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行動変容の難しさを理解する

先日、コーチングをテーマにした勉強会に参加する機会がありました。この日は、参考図書を基にしながら、相手の行動変容をどのように支援していけるのかが話題になりました。相手の中で発生する、行動変容の難しさ、痛み、場合によってはなぜ変わらなければならないのかという怒り、について認識を深めるための意見交換がなされました。

意見交換の中から4点のことを感じました。ひとつは、相手の中で起こっている変化を本人に気づいてもらうことの大切さです。

コーチングでは一般的に、コーチングセッションの終了時、次回セッションまでに具体的に何に取り組むのかの行動目標を決めて、次回セッションで取り組んだ結果を聴くことをします。その際、「取り組み切れなかった」「取り組んだが、効果を実感できていない」といった否定的な反応もあるものです。つまりは、相手の中で変化を感じることができていないということです。

そうはいっても、相手の中で起こっている何らかの変化があるものです。仮に、行動計画を決めたものの取りくめなかったという結果だったとしても、「決めたことに向き合った」という変化があるというわけです。

その際例えば、「そのことから、どんな気づきがありましたか?」ときいてみます。その取り組みが道半ばだったとしても、道半ばで止まっていることに対して自身がどう評価するのかを尋ねるわけです。そうすると、脳が無理やりにでも何かを出力しようとします

「時間が大切だと思った」「自分の考えを書き出そうとするとたいへんだった」など、ごくありきたりのことでもいいので出力させることで、相手の中で何かが起こったということを認識してもらうわけです。

以前のこと、例えば3か月前にやっていたことなどを掘り出して、そこから変化して(進んで)いるということを実感する時間も有効です。少しずつの変化は本人が実感できていないことも多いので、その気づきをファシリテートするということです。

私たちは、基本的に変化を嫌います。これまでに知っていることと違うこと、異物が入ってくるとそれを排除しようとする性質があります。小さなステップを踏んで小さな変化を起こしていけることに気づく、それを承認されることは、異物を受け止めて共生していける力が自分にもあることを肯定する土台となっていきます。コーチングは、そうした意義もあるというわけです。

2つ目は、変わる目的を明確にすることです。

なんのために変化を起こしたいのか、どういう姿を求めていきたいのかが明確でないと、自分が変化するという嫌いな出来事に、わざわざ向かっていこうとできないものです。

(何らかの理由で強制的にコーチングを受けさせられている人の場合はわかりませんが)コーチングを受けることを望む、あるいは納得している人は、何らか変化を起こしたいという理由=変わりたい目的が存在しているはずです。そのことを改めて明確にしてもらうことで、コーチングがより活きた場になります。

3つ目は、拒絶反応の大きさは、変わろうとすることのエネルギーの大きさかもしれないということです。

変化を嫌う私たちは、変化を拒絶し抵抗しようとします。その抵抗の反応が大きいほど、本当は変わらなければならないと強く認識していることの裏返しなのかもしれません。

見方を変えると、変化への抵抗の反応が大きいほど、行動変容によって手に入れることのできる果実が大きい可能性があるのかもしれない、などと思ってしまいます。もしそうなら、抵抗の反応が大きい=チャンスととらえることもできそうです。

4つ目は、コーチ自身も変わる努力が必要ということです。

人間が不得意な「変わること」を相手に促す以上、促す側のコーチ自身が行動変容に対する苦しさ、痛みを体感しているかが、相手に影響を及ぼせるかの大きなポイントになるのではないかという話が出ました。

具体的な取り組みとしては、コーチが自身のコーチをつけることです。自身がコーチングを受け、行動変容が何たるかを体験し、「やったほうがよいと、わかっちゃいるけどなかなかできない」という難しさに向き合うことが、自身がコーチングをする相手の理解にもつながっていくことになります。

同様に例えば、上司が1on1ミーティングを部下に対して行うことに取り組んでいる企業も多いと思われます。「決めたことに取り組んでこない」「問題の核心をなかなか話そうとしない」などの事象があると聞くことがありますが、その上司自身は自分より上位者の立場に当たる人材や社外の人材にコーチングを受けていないという場合も多いのではないでしょうか。

自身が「決めたことに取り組む」「問題の核心を話す」ことの難しさを日常的に体験すると、部下に対する1on1ミーティングのすすめ方も変わってくると思います。

<まとめ>
行動変容を促す側も、行動変容していることが大切。

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