賃上げを考える(2)
5月23日の日経新聞で、「賃上げ、4年ぶり高水準 22年本社調査 2.28%、好業績追い風」という記事が掲載されました。
同記事の一部を抜粋してみます。
先日の投稿「賃上げを考える」では、個人の月例給与が上がる主な要因として以下の4つを考えました。そして、4.について、以前では見られなかった物価上昇を反映した賃上げも見られるようになったことを取り上げました。
1.各人の将来の業績貢献に対する期待値の大きさが変わる
2.所属組織の業容・ビジネスモデル・収益性等が発展する
3.他社(主に同業の競合)で賃上げの動きがある
4.社会全体の物価が上がる
上記記事の動きは、1.は分かりませんが、2.~4.についてのすべてが反映された結果であると言えそうです。
近年の賃上げ率の推移は、厚労省による民間主要企業春季賃上げ集計で次の通りとなっています。「妥結額(定期昇給込みの賃上げ額)などを把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業343社」が集計対象のため、中小企業などは含まれていません。ですので、全企業の動きとは言えませんが、概要は表していると言えるでしょう。また、冒頭の記事の311社とは属性が近いと思われるため、冒頭記事と照らし合わせながらの賃上げ率の推移としては参照できそうです。
2021年1.86%(平均妥結額5,854円)
2020年2.00%
2019年2.18%
2018年2.26%
2017年2.11%
この間の物価の動きは、総務省による消費者物価指数(総合)の対前年比で次の通りとなっています。これらを比較すると、近年の賃上げ率は高くないながらも、消費者物価の上昇率を1%~2%程度上回っていたことがわかります。つまりは、実質的な所得額が、全体としてはわずかながらでもプラスだったと想定できるかもしれないわけです。
2021年-0.2
2020年0.0
2019年0.5
2018年1.0
2017年0.5
これに対して、2022年4月(月単位)の消費者物価指数(総合)は、前年同月比で2.5%上がっています。今後この流れが続くとなると、冒頭の2.28%賃上げしたとしても、物価の上昇分で打ち消されて実質的な所得額がマイナスということになります。
さらに、ステルス(隠れている)増税とも言われる、社会保険料の増額もあります。「健康保険」「厚生年金保険」「介護保険」「雇用保険」にかかる社会保険料が年々上がり続けているため、手取りとしての実践的な所得額はさらに目減りするということになります。
このように考えると、今年の賃上げ率はかなり頑張って近年では一番の上昇ながら、実質所得が明らかにマイナスになるであろう結果という点で、昨年までと種類の異なる環境にあると言うことができそうです。
そうは言うものの、ポジティブに捉えるならば、物価上昇分に近しい程度の賃金上昇はしている、そして上記記事の通り企業によってはさらに賃上げ余力はある、と見ることができるのかもしれません(あくまで、日本全体を平らにしてみた場合、ですが)。
続きは、次回以降考えてみます。
<まとめ>
今年の賃金上昇は物価上昇で打ち消されている一方、さらなる賃上げに取り組もうとしている企業もある。
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