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日本の労働時間を考える

株式会社トモノカイが、国内の留学生約650人を対象に行った、日本での就労についての意識調査の結果を見る機会がありました。留学生の7割が 「日本は労働時間が長く働きづらそう」と感じているということです。

同調査結果に関するプレスリリース(2023年2月2日)から一部抜粋してみます。

■調査結果① 留学生の7割 「日本は労働時間が長く働きづらそう」
「日本は労働時間が長く働きづらいイメージがあるか」の質問に対して、「ある」と答えたのは30.3%、「どちらかといえばある」と答えたのが42.8%で計73.1%が日本に対して労働時間が長く働きづらそういうイメージを持っている。

■調査結果② 8割は留学期間が終わったあと「日本に残りたい」 
留学期間が終わったあと日本に「絶対に残りたい」と答えたのは31%、「できれば残りたい」と答えたのは48.9%で計79.9%は日本に「残りたい」と考えている。また「残りたい」523人のうち「日本に残るのは難しそう」な留学生(12.4%)と、「日本に残らず母国に帰る/他の国に移ることが決まっている」留学生(11.6%)は計24%。

■調査結果③ 日本に残りたいが残れない理由 言葉の壁や手続きの煩雑さが上位に
日本に残りたいが「残るのは難しそう」「母国に帰る/他の国に移ることが決まっている」と答えた留学生127人にその理由を聞いた。「日本語ができないと職に就けない」(52%)、「英語が通じる日本人が少ない」(37.8%)と言葉の壁を挙げる人が多く、「就職活動で企業にエントリーする方法が複雑」(29.1%)や「国や自治体での事務手続きが複雑」(22%)と手続きの複雑さが理由と答えた人も多くいる。

留学期間終了後に「日本に残りたい」と考える人が全体の8割という数値は、日本人としてはとても喜ぶべき結果です。そのうえで、実際に日本に残るのが難しそうだと考えている人が相応にいるという結果は、日本及び本人にとって機会損失となっているであろうことが、改めて分かります。

先日、イノベーションをテーマに取り上げましたが、イノベーションには多様な人材との協業が必須です。留学生は、それぞれの文化や発想を土台に持ちながらも、日本に高い関心を持ち日本に関する知見を勉強してきた人たちです。私も外国出身者の人に会う機会がこれまでいろいろありましたが、日本人以上に日本のことを分かっている人もたくさんいます。この層を活用しない手はありません。

同結果からは、日本企業が外国人人材の活用に対してまだ発展途上であること、仮に先進的に取り組んでいる企業であっても当事者にその情報が十分に認知されるほど発信できているとは限らないと想定されます。行政による制度面での一層の整備と合わせて、引き続き取り組んでいく課題だと言えそうです。

上記のうち、労働時間についてここでは2つ考えてみたいと思います。ひとつは、労働時間の長さ自体が働きにくさのイメージにつながるのか、ということです。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構がまとめた、データブック国際労働比較2022によると、2019年(コロナ禍前)の1人当たり年間労働時間は次のようになっています。これを見ると、日本は欧州各国よりは依然として長い労働時間ですが、既に米国、カナダや豪州、韓国より働かない国(労働時間の絶対量で言うと)になっています。

日本 1,644
アメリカ 1,777
カナダ 1,690
イギリス 1,537
ドイツ 1,383
フランス 1,511
イタリア 1,715
オランダ 1,440
ベルギー 1,576
デンマーク 1,381
スウェーデン 1,452
フィンランド 1,539
ノルウェー 1,381
韓国 1,967
オーストラリア 1,722
ニュージーランド 1,783
メキシコ 2,139

かつては「世界一労働時間の長い国民」のように言われた時期もありましたが、今となっては昔話だということがよくわかります。正社員以外の多様な雇用形態の人が増えるなどで、平均労働時間を押し下げている可能性も想定できますが、それは他国も当てはまる話です。上記は一定の傾向を表していると思われます。

米国は人口増、日本は人口減、そのうえで1人当たりの労働生産性が米国より低く、さらには1人当たり労働時間も米国より低いのであれば、米国と日本の経済力の差がどんどん開いていくのは、極めて当然の結果です。

世界中から留学や移住を目指す人にとっての人気国は、米国やカナダです。このことからも、労働時間の長さ自体は、(個人差もあり一概には言えませんが)必ずしも働きづらさのイメージとイコールではないと言えるのではないでしょうか

労働時間の長さ自体ではなく、労働時間に対する裁量(自由度)が持ちにくいことのほうが、働きづらさのイメージの要因として大きいのではないかと想定します。

日本の特徴として、一律による休日の多さが挙げられます。日本は法定祝日が17日もあります。法定祝日以外に、多くの企業が慣例として休日にする(1月1日を除く)年末年始、お盆期間の休日などがあります。法定祝日を会社の休日にしなくてもよいわけですが、多くの企業は一律で会社の休日にしています。

一方で例えば、同データによるとドイツの法定祝日は9日だけです。そのうえで、上記の労働時間の違いがあります。このことから想定されることは2点あります。休日を除く1日当たりの労働時間が日本の場合は偏って多いこと(=労働日においての残業が多い)、もうひとつは休日を自分で選べない(一律で決められている)ということです。

諸外国の企業の場合は、各人が自己責任のもと、自分で選んだ時期に有給休暇を取りあうスタイルのところも多いことが知られています。こうした裁量が持ちづらく、残業しないといけない環境、休むべき日が決められていることが、働きづらさの要因ではないかと想定されます。

続きは、次回以降のコラムで取り上げてみます。

<まとめ>
日本の労働時間は、国際比較で既に多いとは言えない状態である。

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