公務員の週休3日制を考える
4月14日の日経新聞で「国家公務員、週休3日拡大 事情問わず 人事院勧告へ、働き方多様に 「霞が関離れ」歯止め」というタイトルの記事が掲載されました。国家公務員は、以前と比べて就業希望者が減り、就業後の離職者も増え、かつてとは異なる状況となってきています。その状況打開を狙う対応のようです。
同記事の一部を抜粋してみます。
社会全体で多様な働き方を受け入れ、労働力人口を有効活用していくべき環境に置かれています。民間企業同様に働き方の選択肢を増やすルール改正は、基本的に環境変化にも合った望ましい方向だと考えます。
そのうえで、週休3日制の推進が実際にどれぐらい効果をあげるのかは、未知の部分もありそうです。理由は、このことが、働き手の収入増加には直結しないであろうためです。
資格の大原のサイトで紹介されている、令和2年国家公務員給与等実態調査を参照した試算によると、国家公務員の平均基本給は337,788円となっています。平均給与月額は、俸給に各種手当(住居手当・地域手当・扶養手当・通勤手当・単身赴任手当・管理職特別勤務手当・広域異動手当など)を加えたもので、その総額は416,203円です。
平均給与月額12ヵ月分に、ボーナス(令和3年度の一般職員のボーナス実績:俸給の4.45月分)を加えたものが国家公務員の年収となります。単純計算では、次の通りです。
416,203円×12+337,788円×4.45月≒649.7万円
もちろん、これは単純計算による平均値であり、実際は役職や勤務年数によって幅があります。また、給与全体をみるには、退職金なども考慮する必要があります。いずれにしても現在の民間企業平均と比べれば、額面としては高めの水準と言えます。かつ、安定的であるという特徴があるため、そうした待遇を求める働き手にとっては魅力的になり得るものではないかと想像します。
そのうえで、民間企業含めた現在の賃金動向に見られる、4つの大きな特徴を踏まえてみます。
・日本の賃金水準は他国と比べ相対的に下がっていて、現状でそもそも競争力として不十分である
・昨年から民間企業で賃上げ機運が高まっている
・民間企業の中で、1割を超えるような賃上げを行うところと、賃上げを行わない(行えない)ところとで、格差が広がっている
・副業など自社以外の収入源により、労働者の裁量次第でトータルで収入を高めることを許容する動きがある
そして、国家公務員試験の合格は難関です。同サイトを参照すると、初任給について次のように例示されています。この金額は、賃上げを積極的に行い好待遇を実現している民間企業の初任給と比べると、見劣りするものです。売り手市場(学生含む求職者が優位)が続き、人口動態からもその状況が継続しそうな環境下で、好待遇を勝ち取ろうとする求職者は、民間企業のほうに流れやすいと言えそうです。
国家総合職・大卒程度 2級1号俸 232,840円
国家一般職・大卒程度 1級25号俸 225,840円
加えて、公務員は副業が制限されているという特徴があります(どこまでの副業ならOKなのか、詳しい法的なルールは存じませんが)。休日が増えても、その休日を収入を増やすための活動に自由に使うことができません。民間企業でも週休3日制が広まらない要因のひとつとして、休日が増えることで労働時間が減り、収入が減ることを望んでいない労働者が多くいることが挙げられます。
賃金の決定根拠が成果物に基づく雇用契約ベースでなく、労働時間に比例する考え方の企業であれば、休日が増えれば賃金が減るのは当然のことです。増えた休日で別の仕事に取り組んだり、キャリアアップ・キャリアチェンジのための活動を行ったりすることを選ぶ人が、週休3日制を歓迎するとも言えます。公務員には、この観点が限られます。この点がクリアされない限り、もしかしたら利用者は限定的になるかもしれないと考えます。
職種の特徴や立場の問題もありますので、簡単な問題ではないと思います。そのうえで、状況打開のためには、公務員以外の活動をより広く認めることも視野に入れる、民間企業との人材の行き来も視野に入れる、冒頭の記事のように国会対応など休日以前に仕事のやり方の見直しを行うなどの方策との組み合わせが有効なのではないかと考えます。
いろいろな方策との組み合わせが求められるということは、このテーマに限らず身の周りの組織や仕事に通じる視点だと思います。
<まとめ>
休日拡大は、他の方法も組み合わせて実施する。
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