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部下に勧める研修を、先に上司が受講する

ある企業様の人材育成の取り組みに関するお話が、とても印象的でした。

同社様では動画コンテンツを活用して研修を受講する、定額制オンライン研修サービスのシステムを導入しました。「コミュニケーション」「ロジカルシンキング」「ファイナンス」など100以上のメニューがあり、年間定額利用料を支払って全社員が受け放題となる動画配信型の受講システムです。いろいろな提供会社があり、利用されたことのある方もいると思います。

同社様ではこれまでにも全社員研修、階層別研修、職種別研修などを実施してきましたが、いずれも散発的な取り組みの域を出ていませんでした。人材育成を組織的な取り組みにし、成果を上げていくことを目指してこのたび見直したという経緯があります。同サービスの活用はその一環というわけです。

同サービスの導入にあたって、次のように取り組んでいます。

・全役員・管理職(下記の上司・部下1対1ミーティングで上司となる立場の人全員)が全プログラムを順番に視聴していく

・月に1回の上司・部下1対1ミーティングにて、自社で運用している職能評価シートに基づいて能力開発目標とする項目を決める。部下がどんな職能をどのように開発していきたいか、いく必要があるかを話し合う。その目標に沿って、どのプログラムを受講するか、目的感をもって決める。

・受講後職場でどんな行動に具体的に取り組むかを決めて実行し、実行した結果を翌月の1対1ミーティングで振り返ってPDCAをまわす。ミーティングの面談記録をつけてHRシステムで履歴管理する。

驚いたのは、全役員・管理職が全プログラムを視聴することです。

動画を見てワークに取り組むことで、1プログラムあたり平均4時間かかります。100プログラムならば400時間です。社員には、上記ミーティングで決めたプログラムは就業時間内の受講を可としますが、役員・管理職は就業時間外ですべて受講しているようです。相当な思いがないとできない行動だと思います。

部下が受講するのは、2~3か月間で1プログラム程度(ただし、学んだことをきちんと職場で活用する)のペースですが、部下によってどのプログラムが適しているかは変わってくるため、上司の側はすべてに対応できるよう100以上のプログラムにすべて取り組もうというわけです。

「自分で見てよいと思ったもの、部下の課題感に合っていると納得したものでなければ、部下に受講を勧めたくない」「部下に能力開発を求める以前に自分も能力開発すべき」というのがその理由だと言います。

類似のサービスを導入している例は各社で時々聞きますが、「定額受け放題のサービスを導入して能力開発の機会をつくったから、その気のある人は自由に受けてください」ぐらいの位置づけにするのが通例です。役員・管理職がすべてのプログラムをまず受講するという話は初めて聞きました。

ファーストリテイリング代表の柳井氏による著書「経営者になるためのノート」には、「全身全霊。100パーセント全人格をかけて部下と向き合うべき」と書かれています。100%全力で関与すること以外に人は変わらないというわけです。

同社様の社員の方からもお話を聞いたことがあります。

「自分が受講したプログラムの内容を上長がよく把握しているため、ミーティングが活きた会話になる」「自分が高めるべきビジネススキルはまさに上長が勧めたこのテーマだったというのが、受講してよく分かった」「会社が投資してこのような機会をつくってくれるのは本当にありがたい。目標設定した行動に取り組んで投資回収したい」など、導入による効果と変化を明らかに感じます。

同社様の役員・管理職のやっていることは、本当に部下のことを考えた姿勢、人材育成に対する熱意、自らが最大の実践者という姿勢を強烈に感じました。まさに相手と100%全力で向き合っていると言えます。

すべてにおいて部下を同じことをすればよい、するべきかというと、必ずしも当てはまらないことも多いと思いますが、考え方や姿勢として学ぶべき点が多い事例ではないでしょうか。

相手と100%全力で向き合う。言葉としては簡単ですが実行は難しく、また100%というのを自分の基準で考えがちです。私自身もどこまでできているのか。。100%という概念が分からなくなったら、同社様の取り組みを思い出したいと思います。

<まとめ>
会社の方針について、自らが最大の実践者となる。

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