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2021年9月の記事一覧

小説:ファイアズ 【2000字ジャスト】

踊り場の大きな鏡には、一か所だけ歪んでいる部分があった。 誰かが、ガラスは液体だと言って…

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小説:ケサランパサラン 【2000字ジャスト】

僕はそれをケサランパサランだと言い張った。 海苔の佃煮の瓶に入れたそれを、僕は大切に机の…

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小説:ハルノシュラ【2000字ジャスト】

「いやーモトサなんてするもんじゃないね」 そう言って彼女は、手に持ったペットボトルで丸め…

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小説:イエスタディ【2000字ジャスト】

僕が生まれた年に生産されたそのバイクを、僕は二十歳の誕生日に手に入れた。 結婚することに…

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小説:遠野さん 【2000字ジャスト】

祖母の部屋から爆音でEDMが聴こえてきた。 それはまぁどうでもいい。 学校を辞めてから二か月…

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小説:ツヅクオンガク 【2000字ジャスト】

カラカラカラと自転車のホイールが鳴く。 また今日も嫌なことがあった。 あの人にラインしそう…

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小説:フェスティーヴォ 【2000字ジャスト】

冷凍庫を開けると、それはあった。 僕はそれを手に取り、冷凍庫を閉めた。 こんなものがあるなんて、祖父もまだまだ元気だな、と僕は思った。 こんなタイミングで夏休みを与えられたって困る。 なに休みだよこれ。 とは言え、然るべきタイミングで夏休みを与えられてもそれはそれで困る。 あとでさんざん恩着せがましく言われるのだ。 ちゃんと夏に夏休みのシフト組んであげたでしょ?と。 そして正月に言われるのだ。 夏休みしっかり休ませてあげたんだから、年末年始出られるよね?と。 かと言って夏も

小説:神様はクレームを聞かない 【2000字ジャスト】

「昔さぁ」と私は言った。 「なんかの記念?なんだろあれ。わかんないけど、SLが走ったことが…

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小説:ナイトホークス 【2000字ジャスト】

投げた空き缶は花壇のレンガに当たり、必要以上に大きな音が響いた。 昼間ならこんな大きな音…

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小説:ダンスレター 【2000字ジャスト】

いつもと違うエナジードリンクを買ったら苦手な味だったので海に行くことにした。 このまま学…

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小説:衝動 【2000字ジャスト】

あいつは時々女ものの香水の匂いがする。 そのたびに、私は朝からムカつくことになる。 「なん…

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小説:五月雨をあつめて 【2000字ジャスト】

私は船を作る。 出来るだけ早く、出来るだけ丈夫な船を。 グラウンドを走り回る犬を眺めなが…

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小説:宇宙おじさん 【2000字ジャスト】

「そこまで言う?」と母が言ったので、私は犬の散歩に行くことにした。 トラブルが起きる直前…

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小説:ラニアケア・チルドレン 【2000字ジャスト】

「猫人間コンテストしよ」と鈴木は言った。 僕は今年何十回目かわからない「どういうこと?」という返事をした。 鈴木の言うことが一発でわかったことのほうが少ない。 「あの、あれの猫版」 「そこまではぎりぎりわかる。競技内容がわかんない」 「それは今から考えよ」 「考えてから提案してほしかった」と僕は言った。 僕と鈴木が廊下で丸くなって寝ていると、先生が通りかかった。 「いや、事件じゃん」と先生は言った。 「先生、どっち?」と鈴木が言った。 「犯人が?」 「どっちが猫?」 「先生