「ワークライフフィット」という言葉があるそうです。
「ワークライフバランス」という言葉が米国発で日本にも輸入され、各企業で課題テーマとなったり、働き方改革につながったりしてきました。その後、米国では「バランス」というより「統合」のほうが本質を表しているということから、「ワークライフインテグレーション」と言われるようになっているそうです。他に「ワークライフフィット」という表現もあるというわけです。
CNN.co.jp(2017.12.02付)の記事に、次のようにあります。(一部抜粋)
他にも「ワークライフインターフェイス(仕事と生活の相互作用)、「ワークライフスウェイ(仕事と生活の間の揺れ動き)」などの言い方も紹介されています。いろいろな言い方があるようですが、いずれにしてもその真意は、「仕事や会社とプライベートとを完全に切り分けることなどできない」という考え方にあると言えそうです。
書籍「従業員のパフォーマンスを最大限に高めるエンゲージメントカンパニー」(広瀬元義氏著、ダイヤモンド社)では、ワークライフフィットについて「会社に長時間いて幸せな人はそうすればいいし、家で働いて会社に1時間しか来たくない人はそうすればいいという、働き方に対する考え方」と紹介した上で、次のようなエピソードを挙げています。
確かに、子連れ出勤を認める日本企業は、少数派でしょう。
いろいろな企業で経営者や経営幹部・管理職の人と話す機会に、社員が仕事と生活を明確に区分しようとすることへの不満や懸念を聞くことも多いです。片手間で仕事をしているように見えたり、引き受けたことをやりきるより生活時間の確保を優先したりするように見えることで、組織としてのパフォーマンスが下がっていくのではないかと感じられるためです。そうした不満や懸念は理解できるものがあります。
そのうえで、社員に対して仕事の成果にコミットを求めるのであれば、上記の例のように、会社にプライベートを持ち込ませる覚悟があるのかも、これからは同時に問われるべきではないかと考えます。
開始と終了の時刻を明確に区切れていた、かつての製造業や店舗型ビジネスのサービス業などの形態ではない事業が増えています。ネットを介して常時つながるお客さまへの対応や、時間・場所の制約を問わず企画できるような仕事では、開始・終了の時刻を予め一律に決めるのが難しくなります。かつては時間を明確に区切れていた事業であっても、その中には時間を区切るのが難しくなった工程も出てきていることでしょう。
加えて、配偶者のどちらかが集中的に家事をマネジメントするというやり方の世帯も減っています。子育ての問題に加えて、介護の問題なども増えています。
仕事と家庭と、どちらが大切なのかを選ぶことなどできません。どちらも大切で、選びようのないテーマです。仕事を完全に対価を得るための手段とみなし、時間を切り売りして作業だけするパートタイムジョブを行うと決めた人であればまた別かもしれませんが、多くの人にとって仕事も家族も同等に責任が伴い、切り離すことはできないものだと思います。
社会環境の変化が起こり、私たちの就業環境にも変化が起こっているのですが、かつての社会環境・就業環境を前提にしたままのルールや風土で今も続いているという会社も多くあります。一昔前は、「会社にプライベートを持ち込むな」が合っていた環境だったかもしれませんが、今は会社にプライベートを持ち込んだり、プライベートに会社を持ち込んだりするような時代です。
個人の生活と職業生活・会社生活は、切り離すことはできない関係であり環境でもあるということの再認識が必要だと思います。その意味では、自身がどうありたいかを自覚したうえで、職場の規律を守りつつ自分に合ったやり方を見出していく「ワークライフフィット」という言葉でこのテーマに向き合うのが、よいのかもしれません。
<まとめ>
仕事と生活を切り離すことはできない。自分に合ったやり方を見つけていくことが必要。