テレワークかオフィス勤務か
8月14日の日経新聞で、フィナンシャルタイムズの記事「在宅勤務、米国から再び拡大へ」が紹介されていました。テレワークは、コロナ禍で一気に広がった後に揺り戻して、オフィス勤務とテレワークのハイブリッドの中で各社が落ち着きどころを探していると言われていますが、そのことについて示唆する内容になっています。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事から3点考えてみます。ひとつは、完全なリモートワークは完全出社に比べて生産性が下がりそうだと示唆しているということです。
同記事では、完全リモートワークは生産性を10%低下させる可能性があるものの、オフィス縮小など(つまりは経費節減)でカバーできるとしていて、仕事で生み出す付加価値の量は減る可能性を暗示しています。アマゾンやディズニーなどは、そのことを経営として仮説立てているのかもしれません。
もちろん、リモートワークによって生産性が上がるかどうかは、仕事内容ややり方次第ですので、一概には言えません。そのうえで、個人の仕事のアウトプットを最終的には組織として束ね、顧客に届けるという組織活動全体で考えた時には、完全リモートワークという形態はメンバー間の協業や調整を難しくし、ロスを発生させるということなのかもしれません。
2つ目は、意外な要因(言語)が、リモートワークのやりやすさに影響を与えているということです。
日本でリモートワークのやりづらさを訴える人が、居住環境が不向きであることをやりづらさの理由に挙げることは以前から言われています。その他にも、各国の経営管理に大きな影響を与える米国の方法論が英語圏以外の言語圏には遅れて伝わってくるために、日本ではリモートワークのよりよい方法論が発展途上であることも、やりづらさの要因かもしれないというわけです。
パーパス経営、SDGs、DX、、、私たちを取り巻く経営課題としてクローズアップされる言葉やテーマは、米国に比べて周回遅れで日本へ入ってくるイメージがあります。しかし、そこには言語の壁が存在しているための必然的な結果でもあり、日本以外の非英語圏の国でも同じことが当てはまるということに、改めて気づかされます。
この点については、英語で直接情報を入手するなんらかの方法をつくる必要性を示唆しているようにも感じます。
3つ目は、完全オフィス型、完全リモート型、ハイブリッド型の場合はその割合について、ひとつの決まった答えはなさそうだということです。
仮に完全リモート型では生み出す付加価値の総量が下がるとしても、完全オフィス勤務型に戻すのが得策とは限りません。リモートワークという形態でも自身の仕事で対応可能な要素があると気づいた従業員が、完全に職場回帰を求められた場合、記事冒頭のように別のことで逆効果も想定されるためです。
今後ますます労総者数が不足していく社会環境下では、言うまでもなく多様な働き方を認め、介護や子育てなどの事情と仕事との両立を会社全体、あるいは社会全体で支援していく必要があります。
パーソル総合研究所の発表によると、2023年7月時点での正社員のテレワーク実施率は22.2%だということです。これは、コロナ禍の緊急事態宣言1回目が出た20年4月以降で最も低い値です。特に5類移行後にテレワークの減少傾向が鮮明になったということで、冒頭の米国事例の傾向は日本でも当てはまりそうです。
勤務形態に関してよりよい落としどころを見出していくことが、今後も引き続き必要となりそうです。
<まとめ>
リモートワークをテーマにした勤務形態のあり方は、各国の企業で試行錯誤中である。
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