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組織外からの人材を受け入れる(2)

先日、ある企業様で経営幹部の方とお話する機会がありました。同社様では人材に関するいろいろな課題をお聞きしたのですが、その中のひとつに「社員からの提案が少ない」ということを挙げられました。

ここで言う「提案」は、新規事業やイノベーションの提案などではありません。もちろん、そうした提案があがってくると理想的ですが、それら以前の、業務プロセスの改善や工夫レベルの提案も社員からあがってこないと言います。

他方で、社員間の関係性は非常によいと言います。お互いが配慮し合い、よい協力関係をつくっていて、コミュニケーションもまったくぎくしゃくしていないそうです。

これらの事象の要因として、同幹部は「意見を言いそうにない人を採用している結果ではないか」と指摘していました。その背景として、以下のような点が挙げられます。

・今のビジネスモデルは強固で業容も拡大している。技術のノウハウも蓄積がある。

・真面目で与えられた役割を忠実に遂行する人材を入れ、技術を覚え、実行できる人を増やしていけば、その分業容が拡大する。

・自社の今後の飛躍のために、どういう要素を満たしている人材を採りたいかの基準がない。採用活動を成り行きに任せてきた結果、真っ向からものを言ってこないような、寡黙に指示されたことを実行する、経営層にとって心地よい人材ばかりを採用していた。

・その結果、既存の業務フローの枠を超えて発想することをしない文化が、組織的に強められていった。

まったく同様のお話を、以前別の企業様でも聞いたことがあります。ベンチャー企業を標榜しながら、ほとんどの社員が自発的なベンチャースピリットをあまり持ち合わせていないというお話でした。お聞きしたところ、「伸びてる感のある組織で働いてみたい。一方で、自分がやるべき仕事はすべて具体的に指示してほしい。気が付いたら、そのような人材を集める結果になっていた。社員同士の関係性はとてもよい」というわけです。

前回の投稿では、優秀な人材を組織外から呼び込むことが生産性を高めることにつながるということを取り上げました。ポイントは「優秀な人材」であることです。

ただし、「優秀な」というのは、何かの知識や技能などに秀でていることを指しているわけではありません。それらも優秀さの要素の一部ですが、ここで意図しているのは、「自社が求めたい優れた面、秀でた面を持ち合わせている人材」ということです。職業人としての資質や行動特性、志向性、自社理念への共感度の高さなども含まれます

同社様の場合は、何をもってして自社が求める優秀な人材と言うかの定義(基準)がつくられていないということです。基準がなければ、当然それに沿った採用もできないということになります。

もうひとつの観点は、優秀さの定義はひとつとは限らないということです。同社様がこれまで採用してきた上記イメージの人材は、同社様で活躍できる人材像のうちのひとつだと言うことができると思います。既存事業の現場を支えてくれるハイパフォーマーになりやすいからです。

しかし、既存事業のさらなる発展や新規事業を開拓していこうとすると、別の優秀さをもった人材も必要だということです。例えば、既存のやり方とは一線を画して新しい発想で提案し事業を開拓するような人が組織内に一部存在する。そうした人と共に仕事をすることで、上記イメージの人材の中から新しいことを発案するのに向いている人が、一定数育成されていき輩出される。そのような人材マネジメントが想定できているとよいかもしれません。

しかし、同社様には、どのような人材を求めるべきか、あるいはどのような人材の組み合わせが望ましいかの想定がないために、そのような人材マネジメントが存在していません。

どんな人を呼び込むべきかの基準が存在しているか、それがこれからの自社の展開に合っているか、その基準に合った選考ができているか。組織外からの人材を呼び込むにあたって、振り返ってみるべきだと思います。

<まとめ>
自社がどんな人を求めるべきかの基準を定義する。

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