金融教育から考える本質的な学び
11月10日の日経新聞で、「金融教育を考える(上)貯蓄から投資、起点は学校 「知識に自信」米71%、日本12% リスク管理と両立促す」というタイトルの記事が掲載されました。金融教育の推進が、国を挙げての重要施策だというわけです。
同記事の一部を抜粋してみます。
先日、経営の基本について学ぶ全10回シリーズの講座の中で、財務諸表をテーマにした回の講師役を担当する機会がありました。その際に改めて感じたのは、私たち働く人全般の傾向として、経営に関する他の諸テーマに比べて、財務とITのリテラシー(知識や知識の活用力)が極端に低いということです。
ITは技術の発展がすさまじく、どうしてもそれを専業や担当業務としている人とそうでない人の間で差がつきがちです。そのうえで、どんな立場の人であっても、自身の担当業務で求められる最低限のITリテラシーは高めようと、知識の習得やツールの使い方を覚えなければならないと自覚し、四苦八苦している人が大半だと思います。
一方の財務については、お金が私たちの生活に密着していて、その本質や使われ方が以前から大きく変わっているわけでもないながら、リテラシーが低いままとなっています。また、そのことについても多くの人が無自覚です。財務諸表の基本的な読み方は、それほど難しいものではありませんが、経営幹部も含めてほとんどの人が読むことができません。
お金のテーマと他のテーマでは、大きな違いがあります。それは、自分から意識的に学ばないとわかってこないということです。
・この商品を重点的に売るのが今期のテーマだと言われているが、売れ行きが悪い。お客さまのニーズからずれているのではないか。
・このチームを引っ張っていくにはどうしたらよいか。
・お客さまとのやりとりでうまくいかず、クレームを受けた。あの時どういえばよかっただろうのか。
・この目標設定は適切だったのだろうか。適切な目標設定のやり方について、目標管理の手引書に書いてあったような・・・
のように、経営戦略、マーケティング、組織、リーダーシップ、コミュニケーション、目標管理・・・経営を取り巻くテーマは様々ありますが、日常の仕事の活動の中で、自然に疑問を感じたり調べたりすることが多いものです。その過程の中で、商品開発のあり方や関係性のつくり方など、身についてくる部分も多いでしょう。
しかし、事業の投資収益性や、自社の現金での支払い能力など、お金に関することは理解を深めることにつながる自然な機会がなかなかないものです。お客さまの要望に応じて値引をするかどうか、かかった経費を精算する際に「これはお金かかりすぎかも」などのように表面的に考える機会はあります。そのうえで、それらの事象を超えて、体系的に捉えて考えることまではなかなか至らないと思います。
つまりは、自分からわざわざ学びにいかない限り、理解する機会が少ない領域、というわけです。
その観点から、義務教育の環境下でお金に関する理解を深め、成人した後にお金に関する実践力や自分からさらに学ぼうとする行動力の土台をつくっておくのは、意味があることではないかと考えます。
実際に、記事中の英米の例からは、金融に関する学びの経験の差が、意識やリテラシーの差となっているという関係性を想定することができます。
金融や投資にどのように向き合うべきなのか、次回以降続きを考えてみます。
<まとめ>
金融に関する学びの機会の有無が、金融リテラシーの差となる。
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