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日本人の食生活から考えてみた(2)

前回は、日本人の食生活について考えました。世界中でカロリー摂取量が年々増えていく中で、日本は例外的に年々減ってきたというデータを基に考察しました。

前回、日本でのカロリー摂取量減少の背景にある要因として、以下の4つを想定してみました。

1.人々の食への意欲が減退した
2.食以外のことも含め、消費意欲が全体的に減退した
3.食への意識が量より質にシフトした結果、カロリーや炭水化物の消費量が減っている
4.高齢化が進み、カロリー摂取可能量の少ない人口の割合が高まった結果

このうち、2.を予感させそうな内容を、2月5日の日経新聞「「コロナ貯蓄」使わぬ日本 GDP比10%超、将来不安映す 米では取り崩し、消費回復」に見ることができるかもしれません。同記事の一部を抜粋してみます。

新型コロナウイルス禍で積み上がった家計の「コロナ貯蓄」が、日本では減らずに増え続けている。民間試算によると、2022年9月末で62兆円に達し、国内総生産(GDP)の10%を超える水準にまで膨らんだ。将来不安などで個人消費にお金が回っていない。ピーク比6割減となった米国との違いは鮮明だ。賃上げや社会保障改革などで、安心して消費を増やせる環境を整えることが急務となる。

コロナ貯蓄は行動制限などの影響で消費ではなく貯蓄に向かった金額を指す。日銀が21年4月の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で取り上げ、21年末時点で約50兆円と推計。日銀は「感染症が収束に向かう過程でその一部が取り崩され、個人消費を押し上げる可能性がある」と分析していた。

現実にはコロナ貯蓄はさらに増えた。大和証券の試算によると、コロナ貯蓄は9月末時点で62兆円まで拡大した。21年末の日銀推計値から2割以上増えた計算だ。感染の収束と経済の再開に時間がかかり、個人消費は伸び悩んだ。

一方で米国では、積み上がったコロナ貯蓄が取り崩され、消費に勢いよく回ってきた。日本総合研究所の試算によると、米国のコロナ貯蓄は政府による巨額の財政出動もあって21年半ばにおよそ2兆ドル(約260兆円)まで拡大。その後は消費回復とともに減少に転じ、22年12月末時点で半分以下の7100億ドルにまで縮小した。

日銀は個人消費の先行きについて「行動制限下で積み上がってきた貯蓄にも支えられてペントアップ(先送り)需要の顕在化が進む」と予想する。日本総研の井上肇氏も「当面はコロナ貯蓄が消費の原資になる」と指摘する。

こうしたシナリオに対しては懐疑的な声も少なくない。大和証券の末広徹氏は「将来の生活不安が根強い日本ではコロナ貯蓄が大きく取り崩されるとは考えにくい」と話す。

同記事によるとざっくり、コロナ貯蓄について、日本はさらに積み上げ、米国はほぼ取り崩し、欧州は日米のだいたい中間あたり、のような感じです。

世界有数で高い日本の現預金保有率が、コロナ禍でさらに高くなり、そのまま高止まりしているということです。将来不安から貯蓄を積み増そうという動きは、コロナ禍前から指摘されていました。このトレンドは、かなり根強く続くことも想定されます。賃金の持続的な上昇や、金利をはじめとする金融商品の相応の運用益が持続的に得られる環境に変わるなど、大きな環境変化が起こるまでトレンドの反転は難しいかもしれません。

上記のカロリー摂取量減少は、3.の健康志向の高まり以外に、以前からの上昇し続ける高い貯蓄意欲により消費に回すことを避けた結果の2.が大きいのかもしれません。

消費意欲が減退するうえに、今後人口が減っていきます。国内の事業活動においては、限られた消費量のパイの取り合いの中で、いかに自社の商品・サービスを優先的に選んでもらえるかの視点が、一層重要になってきそうです。

ちなみに、前回取り上げたように、日本の平均的なカロリー摂取量は世界平均を下回っているようです。だとすると、周りの人を見渡して、

・自分は食事量が周りの人と同等だと思える人は世界平均を下回って食事量を節制できている人
・少なめだと確信できる人はさらなり
・多い人は世界平均を上回っているかも

といった振り返りができるかもしれません。(これだけをもってして良い・悪い、健康・不健康などの判定はできませんが)

<まとめ>
将来不安による消費低迷は根強いことが想定される。

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