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英語そのものではなく、学習が自分にとってのテーマだった

先日、ある組織開発の専門家の方とお話する機会がありました。もともと英語学習への関心が高く、受験生時代の英語の偏差値は80。難関大学の英語学科に合格し学んだということですが、その後の経緯がキャリアを考えるうえでとても興味深く、参考にもなるお話だと感じました。

高校までの英語学習で、特別な勉強方法やどこかの塾に通っていたのかと聞いてみると、そうではなく自力で勉強していたそうです。下記のようなお話でした。

・毎日教科書を音読する。音読は学習効果が高いとのこと(1日に1時間以上音読)。

・英語を日本語に変換せずに覚えた。例えば、「Apple」という単語を覚えるのに、日本語の「りんご」に変換するのではなく、直接リンゴの画像をイメージするような覚え方をする。

・教科書に出てきた文法と単語はすべて覚える。

・教科書以外の英語の文章も、興味を持ったものは読む。

実行したのはこれだけだったそうですが、これらを毎日欠かさず、(音読含めて)1日に2時間程度は必ず徹底してやるようにしたとのことです。こうした自分なりの学習の工夫を独力でできて、かつ徹底できるのであれば、受験対策で塾に通う必要もないのかもしれません。

しかしながら、大学時代に挫折感を味わったと言います。英語が好きで得意な学生が集まっていたのが、同大学の英語学科です。その環境下の同級生の中では、「自分は英語ができない人」という認識に変わってしまったと言います。そのような中でも、次のような変遷を経て活路を見出していきました。

・大学時代に、地方の子どもに英語を教えに行くプロジェクトなどに参加した。そのことを楽しいと感じた。

・思えば、自分自身も学んで成長していくのが楽しかった。つまりは、英語が自分にとって直接の関心の対象というより、人の成長や人に教える・伝えるということに興味があり、それが自分にとっての直接の対象になるものかもしれないということに気づいた。

・それで、大学卒業して学習教材を作る会社に就職した。

・仕事を続けるうち、個人単位の学習もそうだが、組織(集団という単位)が学習して発展していく「組織開発」のテーマへの関心が高まっていった。そして、大学院に入り組織開発について学んだ(リスキリングまたはリカレント教育と言える)。

・今は、英語とは直接関係がない、組織開発や人材開発、経営コンサルティングの仕事が自分の軸になるようにシフトチェンジしている。

・そのうえで、組織開発というテーマに出合えたのは、英語を学んでいたことの影響も大きい。英語を学んでいたことで、世界で最も組織開発の研究が進んでいる米国の学会や実業界の動きの情報に敏感だったから。

キャリア理論で代表的な考え方のひとつに、「計画的偶発性理論(プランドハップンスタンスセオリー)」というものがあります。スタンフォード大学のクランボルツ教授によって提唱された理論で、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される」とされている考え方です。

キャリアに主体的に向き合って、チャンスだと思われる目の前の仕事に集中しているうちに、よい偶然が重なっていくという仕事観が、そこにはあります。上記のお話は、まさに計画的偶発性理論がよい形で実を結んだ例だと言えるのではないかと感じました。

変化の激しい時代だと言われます。変化が激しいのであればなおさら、あらかじめキャリアを計画したり、ひとつのキャリアの進み方に固執したりすることにこだわらず、よい偶然を重ねていくという視点で仕事に向き合うのもよいと思います。

さらに、2点つけ加えてみます。ひとつは、英語の有用性です。

上記の例でも、英語自体は最終目的ではなく、人生の目的に向かうための途中の過程であり道具でしかありません。そのうえで、英語に通じていたことで、人生の目的や目的を達成するための手段が広がっています。世界の最先端の動きや潮流に関することで、日本語だけで得られる情報が年々限られてきているのは、各所で指摘されている通りです。英語で得られる情報をつかむ力とセンスがあることで、キャリアに広がりが出てきます。

もうひとつは、日本語の大切さです。

その方は、英語以前に日本語力が豊かです。子ども時代から今に至るまで、国語学習と日本語書籍の読書量の多さも特徴的です。いくら英語を学んでも、話すべき内容や根本の思考回路は母国語でつくられます。母国語に親しみ、思考力を高めた上での、英語であり国外情報の収集なのだと思います。

以上、キャリアを考えるうえで示唆的なお話だと思います。

<まとめ>
何かに取り組むことに集中し、その取り組む自分を内省してみる。

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