社員構成の未来を想定する
先週から、日経新聞で「少子高齢社会の実像」というタイトルで、経済の考察が連載されています。日本の人口減少や少子高齢化の特徴を説明したうえで、経済成長、格差、貧困にもたらす影響を議論し、どのような政策が考えられるのかを考察するものです。
12月6日の記事を一部抜粋してみます。
経営学者のピーター・ドラッカー氏は、人口構造の変化は予見可能なものだと指摘していました。書籍「イノベーションと企業家精神」では、次のようにあります。
そのうえで、ほとんどの組織はそのことに対応できていないと指摘しています。
この示唆は、大きく2つのことに通じると考えます。ひとつは、市場やお客さまの変化を想定しきれていないことで、マーケティングや事業機会を的確に捉えられていないということ。もうひとつは、事業活動を行うに必要な内部人材という資源の確保を難しくしてしまうということです。
予見可能性が高いながら対応できていない理由のひとつが、短期的に出てくる影響が限定的だからでしょう。合計特殊出生率が2を下回っても人口が増えていれば、どうしても切迫感は感じづらくなります。私たちには、損失を先送りしようとする性質が備わっています。負の影響を実感していないなら、長期的にはまずそうだと感じていても、当該課題への対応の優先度をなかなか上げようとはしないものです。
12月8日の同連載では、次のように説明されています。(一部抜粋)
これらのことは、国という単位の組織だけではなく、企業という単位の組織でも起こっていることだというのが、ドラッカー氏の示唆から導き出されることなのだと思います。
従属人口指数の考え方の通り、企業も短期的には、新卒などの若手社員の入社人数が減ったほうが、経営効率が高まります。ビジネススキルの低いメンバーを新たに加えることに投資をしないことで、その資源を資産の蓄積や前から在籍しているスキルの高いメンバーに投資することで、生産性が高まるからです。どうしても回らない業務があったとしても、外注化して対応することもできます。
新しいメンバーを加えて、自社についての教育や社会人教育から行い、ビジネススキルを1から覚えてもらうのは手間がかかるものです。その手間を少なくするほうが、事業がスムーズに進みます。しかし、それはあくまでも短期的な視点での話です。その考え方では長期的にうまくいかなくなるのは、負の人口モメンタムの考え方の通りだと思います。
しかし、ドラッカー氏の示唆の通り、いろいろな企業の方をお話しても、次のようなことは想定していない、取り組んでいないことが多いものです。
・現状のままだと、自社の5年後、10年後の社員構成がどうなっていくか、社員構成のピラミッド予測ができている。すなわち、現在の社員と採用のあり方・実績を続けていくと、社員総数が何人で、その内訳として社歴年数、年齢、性別、職種、役職、スキル、経験値などの属性がどのような構成になっていくのか想定できている。
・自社の長期ビジョン、経営戦略を進めていこうとした場合、5年後、10年後の組織図が現状からどんな組織図に変わっていなければならないか、描けている。その組織図上にいる人は、社歴年数、年齢、性別、職種、役職、スキル、経験値などの属性がどのような内訳の構成になっているべきか明確になっている。
・両者のギャップから、どんな人材調達・育成をしていくべきか、方針がまとまっている。それに向けた取り組みが既に始まっているか、あるいはいつから何を始めるか決まっている。
新規の人材流入の減少が、組織の発展・成長に与える影響は、国同様、短期と長期ではまったく異なると言えます。そして、新たな人材や若手人材のパイ全体が減っていく今後は、急に外から人材調達を始めようとしても、これまで以上に難しくなります。
一定の未来が確定している社員構成への対応感度を高めていく視点を、もっともつべきだと言えるでしょう。
<まとめ>
人口動態の今後を想定する視点で、組織のメンバー構成を想定する。
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