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自分の中の小さな子供を抱きしめる。
気が付くと、自分の呼吸が止まっていることに気付いた。
息苦しくはないのだけれど「あ、呼吸音が聞こえない。」と思った時は、浅い呼吸しかできていない。
特に将来についての不安や、目の前にない不安が迫ってきた時に感じるこの現象は「無呼吸症候群」にあたるのだろうか。いや、でも普通に呼吸は出来て…出来ているよね?と自分に問いかける。
ふっ、と呼吸が止まる夜は寝ぼけ眼を擦りながらリビングに移り、コーヒーでも煎れてみる。カフェインが入っている飲み物は寝付きが悪くなるのだが、ミルクたっぷりで入れたカフェオレに蜂蜜を浸したスプーンを突っ込んで、ぐるぐる回して飲むと何だか心がホッとする。
ふと、小さかった頃に眠れずに目を開いていると、母が作ってくれたホットミルクを思い出した。蜂蜜をたっぷり。とぷん、と音を立てて沈んでいくスプーン。優しくスプーンを回すと黄金色のシロップが溶けていく。ふうふうと息を吹きかけて口に運び、熱い息を吐く頃にはお腹の辺りがぽかりぽかりと湯たんぽの熱を放つ。優しい味。
頑張ったね。
人知れず、自分に語り掛ける。コーヒーの香りが漂う冷たいリビングで、椅子に背中を思いっきり体重をかけてそう思った。
今日も、頑張ったね。
自分の腕を両肩に巻きつけて、優しく摩ってみる。パートナーがいたとしても、多分こんなこと頼まない。ヒールを鳴らして歩く自分は、弱音を吐いてはいけないのだと、どこかで思っていた。
頑張れたね、えらいね。
今の自分は、仕事をバリバリと片付けていく会社員ではなく、一人の人間だ。たまに、こんな眠れない夜の日は子供に戻るのもいいかも知れない。
たっぷりと蜂蜜とミルクを入れたカフェオレを目の前に、自分自身を抱きしめて語りかける。自然と、呼吸が眠りに落ちる前のソレに近づいていた。
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