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サーベイのフィードバック

前回の投稿では、「日本の人事部」が主催する「HRカンファレンス」で参加した、「信頼経営」をテーマにしたパネルディスカッションについて取り上げました。今日も、引き続き別のパネルディスカッションをテーマにしてみます。

同カンファレンスで行われた、『「従業員エンゲージメント向上」と「組織活性化」』というパネルディスカッションにも参加しました。これらのキーワードを実現させていく上で有力な方法のひとつに組織サーベイ(診断)があります。サーベイは組織の現状を把握して、課題を発見する手がかりになるからです。

同パネルディスカッションでのサーベイに関する意見交換で、次の2つのことが印象に残りました。

1.「打てば響く感」が大切

好事例として挙げられていたサーベイの取り組みでは、社員に対して充実したフィードバックがなされていました。2名のサーベイ担当で数百人分の回答すべてに目を通し、そこから得られる組織の現状まとめ、組織的な課題と解決のための施策を全社員に共有しているそうです。ちなみに、事例の企業はいわゆるIT企業なのですが、「回答の分析にAIの活用も考えるものの、いかに人の目を通すかが大事だと思っている」ということです。

さらに、個人に対して以下のような個別対応もしているという紹介がありました。
・回答内容に応じて個人に対するフォローのアクションを実行する。例えば、状態が気になる社員には個別に声掛けする。
・回答していない社員には個別連絡する。
・すべてのコメントに対してサーベイ担当が返信する。特に批判的なコメントを書いていた社員には、人事が個別に対話し信頼関係づくりを目指す。
・人事異動・人材配置の提案検討に反映させる。

個別対応を可能にするために、回答結果を上司には直接公開しないという前提で、社員には記名式で回答してもらっているということでした。全社員に開示するサーベイ結果には個人名が特定できない状態にしていることで、社員からの抵抗がないそうです。

社員によっては、余計なおせっかいだと感じる人もいるのかもしれませんが、これを業務として行っているというのを入社時に説明し同意してもらうという徹底ぶりです。

数百人分の回答すべてに目を通し、例外なく上記を実行するのは相当なエネルギーが必要ですが、「答えれば何らかの結果につながる」という納得感がサーベイに協力的な風土を生み出し、それがよい社風づくりにも寄与しているという説明がありました。「聞くだけだと答えてくれなくなる。フィードバック、アクションをすることで、答えてくれる。」というわけです。「経営に自分も参画してくれているかのような、「打てば響く感」が大切」という説明が印象的でした。

私も仕事でご一緒する企業様で、組織サーベイに取り組んでいる(あるいは取り組もうとしている)という話を聞くことがあります。その際にまず確認するのは、社員へのフィードバック機会をつくっているか(あるいは計画しているか)ということです。上記のような例すべてはできないとしても、最低限全社的な結果とそれを受けて検討する取り組みを説明する場を設けることはすべきでしょう。

しかし、これをやっていない企業も多いものです。あるいは、結果レポートを全社員にメール送信して終わり、という企業も散見されます。これだと、組織サーベイをやっただけ社風が後退し逆効果となることもあります。組織サーベイは社員による投票と同じです。投票すれば現状をより良くする可能性につながるという「打てば響く感」が、組織問題を改善し、さらには良い社風と投票率を上げるポイントになります。そのことを改めて感じました。

2.運用が8割と考える。

よく、人事制度や組織サーベイなどの仕組みは、仕組み5割・運用5割と言われることがあります。立派な仕組みをつくってもそれだけでは機能せず、どのように取り組むかが重要という視点です。評価ツールの秀逸さもさることながら、ツールを使って評価する評価者の姿勢やフィードバックへの取り組みが、人事評価を生きたものにする上で重要なわけです。

その上で、同パネルディスカッションでは、運用が5割ではなく8割というお話でした。仕組みに凝るのはよいが、現状存在する仕組みを使い切ること、継続すること、当事者にフィードバックすることが、組織をより良くするために大切ということです。仕組みは、運用を継続する中で改善すればよいという視点です。この視点も、パネラーに共通していました。

これと逆の状態になってしまっている企業を見かけることがあります。つまりは、凝ったサーベイを作って定期的に実施しているが、作っただけで慢心してしまい、運用が毎年決まった時期に通過するだけの「季節の風物詩」のイベントになってしまっているということです。

「サーベイは不要」「労力使って回答させているが意味があるのか」という意見が出るのはよいとして、使うということを本当にしているのかを振り返ってみるべきだと思います。

<まとめ>
「打てば響く感」のフィードバックを大切にする。


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