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会社の方向性と社長個人の思いの一致

先日、知人から近況を聞く機会がありました。その知人は最近数年間で数回転職しいずれもうまくいかず、今年のはじめに最新の勤務先に転職して今に至っています。

最新の勤務先の様子を聞いてみたところ、「すべてが理想的」「不安が一切ない点が、これまでの会社とまったく違う」という答えが返ってきました。仕事に全身全霊で没頭しているとのことです。入社まだ数ヶ月ですが、予定を繰り上げて会社の命運を握る重要プロジェクトを任されているようです。

転職を経験したことがある人なら想像つくと思いますが、転職は一度すると癖になります。仕事・組織を見抜く目が育つ、キャリアメイクの本質的な視点が育つなど、よい癖となって定着するならよいのですが、「ユートピアを求める逃避行」の悪い癖となって定着することもあります。当然、ユートピアなどどこにもありません。

同知人の場合も、これまでも転職直後「張り切ってやります」といった話を聞いていたこともありながら、その後そう長くないタイミングで「会社を変えようと考えている」という話に変わっていました。ただ、これまで聞いていた説明から、本人の仕事観・取り組みはしっかりしたものがあり、たまたま活躍の場がなかっただけだろうと思っていました。今回の話を聞いて、そのことを確信した次第です。

同社は、5年で売上約3倍、営業利益約8倍を実現させている上場企業です。設立直後ではなく上場企業となってからの規模でその成長率ですので、飛躍的な成長だと言えます。それだけ業容を拡大させながらも、自分も社員も疲弊している人が見当たらないと言います。

何が良いのか、良さの源泉について聞いてみたところ、すべて社長(リーダー)の思いに関する内容でした。話の内容から、私なりには次の3点に集約されそうだと考えました。

・経営理念・ビジョン・方針が、利他の精神でできている
・それらが社長自身の内側から湧き出ている(作り物でない)
・社長の行動がそれらと常に一致・一貫している

入社前から今に至るまでの社長あるいは経営幹部とやり取りする場面で、この3点に反することを微塵も感じることがないそうです。

同知人が過去力を発揮できなかった会社は、これらが真逆だったそうです。つまりは、「経営理念・ビジョン・方針でもっともらしいことを言っているが、それらは社長の個人的な願望を満たすための手段にすぎなかった」「作り物の言葉に過ぎなかった」「社長の普段の行動がそれらと相反していた」です。

具体的には例えば、「現状を変えたいと言っておきながら現状を変える動きに待ったをかける」「理念が大事と言っていきながら、理念に合わない仕事で利益をつくろうとする」といった事象です。こうした振り返りがあって、次の会社選びの視点を明確化させたそうです。

知人の会社選びの視点はユニークです。「経営理念・ビジョン・方針や事業内容自体は問わない。何でもかまわない。ただし、それらが作り物ではなく、社長自身の思考から自然に出てきているものであることを求める。その1点だけに絞って、面接で見極める。」というものです。それが当たったということでしょう。知人は自身の能力・実績に自信がありますので、「面接で会社を見極める」立場をとることが可能なわけです。

稲盛和夫氏の著書「誰にも負けない努力」の中に、「純粋な心で願う」という一節があります。他者や社会を視点にした、事業に対する純粋な思いが成功につながる、という内容です。知人の話はまさにその内容に当てはまる感じがします。

ビジョンや方針でいろいろ言ってはいても、「自分たちが大きくなりたい」という自分視点の思いが起点になっているだけでは、短期的にはうまくいくことがあっても、長期的にはうまくいくことはありません。お客様あるいは社員がついていかなくなるからです。「○○を通じてお客様や社会の役に立ちたい」という他者視点の思いが起点になっていて、それが経営者・経営幹部の内面の資質と結びついていることで、はじめてうまくいくものでしょう。

<まとめ>
経営理念・ビジョン・方針が、社長自身の内側から湧き出ていることが大切。


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