ウィスキーの乾きが良い思い出に
先日、知人のAさんとお会いしました。オンラインで接点はありましたが、個別にお話することも対面でお会いすることも、先日が初めてでした。その機会、そして、その時の出来事が、たいへん印象的でした。
Aさんは、私よりひとまわり上のご年齢で、いくつかの業界で卓越した成果を上げ、複数の会社経営もなさってきた方です。コーチング領域においても私の大先輩で、ビジネスや対人コミュニケーションにおいて多くの知見をお持ちです。
いろいろな意見交換をしながら飲食しました。その中で、私が主催していてお伝えしたい企画イベントがあり、関連するチラシをお渡ししてその件についてお話しました。
しばらくその件をテーマに歓談していたのですが、Aさんが飲んでいたウィスキーの水割りを倒してしまいました。衣服などは濡れなかったためよかったのですが、テーブルに置いていたチラシに直撃しほぼ全面的にウィスキーがかかってしまいました。チラシはびしょ濡れです。私はそのチラシを1枚しか持っていなかったため、予備はありません。
皆さんがAさんの立場だったら、この時どう反応するでしょうか?
私がAさんに申し上げたのは、「濡れてしまって持って帰れないので、もしよかったら写真を撮ってくださいませんか。あるいは、後で同じチラシのPDFをメールで送ります」です。自分がAさんの立場だったら、おそらくそうしたくなるだろうと思ったので、そのように申し上げました。
Aさんの反応は、予想していなかったものでした。
お店の人に声をかけて来てもらい、次のように頼んだのです。「この書類を、帰るまでどこかに置いて乾かせてもらえませんか。持って帰るので。その頃には乾いていると思うので」
一般的な居酒屋ではなく、少し高めの、落ち着いたバーのようなお店だったからそのように頼めたという背景はあります。ウィスキーだったからで、ビールなら簡単には乾かなかったかもしれないというのもあります。そうはいっても、自分だったらこうはとっさに反応できないだろうという感じでした。
そして私に対してこう言われました。「ウィスキーがかかったこういうチラシが、後になっていい思い出になったりするんですよね」
実際に持って帰った後で捨てずにとっておくのか、持って帰った後すぐに捨てるのかは、分かりません。そのうえで、すぐに捨ててしまうとしても、そのように対応してくださったことでこちらとしてうれしくなるのは、言うまでもありません。
相手から渡されたものを、丁寧に受け取るのは日常的だとして、このように尊重して受け取って大切にするまで私は普段できていないのではないかと、振り返った次第です。このことが、Aさんは自然体でできるわけです。
社会通念上も、Aさんにとって私は目下の人間にあたり、多少ぞんざいな対応をしても許されそうな関係性でもあります。それもあって、とても印象に残る行動でした。おそらく生涯忘れないでしょう。
また、Aさんは、相手(私)の些細な行動に対しても、それを承認する言葉を発する場面がたくさんありました。「お好きなものをどうぞ」と言われたので、シーザーサラダを頼んでいいですかと尋ねたところ、「あー、おいしそうでいいですねー」と力を込めて大げさに。
私もコーチング関連の勉強はしていて、こういうのは相手を「承認」する言動で、ラポール(信頼関係)をつくる(若干おおげさな)行動だというのは分かっていますが、分かっていてもやはりうれしいものです。
・相手を承認する言動を心がける
・相手から渡されるものを、「丁寧」より一歩踏み込んで、「尊重」しながら受け取る
メンバー間がこのような行動であふれると、組織内の関係性やチームビルディングが大きく進むだろうと思います。
先輩に学びたいと思う行動でした。
<まとめ>
相手から渡されるものを、「尊重」しながら受け取る。
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