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EC宅配全廃という選択肢

4月27日の日経新聞で、「ワークマン、EC宅配全廃」というタイトルの記事が掲載されました。購入された商品を自宅まで運ぶのをやめて、店頭受け取りに一本化し、コスト減や「ついで買い」を促す方針だという内容です。

同記事の一部を抜粋してみます。

~~ワークマンのECで商品を購入すると、受取場所を自宅にするか店舗にするか選べる。店頭受け取りという選択肢は、ユニクロやしまむらといった他の大手衣料品チェーンも導入している。ただ、ワークマンは2027年3月期末までに1段階先へ進む。宅配の全廃だ。ECの商品受け取りを、店頭に一本化する。

同社は2月、先取りする形で、約150品目のEC専用商品を「店頭受け取り限定」で発売した。キャンプ用品が中心で、1人用テントは4900円から。土屋哲雄専務は「全国に500店以上あれば店頭受け取りで問題はない。不満の声はほとんどない」と話す。ワークマンは既に約940店あり、全都道府県を網羅している。

ワークマンのECでは宅配の場合、原則700円以上の送料がかかる。負担を嫌って店頭受け取りを選ぶ顧客が、現状でも約8割に達している。飲食料品のような「すぐに必要」という商材ではないことも背景にある。

土屋専務によると、EC専用の物流センターを運用していた時期は「宅配のコストは店頭への配送のおよそ10倍だった」。梱包などに人手がかかり、1万円超の高額購入の場合はワークマンが送料も負担する。「アマゾンのように自社物流網を持っているところには勝てない」 店頭受け取りに一本化すれば、EC向けの設備や人員が不要になる。

ECの返品率は5%で、店舗で販売した場合の10倍に達する。「サイズや質感が思っていたのと違う」といったケースが多いためだ。受け取りの際に試着してもらえば行き違いが減る。

店頭受け取りと並行して、ECでもう一つの逆張り戦略も進めている。商品の絞り込みだ。20年のピーク時に3700あったアイテム数を、約3割の1200にした。「店頭にそろっていない商品も選べる」のがECの魅力だが、売れ行きの鈍い商品まで商品説明や動画を作り込むのは採算が合わないと判断した。~~

同記事から3つの点について考えました。ひとつは、自社(あるいは自分)の強み領域に資源を集中することの大切さです。

前回の投稿「アマゾンの減益ニュースを考える」では、物流費や人件費などの費用高騰に圧迫されて、アマゾンが減益になっていることについて取り上げました。上記記事では「アマゾンのように自社物流網を持っているところには勝てない」とありますが、そのアマゾンでさえこの状況です。自社物流網を持たない同社には配送は大きな負担であることが想像できます。

自宅への配送サービスを続けるならば、どこかのタイミングで価格改定をしなければもたないでしょう。「3700ものアイテム数の商品説明や動画を作り込むのは採算が合わない」点についても同様です。

お客さまにとって、店まで行く必要がない自宅への配送が選べたり、サイト上で多くのアイテムを選べたりするのは、大きな魅力のはずです。しかし、配送というサービスを維持するために商品価格が上がったり、「サイズや質感が思っていたのと違う」といった不安材料がつきまとったりするなど、お客さまにはデメリットも発生します。

一方で自宅への配送をやめれば、低価格高機能な商品の提供を受けられ続けます。店に行った際に別の商品にも魅力を感じ、買いたいと思う対象も広がるかもしれません。お客さまにとって、メリットのほうがデメリットを上回るという判断なのでしょう。

経営資源は限られています。多店舗でフランチャイズしている、低価格高機能な商品の提供ノウハウがある、などの自社にとっての強み領域での取り組みに経営資源を集中させ、そうでない取り組みからは撤退する。そのことの有効性を感じさせる記事だと思います。

自社の特徴を踏まえた上で、どんな取り組みに特化することがお客さまへ提供できるメリットを最大化させるのか、総合的に判断することの大切さを改めて認識します。

続きは、次回以降考えてみます。

<まとめ>

自社の強み領域に集中するための方法を考える。

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