「上司は部下に片思い」でよい
上司は部下に片思いする存在でよい。ある企業様で1on1ミーティングについて話題になった経営会議で、経営者様から聞いた言葉です。部下とのかかわり方について、本質の一端を言い当てている言葉ではないかと感じました。
この言葉が出てきた背景について整理してみます。同社様での1on1ミーティングの位置づけ・運用は、次のような概要です。
・今年度のはじめから1on1ミーティングを導入し、社をあげての推進を意欲的に進めている。人事評価面談や目標管理面談とは区分し、メンバー一人ひとりの成長支援を行う場というのを、1on1ミーティングの目的としている。
・人事評価結果のフィードバックや、目標管理に関連する目標設定、設定した目標の進捗確認なども成長支援にはつながるが、それらの直接的な目的は業務の推進や評価制度の適切な運用である。1on1ミーティングは、成長支援を全面的な目的に掲げる場と定義している。
・1on1ミーティングでは、成長支援につながるのであれば、何を話題にしてもいい。メンバーが上司と話したい話を自由にする。業務外のことを話したければ業務外のこと、(人事評価や目標管理と切り分けているが)評価や業務目標についてこの場でも話したいとメンバーが言うなら、それらを話題にするのも自由。
・進め方も自由。時間も自由で、1回あたり30分が目安だが、それ以上でも、10分で終わりたい回があれば10分で終わってもよい。
これに対し、メンバーからは有意義だという反応が多くある一方で、次のような反応も出ている(上司に直接言ってこないが、サーベイの自由意見欄などで見てとれる)。
・何でも話してよいと言われても、上司と話したいことが特にないため、この場を居心地悪く感じる。
・話題にしたくないことについて質問が来た時に、断りづらさもある。
上記のような反応も聞いていることで、管理職側からは「何をどこまで話題にしてよいのかつかみかねており、難しい」という声が会議であがりました。冒頭の言葉は、そうした声に対して同経営者様が言ったことです。メンバーには次のように伝えるといいのではないか、自分はそのようにしている、ということです。
「言いたくないことまで質問するかもしれない。話題にしたいことかしたくないことかは、最初のうちは分からないため、聞かれたくないことも聞いてしまうかもしれない。その時は、言いたくないと言ってもらえれば、そのことには次から触れないようにする。そのうえで、あなたの成長支援につながることなら何でも聞きたいと思っているから、話したくなったら言ってきて。こちらからは催促しないけど、片思いでずっと待っている」
なんともよい言葉だなと、個人的には思いました。
1on1ミーティングなるものの定義は各社各様ですが、このミーティングなるものの大きな前提が、「上司のための時間ではなくて、部下のための時間」ということは各社共通しているのではないかと思います。
上司が話したいことを話すのではなく、部下が話したいことを聴く
話したくないことを無理には引き出さない
話したことは否定せずに受けとめつつ、それに対して何を返したり何のアクションをとったりするのがよいかを真剣に考える
話すことを拒否された話題も、いつか再び出てくれば無条件に歓迎する
こうしたエッセンスを、「両思いではなく、片思いでよい」と表現されたわけです。
部下マネジメントでは、「こっちが親身になって指導しているのに、なんでこれが理解できないんだ」などの上司の葛藤が常に存在していると思います。そうした指揮命令の要素は必要ですが、1on1ミーティングなるものはそうした場や機能とは切り分けてわざわざ時間をとろうという趣旨のはずだと思います。
いかなる場面でも同様というわけではありませんが、1on1ミーティングなるものについては、上司は部下に対して、同経営者様の「片思いでよい」という視点をヒントに臨むとよいのかもしれません。
<まとめ>
1on1ミーティングは部下のための時間
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