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14年ぶり最高益

10月12日の日経新聞で、「サイゼリヤ、14年ぶり最高益 今期最終 海外事業けん引」というタイトルの記事が掲載されました。

同記事の一部を抜粋してみます。

サイゼリヤは11日、2024年8月期の連結純利益が前期比59%増の82億円となる見通しだと発表した。10年8月期(78億円)以来、14年ぶりに過去最高を更新する。営業利益の8割を稼ぐアジア事業が好調で、商品の値ごろ感が支持されるほか、積極出店も寄与する。20年8月期から営業赤字だった国内事業も客足が回復して黒字に転換する。

売上高は15%増の2110億円を見込む。海外は出店増や競合と比べた値ごろ感を訴えて顧客を捉え、既存店売上高は10.3%増を計画する。国内では価格を据え置く戦略やメニューの改定で客数が増え、13.6%増を見込む。

営業利益は81%増の131億円になる見通しで、新型コロナウイルス禍前の19年8月期(95億円)の水準を上回る。けん引するのはアジアだ。中国や香港、台湾などのアジア事業は売上高で21%増の760億円、営業利益で29%増の109億円を見込む。中国では経済が減速するが、競合よりも価格帯が安いサイゼリヤの集客が伸びるとみる。

国内事業も客数が増え、営業損益は20億円の黒字と4期ぶりに黒字転換する。

コロナ禍で客足が落ち、20年8月期から赤字が続いていた。円安による原料の輸入高が重荷となるなか、売れ筋メニューへの絞り込みやセルフレジの導入拡大など「大幅に新規出店を増やす戦略を採らず、効率のいいビジネスモデル作りに投資する」(松谷秀治社長)。値上げはせず、コスト削減への投資を進めて利益率を向上させる。

同日発表した23年8月期の連結決算は、売上高が前の期比27%増の1832億円、営業利益は約17倍の72億円だった。純利益は新型コロナウイルス感染症拡大の防止による営業時間短縮に伴う協力金が減り、9%減の51億円だった。

サイゼリヤについては、以前にも取り上げたことがあります。国内については、価格を据え置いて「顧客数」のほうを追う戦略を明確にしていること、今の局面を値上げ無しに乗り越えれば他店に対する競争優位性はとても強いものになるのではないかと、考えた内容でした。上記の記事によると、その戦略が功を奏しているように見受けられます。

原材料高騰など飲食店の置かれた昨今の環境を踏まえると、同社による価格据え置きでの国内黒字転換は驚異的な結果だと言ってよいと思います。

同記事から、2つのことを感じました。ひとつは、方針・戦略を明確にし、ぶれずに取り組み続けることの重要性です。

詳しい内情は存じ上げませんが、同記事内容からは、(同社が実行しない)値上げ以外に効率性・収益性を高めるためにできる工夫の余地がまだまだあるということなのだと推察します。新規出店や価格改定は取り組み課題から外し、無料チーズの有料化も含めたコスト削減とサービスやシステムの見直しに取り組み課題を絞っていることが、現場での創意工夫を生み出しやすい流れになっているのではないかと想像します。

私たちは、兎を何匹も追う(重要だとされる方針が数多くある)、重要な方針がすぐに変わる、などだと、何をよりどころにしてどんな課題形成・取り組みをすればよいのかに迷ってしまいます。「今はこれ」と、コアとなる方針・戦略を絞り込み、徹底することで、取り組みも徹底されるのではないかと、感じた次第です。

もうひとつは、海外事業という別の方策も見出していることです。

アジア事業は売上高760億円、営業利益109億円とあります。売上高営業利益率は14.3%ということになりますが、飲食店ビジネスではとても高い利益率です。売り上げ規模としては国内事業に比べてまだ限定的ですが、利益が会社全体を支える存在となっています。

国内事業の方針・戦略を明確にして取り組むといっても、それがうまくいかなかった場合に会社全体の存続性が危ぶまれるほど大きなリスクを負うものだとしたら、問題があります。いろいろな可能性に備えて、アジア事業等で存続できる土台がつくれているうえでの、国内事業の打ち手だと考えられます。

とても見るべきものが多い14年ぶり最高益ではないかと思います。

<まとめ>
コアとなる方針・戦略を絞り込み、徹底する。

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