孫育て休暇から考える
3月16日の日経新聞で「孫育て休暇、地方公務員に広がる 郡山市は45人利用」というタイトルの記事が掲載されました。育児休業・育児休暇の制度が孫まで対象になるという概念が自分の中でなかったため、新鮮な内容でした。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事からは、現存する様々な社会制度や企業内の雇用制度ができた当時から、環境変化を踏まえたうえで、改めて2つの前提を見直す必要があることを感じました。それは、「世帯の構成メンバー」と、「メンバーの属性や取り巻く実情」です。
子どものいる世帯については、いろいろな制度が、会社員の父親が世帯主、専業主婦の母親、子ども2人というモデルをもとにつくられて、そのまま今に至っている面があります。例えば、正社員が無限定で残業し転勤することを所与の要件としていた雇用がそうです。父親の仕事の都合で居住地が変わることに、他の家族全員が合わせることが前提となっています。この前提は当然ながら、母親も会社員の場合通じなくなります。
女性を中心とする時間給労働者で103万円や106万円などがネックとなる年収の壁問題もそうです。母親の大半が、専業主婦という形態の中限られた時間の範囲内で、家計の補佐的に就業することを前提としていた制度の名残りだと言えます。
もちろん、今でもそうしたライフスタイルを選択する人もいるわけですが、世帯全体の過半を占めるようなモデルではなくなっています。単身世帯、別居世帯、両親共働き、会社員(被雇用者)以外の就業形態の拡大など、世帯の構成メンバー・属性も多種多様になっています。何かひとつのあり方を前提のモデルとした制度は成り立たなくなっていると言えます。
しかしながら、例えば、総合職と一般職を区分し、事実上前者が男性正社員対象、後者が女性正社員対象といった運用をしている会社を今でも見かけます。総合職と一般職という区分の設置がその企業の戦略に合致している可能性はありますが、性別や国籍等の属性で無条件に区分する運用がこれからの戦略に合致しているとは思えません。
冒頭の記事に関連して、かつては55歳定年制だったのが、今では従業員に対して70歳まで就業機会を確保することが「努力義務」となっています。55歳定年時代にはほとんど想定されませんでしたが、今後は就業中の従業員で孫育てに参加するという人材も増えていくものと思われます。その観点では、同記事のような事例は今後の休暇制度の在り方としてひとつのきっかけになるかもしれません。
そのことによって有給での休暇が数日間増えるということもさることながら、そのような考え方やルールに沿って気兼ねなく休めるということが発言権を得ることのほうが、意義として大きいと考えます。
会社によっては労働環境の制約が大きいところもあり、難しいことだとは思いますが、改めて、
・社会全体の労働供給力がさらに減っていく中で、一人ひとりの労働参加と労働生産性向上がますます重要になる
・それらを実現させるうえでは、多種多様な人材を雇用し、強みを発揮して活躍してもらうことがポイントになる
・そのうえで、評価や処遇は、労働参加自体ではなく具体的な貢献でみるのが基本となる。つまりは、(短期、中長期で求める適切な時間軸という観点はあるものの)各人材がもたらす成果の大きさや付加価値の高さが基軸になる
・多種多様な人材を雇用=誰でも雇用する、ではなく、自社の理念やビジョンへの共鳴など、自社が妥協すべきでない要素をクリアしたうえでの雇用である
などを実現させていく必要があると思います。
<まとめ>
環境変化に合わせてルールを適切に見直す。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?