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お互いに淡々と職務を遂行する

3月6日のSmartHRメルマガで「Q:厳しくすると嫌われるし、パワハラも怖い……。どこまで厳しく接するべき?【人材マネジメントQ&A】」というタイトルの記事が紹介されていました。伊藤 羊一氏(Zホールディングス株式会社 Zアカデミア 学長、武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長)による記事で、人材育成の本質を指摘した内容になっています。

同記事の一部を抜粋してみます。

A:「厳しくする」が間違い。メンバーの話を聴き続けて、結果を残せるようにフォローしていきましょう

マネージャーがメンバーに対して厳しくしないと、みんながやってくれないと思ってしまっているのではないでしょうか? 強面で「やれ!」と指令を出すのが、マネージャーの仕事である、というのは間違いです。

厳しくある必要はないし、甘やかす必要もありません。お互いに淡々と職務を遂行する関係であるべきだと思います。理想としては、若手メンバーが「この仕事をすることは自分にとって重要なのだ」と思える環境にすること。メンバーが主体的に高いモチベーションで仕事に臨める状況をつくり出すことが大切です。

そのためには、マネージャーとして「チームでやろうとしていること」と、「果たしてほしい役割」をそれぞれのメンバーに伝えることが重要です。

ポイントは、メンバーからたくさん話を聴くこと。「何のためにこの会社に入社したのか」や「どういうキャリアを歩んでいきたいのか」、「今抱えている問題があるのか」など、たくさん話を聴きながら、モチベーションを高めてもらい、タスクを進めてもらう。メンバーの理想を叶えるために誘導していくのも方法の1つです。

そのうえで、期初に「今期の目標はこうで、目標達成に合わせて評価していきます。こうするとS評価、こうするとC評価になります」と、目標とあわせて評価の基準も明確に伝えます。1on1ミーティングでもよいでしょうし、日頃のコミュニケーションで「今パフォーマンスがいいよね」とか、「今のままだとよくないから、評価がCになってしまう」と、期の間伝え続ける。

「目標を達成するためにどうしていったらよいと思う?」と質問しながら、メンバーのやる気を出し続けることがポイントです。

なかには「やる気がない」というメンバーもいるでしょう。しかし、やる気がないと言いながら結果を出したのであれば評価すればよいですし、パフォーマンスがよくなかったなら、評価を下げることも大事だと思います。

そのためには、最初に「このように評価する」と伝えなければ、後出しじゃんけんみたいになり、関係性が悪くなるので、きちんと伝える。伝えたうえで評価して、給料を下げることも必要です。

やる気がないことに厳しく接するのではなくて、たくさん話してもらってコミットしてもらうことと、正当に評価して接していくことが重要です。

伝えるだけではなく、マネージャーとしてフォローするのも重要です。目標を達成するために何かサポートが必要か、どうしたらいいかを一緒に考える形でフォローしていく。「あなたが結果を出すための努力を惜しまない」という姿勢をメンバーに示すことで、厳しくしたり評価を下げたときも、「否定されているわけではない」とメンバーが理解してくれれば、やる気を見せてくれることも多いでしょう。

上記で一貫しているのは、「人格や関係構築と、業務の成果や評価を分ける」ことではないかと感じます。

組織の最終的な目的は成果(お客さまに対する付加価値)を生み出すことであって、関係構築ではありません。その成果を生み出すために、メンバーが必要な機能を発揮しているかを的確に評価する必要もあります。

厳しくすることが成果創出につながるのであれば「手段」として有効ですが、「目的」ではないということです。また、同記事からは、「手段」としての有効性も特にない、ということのようです。

このあたりは、個人差もあるかもしれません。例えば、厳しく接してもらうことでスイッチが入って成果創出の行動が増えるため、厳しく接してもらうことを自ら望むという人であれば、指導者が厳しく接するのも有効かもしれません。しかし、そのような人は限られているというのが、同記事の示唆なのだと思います。

「うちの会社はコミュニケーションが足らない。マネージャーとメンバーがもっと親しくなるべき」といった話を時々聞くことがありますが、同記事はこのこともピントがずれていると示唆しています。「厳しくある必要も甘やかす必要もない。お互いに淡々と職務を遂行する関係であるべき」に本質を見て取れます。当人同士が親しくしたいならすればよいわけですが、そうでなければ親しくなるのは必須ではないということでしょう。

成果創出を実現するためのマネージャー・メンバー間のコミュニケーションにおいて、同記事の中から重要な要素となりそうなことを、以下に書き出してみます。

・チームの目指しているビジョンや目標をメンバーと共有する
・それらと各メンバーの職業観やキャリアのビジョンとを一致させる
・果たしてほしいそれぞれの役割を各メンバーに伝える
・期末に期待される成果の状態、及びその通りあるいは期待以上・以下の場合の想定評価結果を期初に伝える
・PDCAを回しフォローする。都度現状を確認し、成果創出のために問題となっている要因があれば、それを解消するための方策を見出し実行してもらう

上記「うちの会社はコミュニケーションが足らない。マネージャーとメンバーがもっと親しくなるべき」の問題提起で、本質とすべきは両者の親密レベルを高めることではないのだと思います。

そうではなく、「うちの会社はコミュニケーションが足らない。マネージャーがチームのビジョンや目標を十分に伝えられていないし、メンバーの職業観もあまり把握していない。よって、そうした点を伝え合うための有機的なコミュニケーションが必要」などとすれば、本質に近づくのだと考えます。(その結果として親密レベルが高まるかもしれませんが)

これを、言うことに従ってもらいやすくなるように親密レベルを高める、やる気がなさそうだから厳しく接する、などとすると、的を外した解決の方向性に進んでしまいそうです。マネージャーとしてフォーカスすべき本質は、業務の成果と成果を生み出すための役割、的確な現状評価だというわけです。

<まとめ>
厳しくするのも甘やかすのも、指導の本質ではない。

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