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環境整備について事例から考える

先日、京都にある傳來工房(でんらいこうぼう)様の環境整備の取り組みを見学させていただく機会がありました(同社様の許可を得て、社名を紹介しています)。同社様は、平安時代初期の創業から1200年続く歴史のある長寿企業です。同社様が力を入れて取り組んでいるのが環境整備で、当日の見学ではその内容に圧倒させられました。

傳來工房様HP:https://www.denraikohbo.jp/

同社様の環境整備について、HP及び当日の講和でお聞きした内容から、主なポイントをいくつかご紹介します。

同社様では、「傳來工房 三つの大切」として、「1.お客様第一主義」「2.品質至上主義」「3.環境整備」を掲げています。環境整備は、1.2.を実現するための日々の歩みという位置づけになっています。

なぜ、環境整備なのかということについて、次の通り説明されています。(当日の講和資料より一部抜粋)

傳來の我々はお客様の笑顔と評価を得て、お客さまの想像と利益を図ってこそ、世間に容れられ、世間に超え出られるのである。その際、人に見られる傳來は、単にその製品にとどまらない。それは『環境』としての傳來である。清潔な傳來、整頓された傳來、安全な傳來、衛生管理の行き届いた傳來、礼儀、規律ある傳來にしか、お客様の満足を生み、高品質の製品を生むことはできない。したがって、礼儀、規律、清潔、整頓、安全、衛生は、環境としての傳來が日々の実現を果たすべき整備項目である。

同社様では、環境整備を「1.礼儀、2.規律、3.清潔、4.整頓、5.安全、6.衛生」の6項目と定義し、次の通り意味づけしています(当日の講和資料より)。

環境整備とは、仕事の原点である。これを磨き込むことによって、社員の人格も、製品も、サービスも、ピカピカに輝いてくる。

整頓に関連しては、「3定(定位置・定品・定量)活動」を徹底することを取り組みの基軸のひとつにしています。同社様での3定の定義は次の通りです。(HPより)

3定とは、業務効率化、コスト削減するために、部門ごとに課題を抽出し、解決するための活動

最も使いやすく、戻しやすく、管理しやすく、しかも美しく
① 定位置 = 最も生産効率の上がる場所
② 定品  = 決められた場所以外置けない
③ 定量  = 欠品を起こさない最小の量

この3定を含む環境整備活動に日々継続的に取り組んでいます。そのうえで、毎朝15分間、出勤している全社員で一斉に環境整備活動のみに集中して取り組むための時間や、2ヶ月に1度丸一日をかけて環境整備活動を行う「環境整備デー」などの仕組みがあります

この取り組みの徹底ぶりと、活動した結果の状態が、圧巻でした。
現地現物で見るのに比べて、画像では臨場感に限界があるとは思いますが、様子の一部について下記をご参照ください。

整然とした作業環境
必ず元の保管場所に戻るようラベルが工夫されたファイル

今では環境整備が同社様の代名詞にもなっています。環境整備を通した業績の向上や社員教育などの成果に注目が集まり、国内外のメディアによる取材や名誉ある賞の受賞、年間500名以上の他社経営者様に向けた環境整備見学会の開催に繋がっているそうです(HPより)。

なぜ、同社様の環境整備の取り組みはこのように充実し、成果につながっているのでしょうか。そして、地盤沈下することなく継続することができているのでしょうか。私なりに考えたことをまとめてみたいと思います。

・大きな目的を掲げ、メンバー全員で共有している

「環境整備の徹底」「きれいな職場」などを方針として掲げながら、実態が伴っていない職場は多いものです。そうした職場では、単なる身の周りの掃除や整理整頓の活動という位置づけにしかなっていないことが往々にしてあります。そして、「気が付いたときにやったほうがよい活動」程度の認識にしかなっていないことが多いものです。

「やらないより、やったほうがよい活動」は、「やらなくてもよい活動」とほぼ同義になりやすいものです。その結果、その活動は業務の一環とは認識されず、「業務への対応を優先するため、忙しくてなかなかできない」ということになりがちです。

同社様の場合は、自社として可能な最高の品質の製品を届けて、お客様に喜んでいただくために必要な活動という、大きな目的を掲げています

さらには、同活動を通じてメンバー一人ひとりの人材力を高めることも目的のひとつとなっています

どんな職場、職種であっても、次のことは共通して必要となる要素だと言えます。

「組織や自分を取り巻く環境の状態や変化に気づく」
→「気づいたことに対して何をするべきかを考える」
→「考えたことを実行する」
→「実行したことによる効果を確認する」
→「確認した結果さらに改善が必要であれば行う」

よりよい職場環境のために何をすべきか、社員が自ら考え積極的に行動を起こす。このことを習慣化することで、品質やコスト、納期のさらなるレベル向上とお客様満足度120%を目指している(HPより)わけです。お客様への責任の観点からも、自身の人材育成の観点からも、明確に「自分事として取り組むべき活動」と認知されていることがうかがえます。

続きは、次回考えてみます。

<まとめ>
活動の目的を明確にする。

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