円安に向き合う(2)
前回の投稿では、最近動きが急な円安をテーマにしました。円安にはかつてほどのメリットは見出しにくくなっている、円安の流れの反転は簡単ではないものの、さらなる規模の円安が見込まれるかというとそうでもないかもしれない、ということを考えました。
このような環境下で私たちは実務的にどのように向き合うとよいのでしょうか。3つ目の視点は、商品・サービスの高付加価値化、価格転嫁による輸出を目指す、ということです。
9月24日の日経新聞で、「円安が変える企業行動」というタイトルの記事が掲載されました。同記事の一部を抜粋してみます。
「日本国内で消費される米が減っているから、それに合わせて生産量を減らすべきという考え方は、合理的なように見えてそうではない」とする同記事の示唆にはうなずくものがあります。その考え方は、表面的な事象からいきなり結論に飛んでしまっている点で、本質的とは言えないでしょう。
先日ファミレスでランチを注文し、ライスではなくパンを選ぼうとしたら「パンは米粉になっている」と説明書きがありました。これまで原料にしていた小麦粉が入手しにくいからでしょう。食べてみたところ、限りなくこれまでのパン同様の味が再現されていました。
従来の「ごはん」という食べ方による国内消費だけで捉えると、人口減少や食べ物に対する嗜好性の変化から、今後も消費量はマイナス続きかもしれません。しかし、代替の利用方法や、記事が言うように輸出などに回すことができれば、コメ生産による農業の活性化という解決の方向性も出てくると思います。
そして、国内でのインバウンド消費への対応も挙げられます。
国連総会出席のためニューヨークを訪問した岸田総理によって、10月11日から1日当たりの入国者数上限の撤廃や個人旅行の解禁などを行うことが表明されました。底辺まで落ちたインバウンド消費も、いずれは再開されます。再開をチャンスとするには、自社商品・サービスの何をどのようにお買い求めいただけるのかについて、改めて整理する必要があります。
その際、同記事も示唆する輸出だけではなく、国内市場向けでも円安によるコスト上昇分を最終価格へ反映させることが望ましいと言えます。加えて、単に価格転嫁だけだとうまくいきにくい面もありますので、商品・サービスの付加価値も同時に高める視点が有効だと言えます。
このことはインバウンド消費以外にも当てはまりますが、とりわけ円安の影響で割安に出費できるインバウンド消費の担い手に対しては、より当てはまることだと想定されます。そして、そうした動きが広がっていけば、各市場の物価全体も少しずつ押し上げられるかもしれません。
円安には、言うまでもなく大変な面があります。そのうえで、これを契機としできることに取り組んでいく視点ももちたいところです。
<まとめ>
円安を機会に、輸出を含めた商品・サービスの高付加価値化、価格転嫁を目指す。
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