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パートのタクシー運転手

2月1日の日経新聞で、「日本交通、タクシー運転手に女性パート採用 人手不足で」というタイトルの記事が掲載されました。同社の先進的な取り組みに関する記事を時々見かけることがありますが、今回も興味深い内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

タクシー大手の日本交通グループは子育て中の女性などを対象にパート勤務の運転手を採用する。運転手は大半が正社員雇用だが高齢化と新型コロナウイルス禍による需要減で大幅に減っている。時給制で勤務時間を柔軟にして従来雇うのが難しかった層を受け入れる。深刻化する人手不足が雇用形態の多様化を促している。

日本交通グループのハロートーキョー(東京・江東)がパート運転手の募集を始めた。週3日、1日5時間からのシフト制で、午前6時から午後10時の間で希望の時間帯を選べる。時給は1500円からになる。

普通自動車免許を取得して3年が経過していることが採用の要件だ。会社負担でタクシー運転に必要な二種免許を取得できる。まず15人の採用を目指しており3月の乗務開始を見込む。

日本交通グループは全国で約7000台のタクシーを運行している。今回のパート勤務は配車アプリからの予約客に特化し車を走らせながら乗客を探す「流し営業」はしない。

日本のタクシー運転手は大半が正社員雇用だ。パートは2割程度で定年後に再雇用された65歳以上がこのうち8割以上を占める。運転手全体の平均年齢は60歳、女性の割合は4%にとどまる。

コロナによる需要減で人材も流出した。東京ハイヤー・タクシー協会などによると、2021年度末の都内の法人タクシーの運転手数は5万5391人と19年度末と比べて9000人以上減少し、記録が残る1970年度以降で最少となった。

営業収入はコロナ禍前の水準に戻り、今後は訪日客の需要回復も見込める。タクシー大手の幹部は「需要はあるのに人手が足りない。車両の稼働率はコロナ前より10%超下がっている」と語る。

普段あまり考えたことがありませんでしたが、タクシー運転手は正社員がほとんどだということです。パートが全体の2割程度で、そのうち65歳以上が8割以上ということは、65歳未満のパート運転手は0.2×0.2で全体の4%程度しかいないことになります。同社の取り組みは、子育て中の女性を中心に、この層を拡充しようということだと思われます。

詳しい現場の事情は存じ上げないのですが、配車アプリからの予約客に特化することで、パート人材が雇いにくかった要因が解消されるのであれば、人材確保のうえで有力な試みだと想定されます。

個人的な意見としては、同パートに従事しようとする子育て中の女性だけではなく、副業を模索する会社員にとっても意義のある選択肢になるのではないかと考えます(それが可能かどうか、規制や制約などは存じ上げませんが)。

接客サービスの職に就きたくてタクシー運転手を選んだという若手運転手の記事を、どこかで読んだ覚えがあります。タクシー運転手は、接客力・コミュニケーション力が求められる職種です。その気になって取り組めば、その方面で大いにスキルを伸ばす機会になる環境だと言えます。

また、タクシー運転手は、内閣府による景気ウォッチャー調査(街角景気)の調査客体となる代表的な職種です。経済動向、世の中の動きを見る目を養うよい機会となりそうです。サービス業のセンスや自己開発にも重きを置く副業として、面白いのではないかと思います。

また、二種免許を取得できることで「手に職」のひとつにもなります。仮に勤務先で失業したとしても、タクシー運転手ができる準備が整っていれば、当座の生活設計も立てやすくなります。タクシー運転手のパートに取り組んでおくことで、将来不安の要因のひとつである雇用の持続性への不安が軽減されることになれば、生活の質も高まります。消費も促されて、社会全体への貢献にもなりそうです。

1日5時間という設定では会社員の副業としては難しいかもしれませんが、今後もう少し柔軟な設定も可能になれば、応募が出てくるかもしれないと勝手に想像します。

特に中小企業にとっては、賃上げが簡単にできるわけでもありません。一方で、従業員も生活があり、物価上昇に力負けする実質賃金の目減りでは生活維持が厳しいものがあります。そうした環境下では、働きやすい環境を整備して副業も許容し、人材をつなぎとめることもひとつの方法となりそうです。

他方で、人材を雇う視点からも、業務委託などでさまざまな人材を受け入れて戦力化していくことは、社会的な人材供給量が落ちていく今後、一層必要になることと考えます。

<まとめ>
創意工夫やいろいろな方法論で、社会全体の人材活用を進める。


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