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国内総生産(GDP)最高更新の今後

内閣府が15日に発表した日本の4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.5%増、年率換算で6.0%増でした。金額ベースでは560.7兆円で過去最高です。株価全体も一進一退しながら比較的堅調な状態が続いています。

一方で、景気の先行きには懸念もあがっています。経済情勢は今後どのように動いていくのでしょうか。今週取り上げられている情報から、いくつか考えてみたいと思います。

8月16日の日経新聞記事「日本、外需頼みの高成長 輸出が反動増」から一部抜粋してみます。

日本の4~6月期の実質成長率は前期比年率で6.0%を記録した。柱の個人消費は物価高が響いてマイナスに転じた一方、外需が高成長をけん引した。もっとも外需のプラス寄与は前期からの反動増や輸入減に支えられた。世界経済の減速懸念がくすぶる中、今後の安定成長には不安が残る。

内閣府が15日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比1.5%増、年率換算で6.0%増だった。年率の寄与度は外需がプラス7.2ポイント、内需はマイナス1.2ポイントだった。

年率6.0%を超えるのは新型コロナウイルス感染拡大による急減速から持ち直した2020年10~12月期(7.9%増)以来。金額ベースでは560.7兆円と過去最高だった。コロナ禍前の19年7~9月期(557.4兆円)を上回った。

外需の内訳を見ると、輸出は前期比3.2%増と2四半期ぶりのプラスだった。半導体の供給制約が緩和されて車の輸出が伸びたほか、輸出として計算されるインバウンド(訪日外国人)の回復もプラスに寄与した。

輸出が伸びたのは3.8%減だった1~3月期の反動という側面が強い。金額ベースで輸出をみると年換算で110.2兆円と22年10~12月期(111兆円)比0.7%落ち込んだ。半導体市場は調整局面が続いており、半導体製造装置の輸出はマイナスに寄与した。

輸入は前期比4.3%減と1~3月期の2.3%減からマイナス幅を拡大した。原油など鉱物性燃料が減少した。輸入はGDPの計算から控除される。輸入の落ち込みが輸出の実力以上に外需の成長への貢献を強めた。

内需関連の項目は、コロナ禍後の自律的な回復に不安を残す。

個人消費は前期比0.5%減と3四半期ぶりにマイナスに転じた。物価高で食品や飲料が落ち込んだ。外食や宿泊などサービス消費は0.3%増えたものの、22年10~12月期(1.3%増)以降は伸び幅の縮小が続く。

内需のもう一つの柱である設備投資は、0.0%増で横ばいだった。

日本政策投資銀行の調査では23年度の全産業の国内投資計画は前年度実績比で21%増える。ただ設備投資は計画より下振れしやすい。米欧の利上げによる世界経済の後退が現実になれば企業の投資マインドは冷え込む。

4~6月期のGDPはインフレの進展も鮮明になった。名目成長率は前期比年率で12%だった。円安などが寄与した。コロナ禍を除くと90年4~6月期(プラス13.1%)以来の伸び率だ。国内の総合的な物価動向を示すGDPデフレーターは前年同期比3.4%上昇し、3四半期連続のプラスとなった。

GDPの半分以上を占めるのが消費支出です。総務省が発表する「消費支出2人以上世帯」の統計を見ると、低迷の傾向がより明確に見えてきます。

消費支出2人以上世帯 前年比は、2023年3月以降マイナスが続いています。2月が+1.6%だったのが、3月-1.9%、4月-4.4%、5月-4.0%、6月-4.2%(6月分が最新の発表)となっていて、3月以降悪化しています。

5月分と6月分を、前年度以前と比べて見ると、次の通りです。

2019年5月+4.0%、2020年5月-16.2%、2021年5月+12.5%、
2022年5月-0.5%、2023年5月-4.0%

2019年6月+2.7%、2020年6月-1.2%、2021年6月-4.3%、
2022年6月+3.5%、2023年6月-4.2%

5月は、昨年(2022年)に対2021年比でマイナスになっていたところから、さらにマイナスになっているということです。2021年は対2020年比で大幅プラスですが、これは2020年のコロナ禍1年目緊急事態宣言直後で大幅減となっていたものが8割程度戻ったにすぎません。5月でいうと、2019年以前の消費支出から大きく後退したままというわけです。

6月は5月ほど対前年比で極端な動きがありませんが、トータルで2019年以前の消費支出から後退しているという点は5月と同じです。

賃上げの動きが定着しましたが、今のところ物価の上昇に力負けしていて、実質的な賃金が減っていることが、消費低迷の主な要因のひとつと考えられます。日経新聞記事を参照すると、6月の実質賃金は前年同月比1.6%減で、5月の0.9%減から減少率を拡大し、15カ月連続のマイナスとなっています。今後、インフレが落ち着く中でも賃上げの動きが続き、実質賃金が上がっていくかどうかが、消費支出の動向を見る上でのポイントとなりそうです。

設備投資については、輸出先である国外の需要の動向が大きく影響を与えます。

同記事にある米欧の利上げの影響が実体経済への影響として出てくるまで、数カ月~1年かかると言われています。日経新聞別記事によると、FRB7月公表の銀行の融資担当者調査では、基準を「厳しくした」と答えた割合から「緩めた」を引いて算出する大企業・中堅向け指数が4.8ポイント上昇したということです。融資の厳格化で設備投資の下押しとなれば、日本からの輸出も当然影響を受けます。

中国も景気減速の兆しがあります。景気の先行指標のひとつと言われる製造業購買担当者景気指数(PMI)は、7月も好調・不調の境目である50を下回り、4カ月連続の50未満となりました。中国では大学生を含めた若手人材の就職難が進み、6月の16~24歳の失業率は21.3%で、3カ月連続で最高を更新したそうです。7月の工業生産の指標が6月から鈍化、値下げしても売れない不動産が増えているなど、中国の経済関連指標は弱めの内容も増えています。

7~9月期の日本のGDPは、既にエコノミストから実質成長率でマイナスの予測も出ています。今は良さそうに見えなくもない景況感も、今後はより注意を要するのかもしれません。消費支出を後押しする実質賃金の動き、内需が連動する国外景気の動向は、今後の事業活動などを考えるうえでも注目してよいポイントではないかと考えます。

<まとめ>
日本国内の実質賃金の動向、海外経済の動向は、今後の内需への影響が大きい。

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