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物価高への対応を考える

物価が上がってきました。コロナ禍でのサプライチェーンの錯綜に伴う供給不安がとれない中で、地政学的なリスクも合わさってきた影響は、言うまでもなく大きいです。3月13日の日経新聞でも、1面で「ロシアの侵攻、物価高を増幅 主要商品4割が最高値」という記事が掲載されました。

同記事の一部を抜粋してみます。

~~ロシアのウクライナ侵攻が各国のインフレに拍車をかけそうだ。国際商品は主要品目の4割が過去最高値圏に入った。消費者物価上昇率もさらに高まり、米国は3月に40年ぶりに8%台に達するとの見方がある。市場の長期予想も過去最高に達した。米欧は金融緩和の修正を急ぐが、急ピッチの引き締めは回復基調の世界経済を冷やすリスクをはらむ。

国際商品市場でロシアの生産シェアが大きい品目が急騰している。軍事侵攻や経済制裁で供給網が遮断・混乱する恐れが強まっているためだ。ロシアの生産シェアが約2割の天然ガスで欧州の指標価格となるオランダTTFは7日、1メガワット時あたり初の300ユーロ台をつけた。侵攻前の2月23日の約4倍に急騰した。原油の北海ブレント先物の期近物は7日に一時1バレル139ドル台と2008年以来の高値をつけた。

小麦はロシアが世界最大の輸出国でウクライナと合わせて世界の3割を供給する。8日に一時1ブッシェル13.6ドルと最高値を更新した。総合的な値動きを示すリフィニティブ・コアコモディティーCRB指数は内訳の19品目の約4割が過去最高値圏にある。ロシア産が多いパラジウムやニッケルなどは侵攻後に最高値をつけた。

今後の焦点は消費者物価への波及だ。経済協力開発機構(OECD)加盟国平均のインフレ率は1月に前年同月比7.2%と31年ぶりの水準に達した。新型コロナウイルス危機からの経済の回復過程で高まる需要に供給が追いつかない状況だ。~~

例えば上記の1月インフレ率は、ウクライナ危機の影響が織り込まれていないはずです。1月以降の地政学的な動きの影響も加えると、今後さらに高いインフレ率が続く可能性があります。同記事では、米国債市場参加者の今後10年平均のインフレ予想を示す「ブレークイーブン・インフレ率」も、データを遡れる03年以降で最高となる2.94%となったと紹介しています。

このことから私たちが身の周りの事業活動で考えるべきことを、大きく3つ挙げてみます。ひとつは、自社の収益構造に与える影響の慎重な見積もりです。

先週お会いした経営者の方々からも、「自社商品に使う小麦の仕入れ価格が年末に比べて1.5倍になった」「欧州からの部品の海運費用。いつもは何十万円だが、桁がひとつ増えて見積もりが来た。しかし待っていられないので発注した」といったお話を聞きました。

インフレ率が前年同月比7.2%プラスといっても、それは全物価の平均値に過ぎません。地政学的な影響を大きく受ける品目の価格は平均値以上に上がっています。さすがに5割増しなどがずっと続いていくわけではないかもしれませんが、現状では収束の兆しが見えていませんので、相当な期間長引く可能性もあります。

また、一見自社の事業活動とはあまり関連がなさそうな品目に関しても、幅広く影響がありそうです。例えば上記記事によると、ロシア産のシェアが高くない亜鉛が8日、1トン4896ドルと06年以来の過去最高値を更新したとあります。その理由を、製造時の消費電力が大きくエネルギー高の影響を受けやすいからとしています。

自社の扱うすべての品目で正確な価格の動きを、今後の時間軸に沿って想定するのは困難です。そのうえで、自社の事業活動においての原材料費や販管費を主な品目ごとに改めて整理し、何がどれぐらい上がりそうかを厳しめに(悲観的に)今は評価しておくことが重要課題となります。今の時期は、来期の経営計画の最終化に取り組んでいる会社も多いと思います。いつも以上に経費に対する評価はやっておくべきでしょう。

2つめは、収益構造の変化の予測を踏まえた自社商品・サービスのあり方の見直しです。価格改定を検討するのは避けて通れません。大手企業に部品を納めている、ある部品メーカーの中小企業経営者様は、先日次のように話していました。ある意味、今の時期は、これまで控えてきた要求を正当に打診できる時期ではないかと、言えるのがうかがえます。

「1月以降に上がった費用の全部とは言わないが、半分を納品先に見てもらいたいと打診した。それで痛み分けでどうですかと。自社は昨年過去最高益も出せている状態なので、上がった費用分の折半ができれば、収益性を十分維持できるだろう。これまでは大手の納品先に強く出られなかったが、今回は積極的に強めに打診した。」

そして、今までと同じ商品・サービスで価格を見直すにとどまらず、この機会に商品・サービスの中身も見直すことも検討する機会になるかもしれません。続きは、次回以降の投稿で考えてみます。

<まとめ>
物価高が自社の収益構造に与える影響を、品目ごとに慎重に見積もる。


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