現預金から投資へのシフト
12月26日の日経新聞で、「個人資産増、投資けん引」というタイトルの記事が掲載されました。新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まることもあり、「貯蓄から投資」の流れが加速する可能性があることについて取り上げている内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
2021年12月の時には、次のように紹介していました。
・日本の家計全体の現預金は1072兆円で金融資産の54%を占める。
・2012年には家計が保有する現預金は866.7兆円だったため、10年間で現預金が200兆円以上増えたことになる。
・この間、GDPすなわち家計の収入はほとんど変わっていないので、いかに一人ひとりが現預金を積み上げたのかがわかる。
・現預金に年金と保険を足すと、金融資産の8割程度になる。株と投信の比率は15%のみ。貯蓄から投資の流れは鈍い。
上記のタイミングから同記事までの約2年間で、金融資産に占める現預金の比率が54%→52.5%に減り、投資資産の比率が15%→20.2%に増えたことになります。現預金の割合が減って投資資産に回ったことに加えて、保険・年金からも一部が投資資産に回ったと想定されます。
諸外国と比べると、金融資産の大半が現預金で、投資資産が少なめという傾向は変わっていませんが、2年間での比率の変化としては大きいと評価できると言うと、言い過ぎでしょうか。コロナ禍の影響が残る2022年は、資産防衛の意識も高かったはずです。その時期を含めた2年間でこれだけの変化は、大きいと評価してもよいのではないかと考えます。
しかも、(精査まではしてませんが)年金生活の高齢者は、それほど現預金保有の意識・保有比率は変わっていないと想像できます。同記事中にもあるように、資産形成に積極的な若手世代が、新NISAなどの情報にも感度が高く、この比率変化の要因の大半を担っている可能性があります。
日経平均7054円。そういう時期がありました。2000年代初頭のITバブルで、90年代のバブル崩壊後の暴落分を取り戻すのではないかと期待されながら、またもやITバブルも崩壊、しばらくしてさらにはリーマン・ショック。二度と株価が上がらないという感覚に陥った人も多かったと思います。
しかし、今の若手世代はそのような肌感覚がありません。
前回、金利上昇による所得押し上げ効果について取り上げましたが、若手世代が投資を引っ張る動きに中高年層が徐々に追随していき、押し上げられた所得を投資に循環させる流れができてくると、これまでとは違った市場と生活環境がつくられていくかもしれません。
時々メディアで外国人投資家のコメントを見ることがありますが、当面の日本市場に対する肯定的な見解と投資意欲を紹介しているものが多い印象です。その背景には、上記のような要因も踏まえているものと、改めて推察されます。
「振り返ってみれば、2022年が金融市場の転換期だった」
何年か後に、もしかしたらそう評価される年になっているのかもしれません。
企業の視点としては、投資意欲を高める個人に関連して訴求できる自社の商品・サービスが何かを追求する。
個人の視点としては、投資を資産ポートフォリオの一角としっかり認識して何に取り組むかを考える。
これから、さらに大切になってくる考え方だと思います。
<まとめ>
金融資産の保有割合のうち、現預金が減って投資資産が増えている。
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