値上げへの反応
6月27日の日経新聞で、「値上げへの生活者の反応 支出増の痛み、秋に実感」という記事が掲載されました。加工食品、酒類などを扱う食品卸大手国分グループ本社社長 国分晃氏の見解を紹介しながら、所得が伸びない中、生活者は値上げをどのように受け止めているのかについて示唆している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
上記からは、3つのことを考えてみました。
ひとつは、国内調達・国産品のメリットの再評価です。
原材料を輸入に頼るものほど、危機時には調達不安と仕入れの値上げに直面することを、上記からも改めて認識します。意外にも食パンは6%値上げでとどまっていますが、供給不足に伴う改定が今後見込まれることで、結構な値上がり幅になることが想定されます。今は影響が少ない商品も、生産の過程で輸入依存度が高いものはまだ値上がりしていくことが想定されます。
一方で、国産を主とするコメは値段が上がっていません。危機管理の観点からも、国内調達・国産品のメリットは再評価されるべきだということが、伺えます。
日経新聞のウェブで「養殖」をキーワードに検索すると、関連記事が3718件出てきました(6月27日現在)。最も古い公開記事が2010年2月23日 です。ここから12年4か月間で3718件ということは、1か月あたり平均で約25.1回「養殖」に関する記事が出てきていることになります。
そして、この1か月間で「養殖」に関する記事は、52回確認できました。きちんと統計を取ったわけではありませんが、この12年間の1か月平均の推定2倍以上です。これは、国内調達の観点からも養殖が注目され、養殖に関する記事が増えている結果ではないかと想定されます。内容も、魚やカキなど一般的に養殖で思い浮かぶ食品に加えて、コオロギの養殖に関するものもありました。食品以外に工業製品も含めて、国内調達・国産に商機を見出すのは、有力な可能性があると思われます。
2つ目は、消費・購入のときの心理的な影響です。
同記事では、キャッシュレスでの買い物が支出の痛みを心理的に緩和しているのではないかとあります。ある企業様から聞いた話では、かつてECで代引きのみにしていた決済方法を、クレカやアプリなど決済可能な手段を広げたところ、目に見えて売上高の動きが好転したということです。
ツールによって、現金決済のわずらわしさから解放される、(支払っていること自体に変わりはないが)「今、ここでお金を減らしているという痛み」を和らげてくれることで消費を後押しできるなら、工夫として悪くないと思います。
3つ目は、本質的に判断することの大切さです。
同記事では、「値上げしても販売数量が変わらない」=「今までが安すぎた」、「不当な安売りは長続きしない」、「ステルス値上げ(容量を減らして価格を維持)による表面的な頑張りは長続きしない」と示唆しています。ステルス値上げが必ずしも悪いとは言えず、戦術的にあり得るやり方ではあります。
そのうえで、「これまで安すぎた値付けを、なるべく気づかれずにそのまま維持しようとするのは、本質的ではない」という示唆は、一考に値するように思います。確かに、中身がゼロになるまで減らすことはできませんので、どこかで上げねばならないなら今のうちから、というのもうなずけます。
環境変化を察知して、工夫しながら商機を見出し、本質的に臨むべき。同記事からそんなことを考えてみた次第です。
<まとめ>
国内調達・国産品のメリットは、ますます再評価されるかもしれない。
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