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SAMSONはコロナで助かった?

<この猫ちゃんの名前はサムソンと言うらしい>

 どの報道もこの話をしないので、私の記憶違いかもしれないのだが、最近よく報道されている米韓首脳会議で、韓国は米国内に多額の投資をすることは約束したらしい。その一つに、Samsonが米国に大きな工場を作るらしい。(投資そのものはSamsonだけではなく、他の韓国財閥も参加している)

 世界的半導体不足で、米国でも半導体を使う企業(自動車なども含まれるが)が生産が滞り気味で困っている。

 台湾への発注を増やそうとしても、日本を含めた各国が台湾に半導体を求めて集中してしまっているので、米国としては悩ましい状況だったようだ。そこで韓国からの400億ドルの投資を取り付けるに至った。この一部としてSamsonは米国に大規模な半導体工場を作ることになるらしい。

 実はSamsonは西安(中国)に100億ドルの半導体工場を建てている。そして今回170億ドルの半導体工場を建てることになったわけだ。

 米国としては、中国にすり寄っている韓国をどうにかしなければならない状況があり、(一応米国と韓国は同盟関係にある)米国の対中国対策として今回の韓国大統領の訪米に、何かしらの手を打つ必要があったのだろう。

 一方韓国側にも、米国との関係を改善する必要があったようだ。文政権が末期に入り、ワクチン不足から支持率が落ちていること、最後のレガシーとして、南北問題を解決したいという希望があることからも、そのどちらも鍵を握るのは米国だった。

 Samsonはずっと困っていたはず

 ところでSamsonだが、既に以前から米国の進出を図っていた。韓国は日本よりも人口が少ない国で、そもそも内国だけでは十分な売り上げが上がらない。韓国企業の多くは輸出で儲けている。当然Samsonも世界に半導体を売っているわけだが、韓国は、需要が少ないだけでなく、韓国内の様々な制約によって、世界企業として打って出るには手枷足枷があったようだ。

 記憶に新しいのは、日本が韓国に対して、半導体を作る上の必須の溶剤の輸出制限をしたことだ。この話で重要なのは、日本が輸出規制(韓国側が正当な手続きを行わないので、輸出を止めた)した溶剤は、一般的な半導体には関係ないそうで、開発途中にある一部の特殊な半導体にのみ必須な溶剤だったようだ。そしてこれを必要としたのはSamsonだった。だからこの話が出たとき、Samsonの実質的なトップである副社長が、即刻来日した。

 その後、Samsonは中国に工場を建てることになり、この溶剤も中国で調達すると言われていたが、品質面で日本には及ばないので、色々問題が残ったという話だった。ちなみに韓国政府が主張するように、韓国内でも自国開発を始めたが、日本の品質に及ぶまでには至っていない。

 Samsonにしてみれば、そもそも本来なら米国に進出して、そこを基盤にグローバル展開したかったようだ。しかし韓国政府はドル箱であるSamsonが米国に拠点を移すことを許さなかった。Samsonのもくろみとしては、単に工場を出すだけでなく、本拠地をアメリカに移してしまうことを狙っていたと言われている。だが韓国政府はそれを許さず、Samsonの副社長を逮捕し、懲役刑をちらつかせた。Samsonの副社長は、前大統領との間に贈賄を行って既に取り調べを受けていたが、そのほかにも色々叩けば埃が出るらしい。    

 念のため言い添えると、韓国財閥のトップは、たいてい何かしらの前科があると言われる。ある方が普通という話で、どうも日本人には理解しづらいが、それが常識らしい。そこでこの副社長が前科を持っていること自体はそれほど問題ではないようだ。

 しかし、長期服役ととなると、そうもいかない。韓国財閥内で、「箔がつく」といわれる前科とは、比較的軽微な罪のことだから、(ナッツを自社の航空機のパーサーに投げつけて捕まったとか、大統領に賄賂を送ったとか言うたぐい)そもそもは在宅起訴で、執行猶予が相場だった。

 だから、長期服役の罪を意味するわけではない。贈賄でも、罰金刑だったり、執行猶予がつけば服役はしない。しかし韓国政府がちらつかせたのは長期服役を伴う実刑だった。

 実はSamsonは、現副社長の父親が実権を握っていた時代も同じ目に遭っている。韓国では、出る杭は討たれる的に、政府の思惑に沿わないような経営をした場合、政府からいちゃもんをつけられ、強引に社長が罪に問われることがあるようだ。こうしたとき、稼ぎのよい子会社を1つ、上納するような行為をして助かるという習慣があるらしい。Samsonも当時そうして社長の罪を免れたようだ。

 いわば政府が強制的に上前をはねてしまうわけで、会社は国営化され、収入は政府に入るようになる。

 今回も、Samsonの副社長は同じようなことを迫られたらしい。

 米国進出は出来ず、代わりに中国に進出する。これは韓国の政府の政策に合致したことだった。しかし中国での投資は、儲ける可能性もあるのだが、自由な商売という意味ではかなり足かせがある。日本の企業でも中国に進出したあと、利益を上げても、撤退の時には全ての利益と権利をはき出さなければ日本に戻ることは出来ず、結局進出したときから撤退までに得た利益はなくなってしまうと言うケースがある。そもそも中国に進出するときには、多くの場合中国企業との合弁が求められ、結局利益は中国側に吸い上げられる構図があって、それに加えて、技術などを盗まれてしまうという話もよく聞く。

 Samsonとしては、自由に稼ぐには米国進出が望ましく、さらに拠点を韓国から米国に移す方が発展が見込めたようだが、ここ数年中国にすり寄っていた韓国政府としては、それは全く認められなかった。そもそもドル箱の会社が自国から出て行ってしまうことを喜ぶ政府もないだろう。だがそのためにSamsonが得になるように交渉して引きとどめるならともかく、韓国政府のやり方は、強引だったようだ。(それが韓国政府のやり方かもしれない) 

 だがここに来てパンデミックである。

 結果として、Samsonは米国への投資に至った。単に工場を作るだけでも、現在の半導体不足においてはメリットがあるだろう。韓国国内にしても半導体は不足しているはずだが、(だから国内に投資して、半導体の生産をあげ、ついでに雇用を増やすと言うことはしないのかなと思うけど)ワクチンがほしいとか、安全保障としての問題とか、色々韓国政府には思惑があったのだろうし、トランプ時代に中国に傾いた韓国を引き戻すために、米国も画策したのだろう。

 いずれにしてもSamsonは米国に投資した。大きな工場を作って半導体を作る。Samsonの本来の目的がどのくらい実現しているのかわからないが、Samsonにとっては渡りに船だったのではないか。

 このコロナのおかげで、Samsonにはいい風が吹いたのかもしれない。

 一方、今回の米国との取引が、韓国にとってどう転ぶかは、よくわからないが。


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