採用での選考に時間をかける
5月6日の日経新聞で、「新卒採用は急がば回れ 非効率がミスマッチ防ぐ」というタイトルの記事が掲載されました。いかに時間を短縮し効率よく業務プロセスを進められるかが、私たちにとって重要な命題となる中でも、時間をかけて採用活動を行う事例を取り上げたものです。
同記事の一部を抜粋してみます。
「質」と「量」は、私たちがさまざまな活動をする上での、もっとも代表的なトレードオフです。
候補者一人ひとりの採用プロセスに時間(量)をかければかけるほど、自社に合った人材の見極めの質は高まります。一方で、1人当たりの採用判定にかかる時間をなるべく短縮すれば、より多くの候補者を集めたり会って判定したりするための活動に時間を使えます。候補者1人に対して無限に時間を投入するわけにもいきません。
1人当たりの採用プロセスにどれだけの時間を使うべきかについて、決まった正解もありませんが、採用選考の結果の質としては、以下を指標として考慮する必要があると思います。
・採用した人材が、入社後に自社で活躍できる人材か
(マッチング率の高さ)
・内定を出した人材が、そのまま入社してくれたか
(辞退率の低さ)
・入社前にイメージしていた就業環境・職務内容と実際とが合っているか。違っていたとしても納得して、一定数が適正に残ってくれるか
(離職率の低さ)
採用時間を可能な限り減らし、効率よく採用数を確保したとしても、上記のいずれか、あるいは複数が思わしくない結果であればあまり意味はありません。
逆に、例えば候補者1人に対しこれまでの採用活動の2倍時間をかけることで内定数を1/2しか出せなかったとしても、辞退率50%だったのがゼロになるなら、そのほうがやり方としては優れていると言えます。同数が確保できたうえでマッチング率や離職率が下がる、つまりは「質」×「量」による全体の掛け合わせが大きくなる、と想定されるためです。
同記事の例からは、「コスパ」や「タイパ」といった物事の進め方だけでは網羅できない要素がある、とりわけ対人の取り組みではそのことが当てはまりやすい、ということを感じます。
時間という途中プロセスの量を投入することで、最終的に得られることの量や質の面でプラスになるかもしれない。採用に限らず、身の回りの活動で振り返ってみたい視点だと思います。
加えて、同記事の例は、これから新たに社会人生活を始める人材に対する社会貢献活動と言えると思います。最終的に自社に入社しなかったとしても、自己発見を深めるという機会を提供し、社会人生活をより良いものにするきっかけとなるからです。
社会貢献活動の取り組みを模索している企業も多いと思いますが、インターンや採用活動といった、既に取り組んでいることのやり方を変えることで、その一助と言えるようになることが、いろいろあるのではないかと感じます。
大学生の就職内定率は、就職氷河期と言われた2000年前後は、就職活動が概ね終息している10月1日時点で60%台前半でした。冒頭の記事では、採用選考の解禁前の今年4月1日時点で既にほぼそれと同じぐらいの内定率58.1%という状況のようです。いかに採用活動で売り手市場なのかがわかります。
自社としての採用市場への向き合い方について、アップデートし続けることの必要性も、同記事からは改めて感じます。
<まとめ>
「質」×「量」というキーワードで、選考を考えてみる。
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