二重価格の今後を考える
6月14日の日経新聞で、「値上げ 変わる食卓の常識4 二重価格でも「安すぎる」」というタイトルの記事が掲載されました。「インバウン丼」と称されるなど、外国人観光客向けの高額な丼ものが最近話題にもなっていますが、その背景について取り上げている内容です。
同記事を抜粋してみます。
同記事からは、2つのことを考えました。ひとつは、料金設定の適切な根拠を明確にすることの必要性です。
同記事中の識者の示唆によると、料金の適切な説明ができれば、複数の価格設定は法的に問題にならないということです。逆に言うと、説明ができるぐらいに料金の根拠を明確にしておく必要があるということになります。
かかる費用など、商品・サービスの料金の構成要素のうち、どこまでを細かく開示するかは別として、少なくとも異なる料金設定を行うのであれば、その理由を尋ねられた時に十分説明できる考え方の準備をしておくことが求められそうです。
もうひとつは、同じような商品・サービスで多重価格やダイナミックプライシングが存在する状態が、今後ますます広がっていきそうだということです。
交通機関や宿泊代が、まったく同じ便益を享受するものながら、繁忙期・閑散期で異なる料金設定になっているなどの多重価格には、私たちはある程度なじんでいます。しかし、同記事の例のように、例えば食事ではまだあまりなじみがないと思います。
一方で、他国では観光客向け・外国人向け料金というやり方は、ある程度浸透していると言われています。日本においても、今後この動きは広がっていくことを予感させます。このことは、観光業以外にも波及していきそうです。
そもそも、多重価格やダイナミックプライシングといったやり方自体は、これまでにも存在していました。
性能が劣化したわけでもないが売れ残りのセール品を安く売る、今申し込んだ人だけ割引の特典があるなど、わけありの理由がわかるものであれば、これまでにも広く受け入れられてきました。こうしたやり方が、今後さらに幅広い場面や状況、用途に広がっていくのではないかと、同記事からは予感する次第です。
それにしても、トロやイクラがのった1万8千円の丼を、安いと言って食べる人がいるということです。2時間かけて食べる懐石料理ならともかく、丼ものなら20分ぐらいで食べ終わるでしょう。日本人の一般的な経済感覚では、当てはまらないものがあります。
もちろん、すべての外国人が同様な感覚と判断をするわけではなく、あくまで一部の人の例のはずです。そのうえで、私たちの感覚ではあり得ないような料金設定の料理が売れるということは、それだけ国内外の価格差が広がっているということ、日本国内の商品・サービスの値付けで安いものがあるということだと考えられます。
国内外の市場を超えて、商品・サービスの価格設定の動きに敏感になるということは、今後ますます求められそうだと思います。
加えて、インバウンド消費の需要は、国際的な移動ができなくなるような環境に置かれると一気に蒸発してしまう可能性があります。事業の収益を、来日する人が実地でインバウンド消費することに過度に依存することは、リスクが高いというのも認識しておくべきだと思います。
<まとめ>
多重価格やダイナミックプライシングは、今後さらに幅広い場面や状況、用途に広がっていくかもしれない。
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