫しています。

クリスマス以降お客様から反響をいただき、本当は冬に出したかったんですが、間に合わずにこの時期になってしまいました笑」

イヴェールとは「冬」という意味だが、バニラの爽やかなケーキなので夏場でもしつこくならずに食べられます。いや、むしろ夏に食べたいまであります。

シンプルな構成で、バニラを最大限に生かしたイヴェール。改めてうまピヨです。


マンゴープリン

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はい、これはもうこれからの季節に欠かせないやつが来ました!

構成は
・マンゴー
・ココナッツのソース
・マンゴームース 
・パッションのクレーム 
・ココナッツのクレーム

「1番上には宮崎の”太陽のタマゴ”というマンゴーを使っています。ウチでフルーツをメインにしたケーキっていうのは今までなかったんですが、太陽のタマゴを使いたいというのがあって作りました。

フルーツって凄いと思うんですよ。そのまま食べて完成してるじゃないですか。このマンゴープリンはマンゴーそのものの美味しさをできるだけ邪魔せず、より増幅させたいというイメージで作っています」

あくまでマンゴーが主役。
食べてみると、確かにそのほかのパーツの主張は控えめだ。
ただ、ココナッツのコクやパッションの酸味が加わることによって、マンゴーの味が最大限活きているように感じる。

そしてどのパーツも非常に柔らかくなめらかだ。
食べるというより、もはや飲める。夏のうだるような暑さの中、冷房の効いた店内でこのマンゴープリンを是非いただきたい。
夏の暑さとは、マンゴープリンを引き立てるためにあるのだとすら思えてくる。

うまピヨ!


ウルー

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冒頭でお伝えした人生最大級の衝撃の正体がこのウルー。
東京在住でピスタチオ好きを自称する方には是非とも食べていただきたい逸品です。

構成は
・ピスタチオのグラサージュ
・ピスタチオのムース
・ピスタチオのブリュレ
・ピスタチオのバタークリーム
・ピスタチオのビスキュイ
・キャラメリゼピスタチオクランチ
・ピスタチオのシュクセ

なんとウルーを構成する7つのパーツ全てがピスタチオ。
これがドラゴンボールだったらピスタチオ色の神龍が登場するところです。

「僕もピスタチオが好きで、ピスタチオだけのケーキが食べたかったんです。ウルーはピスタチオだけでも重くなりすぎないように”うねり”を出すようなイメージで作りました。

外側の軽いピスタチオムースからブリュレがきて、ゲランドの塩を効かせたバタークリーム、ピスタチオのキャラメリゼも強めにして苦味を出す。試作を繰り返してビシッと来たっていう感じですね」

確かにウルーは全てのパーツがピスタチオだが、そのパーツごとに味わいは異なる。
同じピスタチオ味でも塩気や苦味、食感の違いで味わいを変化させながら、飽きることなく、重くなり過ぎずに最後までピスタチオロードを走り抜ける。そんなケーキだ。
まさにピスタチオ七変化。七色のピスタチオを持つケーキ。ラッキーセブンピスターシュ。七転びピスタチオ。

「使っているピスタチオペーストも3種類あって、味わいや色合いなどでパーツごとに使い分けています。

アンカドをオープンして初めて1からレシピを作ったのがウルーなんです。これで美味しいのを作れなきゃ辞めなきゃなんないと思って背水の陣で臨みましたね笑」

山根シェフが背水の陣で作ったウルーは革命だと思っております。
今後もピスタチオのケーキでオススメは?と聞かれれば必ずウルーを紹介するでしょう。

うまピヨ、いや、

うまピスタチオです!!!!


アンカド

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店名を冠したスペシャリテ・アンカド
コンクールの受賞作品です。

構成は
・ムースショコラ
・蜂蜜を使ったキャラメルクリーム
・バニラのキャラメルクリーム
・ビスキュイサンファリーヌ
・カシューナッツのキャラメルゼ
・ダクワーズショコラ

「アンカドはハチミツでキャラメルを作れないかというイメージから始まったケーキです。でもハチミツって普通にキャラメルにしようとしてもできないんですよ。そこからハチミツに生クリームを加えたり試行錯誤して出来上がりました」

ハチミツのキャラメルクリームや、食感にカシューナッツを採用した点がこだわりのポイント。

大枠のムースショコラはゼラチンを使わずに、チョコレートの凝固力だけで固めているとのこと。それにより力強いチョコレートの香りを感じつつ、とてもなめらかなムースになっています。

コンクールのケーキといえば複雑でキレのある味わいを想像しますが、アンカドはとてもシンプルで優しい味わいがします。また、食べてきた他のケーキも主役がハッキリしている印象を受けます。

「伝えたいことはシンプルなんです。構成は何層にしても結局主張したいのはキャラメルとチョコレートのバランスやハチミツの香りです。

他のケーキでも作る上で、想像できて美味しそうな香りを重視したいと考えています。なので主役となる味わいはハッキリしています。そういう考えになったのはこのアンカドからですね」

このアンカドには山根シェフの表現されたいことや美学が詰まっているように感じました。店名を冠しているケーキということもあり、アンカドというお店を象徴したケーキになっていると思います。

うまピヨ!


カヌレ

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恥ずかしながらアンカドの焼き菓子をいただいたのは今回が初めて。
しかしながら食べる前からすでにうまピヨなのはこの焼き色を見れば明らかだ。


しっかり焼き込まれた表面はカリッと芳ばしい。この食感こそがシェフのこだわり。
そして表面とは裏腹に、中の生地はカヌレ特有の柔らかい食感と優しいバニラの香りする。

「難しいですねカヌレって。色んなレシピを見たり、牛乳の温度など調整したり、緻密に計算して何度も試作を繰り返して出来上がりました」

これはうまピヨ。お店に出したらすぐに売り切れてしまうのも納得のお味です。


ガレットブルトンヌ

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エシレバターを贅沢に使ったガレットブルトンヌ。
食べる前からバターの香りが漂ってくる。鼻で美味しさを感じることのできるお菓子だ。

食べると口の中でホロホロと崩れていく。崩れていけばいくほど、噛めば噛むほどエシレバターの風味が雪崩のように溢れ出して止まらない。

ここまで来るともはや「うまピヨ」以外の言葉が出てこない。
シンプルが故の根源的美味しさ。本能に訴える美味しさなのだ。理性の部分であーだこーだ解説しても、それは広辞苑から無理矢理引っ張り出した記号でしかない。

砂漠で三日三晩彷徨い、奇跡的に見つけたオアシスの水の味をなんと表現できようか。仕事終わりのビールの美味しさを言葉にできるのか。

表現できるとした
「カァー!」もしくは「プハー!」のどちらかだろう。
それは感嘆であり魂の叫び。もはや言葉を重ねるだけ野暮だ。だって感動に言葉は必要ないのだから。

つまり僕は何が言いたいのか。

是非アンカドに行ってケーキを食べてくださいってことです♡



最後に山根シェフがケーキを作る上で大事にしていることを聞いてみた。

「自分で作ると魂がこもると思うんです。シェフとして、手を空けて次の構想を練ったり、社員さんに仕事を任せるのも必要なんですが、そこのバランスを取りながら自分で手をかけて作るというのは大事にしていきたいです」


山根シェフ、貴重なお話をありがとうございました。
シェフのこだわりや考え方を伺い、まさに”職人”だなと感じました。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
是非アンカドのケーキを食べてみてください。








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