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内発的動機付けが外発的動機づけに変わる時(3)

前回の投稿では、仕事を通して得られる金銭的報酬をテーマにしました。金銭的報酬は、不十分だと不満だが、不満ゼロの状態が天井であり、天井を超えて増え続けるものではないということを取り上げました。よって、賃金制度でできることは基本的に「不満と不安の解消」であり、不満の解消を「外部公平性と内部公平性の確保」に求めました。

今日は、内部公平性についてです。
内部公平性とは、自分が所属する組織内部において、自分も含めた人材に対する処遇で納得感が保たれていることです。

「課員である自分が、どう見ても課長より難易度も負荷も高い仕事をしているのに課長より給料が低い」「同じ仕事をしているAさんとBさんとで、Aさんのほうが優遇されているのはおかしい」など、組織内部の公平性が崩れてしまうとそれを見て不満につながるということです。こういった不満はやる気をそぐことにつながりますので、それが起こらないような賃金制度と評価の運用が必要です。

不安とは、「この会社で勤続することで十分な報酬を得ることが、この先もできるだろうか?」と疑問を感じてしまう状態です。従業員の視点としては、未来を保証してくれとまで言うわけではないものの、「このままここで働き続けてもいいんだ」と思えていることが必要です。「来年会社がどうなっているかわからない」「賃金のアップダウンが激しくて数年後の賃金が想像もつかない」などの状態では、勤続することが難しくなります。個人差はありますが。

賃金制度の透明性を高めることや、「入社から年数がたつにつれて典型的にはこういう賃金グラフになる」という賃金モデルを作って従業員に提示することは、不安の軽減につながります。

以上、前回から見てきたことをまとめると、賃金制度の設計・運用では次のことがポイントとなります。

・外部公平性を保てるよう、外部相場相応以上の賃金を支払う。一倉定氏の言葉を借りれば、同じ地域の同業他社で同じ仕事・パフォーマンスの人材より1割高いであろう賃金の支払いを目指す。

・内部公平性を保てるよう、信賞必罰、ノーワークノーペイの観点で、パフォーマンス見合いの的確な賃金還元をする。

・勤続することに対して疑問符がつかないよう、従業員の立場に立って制度内容の十分な説明・周知を行う。

逆に言うと、賃金制度(金銭的報酬)でできることは以上だということです。つまりは、

・従業員に対して、職場内で金銭のことが気にならない環境をつくる
・その結果、よい仕事をすることに思考とエネルギーを集中してもらう
・集中したことで、仕事の成果が認められて、仕事に面白さを見出す
・その結果としてモチベーションが上がる

ということです。
賃金制度の設計・運用でモチベーションを直接高めようとするのではなく、モチベーションが高まる要因となる「仕事に面白さを見出だす環境づくり」の一助とするという視点で、設計・運用をするべきだと考えます。

たとえ賞与が破格の月数分支給されたとしても、一度もらえばそれが当たり前の状態になります。「昨年賞与を100万円ももらったから、今年は賞与70万円だったけど、昨年の支給をエネルギーにして来年も張り切っていこう」とはならないものです。

よって、成果連動の報酬ルールや、インセンティブ制度などを設計したい場合には、モチベーション云々ではなく、公平性の担保という観点で考えるべきでしょう。そして、成果連動制度の内容の本質をきちんと従業員に理解してもらわないと、給与が上がったらそれが当たり前になり、下がった時に不満を生み出すことになりかねません。

<本日の一言>
賃金制度の設計・運用でできることは、不満と不安の解消まで。


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