男性の育休取得は広まるか
8月12日の日経新聞で、「進まぬ男性の育休取得 促進阻む壁の全容解明急げ」というタイトルの記事が掲載されました。男性の育休取得促進は社会的課題とされてきましたが、そのことについて考察している内容です。
同記事の一部を抜粋してみます。
同記事に関連して2点考えました。ひとつは、課題解決のためには、直接の当事者(本テーマであれば子育て中、あるいは子育て予定のある男性)以外の人や周囲も意識と行動の変容が必要ということです。
例えば、男性の育休取得の阻害要因のひとつである「男性稼ぎ手モデル」は、当事者である男性に加えて、女性や妻も同様にそのモデルに囚われていることに起因しています。
「もっと夫にも家事育児に参加してほしい」「家事育児は夫婦等分での分担が望ましい」と考えている妻が、「労働による収入は夫婦等分で十分/等分が望ましい」などと考えているかというと、必ずしもそうではありません。
マイナビウーマンのサイトを参照すると、結婚相手に求める条件として、男性が女性に求めることの中に経済力や年収はあまり挙がってきません。一方で、女性が男性に求めることの中で、「経済力があること」が5位に挙がっていて、52.5%の女性が重要な条件だとしています。「年収〇〇万円以上を稼ぐ男性が良い」などという条件を挙げるのも、女性ならではです。
世の中は「男性稼ぎ手モデル」になっているのだから妻は夫に稼ぎを期待せざるをえないのか、妻が夫に稼ぎを期待するから「男性稼ぎ手モデル」の世の中が変わらないのか。どっちが先かというより、卵と鶏のような関係であって、双方に対して同時に手を打つ必要があるのだと思います。少なくとも、男性側に対してだけ「がんばって制度を利用せよ」と働きかけるだけで解決する課題ではなさそうです。
2つ目は、テーマの打ち出し方によって、意図しない印象操作になったり論点がすり替わったりしてしまう可能性です。
私も「イクメン」という言葉には、以前から個人的になんとなく違和感がありました。ですが、その違和感の正体が何なのか、よくわかりませんでした。しかし、同記事によってその正体が垣間見えた次第です。
それは、「イクメン」論が「育児の経験が、今後の仕事や人生に活きる」といった、別の目的で語られることがあるということです。
育児は本来、自立していない子どもに必要な機能を提供するという営みのはずです。親としてその営みを実行するわけです。「別のことで役に立つからやる」ものではありません。あくまでも子育てはそれ自体が社会のためであり、その社会のための行動を本人や本人の周囲の人、本人の属する組織がどう捉えるべきかの観点で考えない限り、課題解決には向かわないと捉えるべきなのだと思います。
なお、自立していない子どもに必要な機能を提供するのは、必ずしも親だけで行う必要はなく、別の方法でもよいと言えます。今でも、保育所などが子育ての機能で親の代行をしています。世帯構造も変わり少子化が進む環境下のこれからは、この代行の範囲を広げ、社会全体で子育てするという構造をさらに進めるべきなのかもしれません。
<まとめ>
ある課題に対する直接の当事者の責任は大きいが、間接的な当事者の責任も大きい。
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