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日本企業の投資活動を考える

1月10日の日経新聞で、「企業、今こそ攻めの好機」というタイトルの記事が掲載されました。日本への投資に対する魅力が高まっている中で、企業がその期待に応えるべきとしている内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

世界の投資家が抱く日本への期待は本物だ。

「人と差をつけたければ日本語を学べ」。米大手投資会社KKRのジョージ・ロバーツ共同会長は最近、若手社員に促した。研修費用を出し、日本への転勤も歓迎する。

33年前に世界が抱いた「強い日本」への関心と重なる。企業や大学で日本ブームが起きていた。次は日本企業の番だ。市場の期待に応えて改革し、成長するかが株高持続のカギを握る。

高望みではない。日経平均を構成する225銘柄中、PBRが1倍を割っているのは昨年末で93銘柄だ。93人の経営者が成長性を示し、PBRを1倍にする。つまり株価を帳簿上の価値に戻すだけで日経平均は3万6154円と試算できる。89年末の史上最高値3万8915円が視野に入る。

企業が強かった時代、いかにチャンスを逃したのかは反面教師になる。約3兆ドルという世界一の時価総額を誇る米アップルだが、80年代に入ると製品の不発や経営の混乱で身売り先を探した。

90年末の時価総額は52億ドル。143億ドルを誇ったソニーがアップルを買収すれば、世界一の企業になれたかもしれない。

世界は当時、日本企業の資金力を「ジャパンマネー」と恐れた。優良な外国企業を買い、研究開発に投じてイノベーションを起こせば存在感は高まっていた。実際の使い道は有名ゴルフ場などの不動産だった。企業を買っても経営に失敗し、後遺症を引きずった会社は多い。

上場企業の手元資金は空前の100兆円だ。誤った使い方はもう許されない。日本製鉄は2兆円で米USスチールの買収に乗り出し、アニマルスピリッツを見せた。賃上げが国内消費を増やせば株高にも弾みがつく。

企業が輝けば、日本株が海外投資家の資金を引き付けて強い円が帰ってくる。強い円は企業の海外投資を支え、企業をもっと魅力的にする。市場が教える日本巻き返しの処方箋。主役は企業だ。

同記事からは2つのことを考えました。ひとつは、投資対象としての日本企業の見直しと価値の適正な評価の大切さです。

先日の投稿「現預金から投資へのシフト」では、日本の金融資産において現預金から投資資産へのシフトが起こっているということについて考えました。上記の記事は、その動きとなる環境の一端を説明している内容だと思います。

よく話題になる「PBR1倍割れ」(PBR=株価純資産倍率=株式の時価が1株あたりの純資産の何倍にあたるか)の状態は、株式価値よりも解散価値の方が高いという理論上の状態です。今後事業継続して得られる価値よりも、企業が解散して資産を株主に分配したほうが高い金額となると評価されてしまっていることになります。

企業活動を行うということは、ヒトモノカネの資産を使って付加価値を生み、それを必要としている買い手に提供し、結果として利益を出すことが基本的な構造です。そのことを前提にすると、PBRは最低でも1倍以上となることが基本だと言えます。実際に、他国ではPBR1倍以上が一般的な状態です。

89年バブル期のPBRは5倍以上あり、振り返ってみれば高すぎる水準だったと言われます。「PBR1倍=株価を帳簿上の価値に戻すだけで日経平均は3万6154円と試算できる」という説明からしても、今の株価がバブルとは異なり、史上最高値更新がリアリティのある事象だということが想定されます。そうなるのが時間的にいつなのかはわかりませんが。

時々「株価全体が30年以上前の水準すら超えていないところに、日本企業の低迷を感じる」と聞くこともありますが、当時の株価と今の株価の背景がまるで異なり、数値の単純比較は適切でないはずです。

2つ目は、企業活動での適切な投資の必要性です。

80~90年代の日本企業とひとくくりに言っても、個別には様々です。中には優れた戦略や取り組みで成果を上げ続けた企業もあるはずです。そのことはいったん置いておいて、全体的な傾向について、同記事に沿って無理もある言い方をすると、「当時の日本企業はお金の使い方を知らなかった」という示唆なのだと思います。

当時は今ほど聞き慣れなかったM&Aという言葉も、今では一般化しました。自社が投資すべき有形・無形資産を定義して投資する。
自社内で調達できない資産は買収などの方法で調達する。

同記事の示唆も手がかりに、自社なりの戦略的な投資を行っていく必要があるのだと思います。

<まとめ>
投資対象となるものを定義して、適切に投資する。

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