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結婚式の準備代行サービスを考える

5月22日の日経新聞で、「式場紹介のリクシィ、結婚式の準備代行 多忙なカップル、負担軽減」というタイトルの記事が掲載されました。前回家事の代行サービスをテーマにしましたが、同記事は結婚式の準備の代行サービスをテーマにしたものです。

同記事の抜粋です。

式場を紹介するオンラインサービス「トキハナ」を手掛けるリクシィ(東京・港)は、共働きなどで忙しいカップル向け結婚式の準備を代行するサービスを始める。式に関する各プログラムの選定や招待客のリストアップなど時間のかかる準備作業を引き受ける。結婚式の負担を軽減して式場体験の改善につなげる。

代行サービスは5月中にも始める。対話アプリ「LINE」を通して顧客の希望を把握し、元ウエディングプランナーが計画シートを作成する。結婚式のテーマ選定や当日の進行のほか、ゲストへの引き出物の手配まで項目ごとに決める。

顧客の出会いから現在までを振り返る4分ほどの動画の作成や新郎新婦のあいさつ文の添削などのプランを7万円(税別)で提供する。個別メニューも1万円(同)から利用できる。「トキハナ」の式場紹介を利用しない場合も準備代行を依頼することが可能だ。

サービスへの認知度を高めるためにリクシィは6月上旬から社名を「トキハナ」に変更する。リクシィの安藤正樹社長は「常識を変えて新しい選択肢を作り出すなど結婚する二人を支えるインフラになりたい」と意気込む。

同記事をたいへん興味深く読みました。

個人的には、同代行サービスも一定の需要をとらえて市場が成長するのではないかと考えます。主な理由は2つです。ひとつは、タイパの観点から手間を代行したいというニーズが少なくないと想定されることです。

結婚前や結婚後の時期に不安や嫌悪感を抱いたり、気持ちが沈んでしまったりすることを意味する「マリッジブルー」という言葉があります。マリッジブルーの要因のひとつとして、結婚式の準備作業で忙しくなり、意見が食い違うなどですれ違うことにあるという指摘もあります。

私の周囲でも「結婚式の準備にあまり興味が持てず、勝手もわからない。準備が苦痛である」という人を見かけたことがあります。このようなタイプの人にとっては、準備を丸ごと代行に依頼できるのは、歓迎されるサービスになるものと想定できます。

もうひとつは、結婚式準備という分野に対する専門性の低下です。

少子化や婚姻数の減少に加えて、結婚式を省略する夫婦も一定数いるなどの背景で、結婚式に招かれたり他者の結婚式を直接見聞きしたりする機会が減っています。よって、結婚式というものについての、知識や経験が減っています。一度も他者の結婚式を見たことない状態で、自分たちの結婚式を行う、という人も少なくないのではないかと思われます。

ある程度の知識や経験があり、スキルももっている物事については、自分たち主導で準備を進めていけるかもしれません。しかし、見たことがないために見当がつかないことについては、その準備を全部引き受けてくれるプロに任せたほうが無難で、安心だということになりやすくなるのが自然です。

先日の投稿「多様性ある組織で成果につなげる(2)」で、書籍『多様性の科学(マシュー・サイド氏著)』で書かれている内容に基づいて、次の通り紹介しました。この内容を参考にすると、プロに一任するほうが、ご来場者にとって満足度の高い式の準備につながりやすいかもしれません。

立場による違いも、認知的多様性を生み出しそうです。同書では一例として、「ウェディングリスト パラドックス」がいい例だと紹介しています。結婚式を行うカップルが招待客に向けて準備する贈り物と、招待客が欲しいと思う贈り物には、ズレがあるという事象です。

贈る側は、自分が独自に選んだ、気持ちのこもったプレゼントのほうが喜ばれるに違いないと考えるのに対し、受け取る側は、自分が欲しいものリストで指定した品物のほうをはるかに好むという結果が出ていると紹介しています。この背景には、結婚式の主役&贈る側という立場からプレゼントというテーマに向き合う人と、受け取る側という立場の人との間で、ものの見方や考え方の違いが発生していると言えそうです。

もっとも、主役は新郎新婦ですし、自分たちだからこそのオリジナルと言えるものにこだわりたいという考えもありですので、自分たちですべて準備するというのも正解のひとつです。

一生に何度もない結婚式というイベントを、丸ごと代行に委託するのがいいかどうかは、それぞれの価値観・考え方によると思います。「勝手がわからないゆえに夫婦で協力して絆を深めたい」「苦労するから思い出になる」のようなことを重視するのであれば、代行せずあえて自分たちで取り組むのもよい意思決定だと言えます。

いずれにしても、タイパの追求による効率化+自分にスキルのないことはそれを強みに持つ他者の活用による質の向上、というニーズは、他のいろいろなことにも当てはまり、かつ今後さらに拡大するニーズでもあると思います。自身や自社の事業に置き換えて考えると、いろいろなヒントが見つかるかもしれないと思います。

<まとめ>
タイパの追求+他者の活用による質の向上、というニーズを考える。

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