お客さまの困りごとが「我が事」になっていく

先日、企業で新規事業の責任者を歴任されていた方からお話を聞く機会がありました。新規事業に対するアプローチによってメンバーの姿勢が変わっていくというお話が、たいへん参考になりました。

次のような内容でした。

・社外の協業先やお客さま、経営陣などから新規事業のオーダーが来る。企画し組織的に取り組んでいこうとするわけだが、関わることになるメンバーのほぼすべては、当初はそれら新規事業への愛着などまったくない。

・そこで、新規事業に関連しそうなお客さまやお客さま予備軍300人に話を聞きに行く。300人が何に困っているのかを聞くことで、企画内容が研ぎ澄まされていくことに加えて、「(お客さまやお客さま予備軍である)この人、この会社を何とかしたい」と思えてくる。

・つまりは、次第にお客さまの困りごとが「我が事」になっていく。その新規事業が、自分のやりたいことになってくるということ。

・自分発ではなく他から与えられた新規事業のテーマに対して、はじめから内発的動機づけ(興味、関心、好奇心など、自分の内面の感情が起点となるもの)を持てるわけではない。当初は、外発的動機づけ(報酬、評価、罰則、強制など、外部からの働きかけが行動の起点となるもの)から始まって当然だろう。

・「我が事」のように思えることを通して、外発的動機づけから内発的動機づけに変わっていく。「我が事」と思えるようになるには、当該テーマへの共感が必要で、共感につながる経験が必要。300人に会うという経験がそれに当たる。

先日、自律性をテーマに考えました。

物事に対して「自分でこうしたいと決めて、これに取り組んでいる」と、自律的に向き合えているほうが、よい成果を生みやすく、意欲の高い状態で取り組むことができるということです。逆に、やらされ感で何かをやっている時には、成果につながりにくくなります。

自分以外の他者と一緒に組織で仕事をしている以上、取り組むすべてのことが自分発で企画したものにはなり得ないでしょう。経営判断や組織の戦略に沿って、自分が考えたわけではない、与えられた施策に取り組むことになった、という流れは常に発生します。他から与えられたことに対して、いきなり自律的な姿勢など起こらなくて自然です。

それを与えた側が、単に「これに使命感を持って取り組め」「やりがいを見出せ」と指示するだけで、相手がその仕事について自律性をもって向き合えるようになるものではないということです。300人に話を聞きに行くという経験を通して初めて、それに関与するメンバーの中に自律性が芽生えてくるというわけです。

・最初は外発的動機づけであっても、きっかけによって内発的動機づけに変えていくことができる。

・そのきっかけとなる経験は何かを想定する。

・その経験を積むよう促す。

メンバー(特に部下の立場の人)と何かを一緒に取り組んだり、任せたりする際に、取り入れたい視点だと思います。

<まとめ>
「我が事」と共感できるぐらいの経験をつむ。

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