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アメリカの無人島を目指して犬とカヤック旅に出たら地獄だった話


カヤックショップの前で途方にくれる朝

ノープランで始めた3000kmのロードトリップで
唯一予約していたのが今日のレンタルカヤックだ。

予約時間に行くと店は閉まっていて店内には誰もいない。


”このテキトーな感じ、、、アメリカだなー”

なんて思いながら
愛犬エースと店の前をぶらぶらしながら待つこと30分。

オレンジ色の派手なバンが猛スピードでカーブを曲がり
こっちへ向かってくる。

手を振りながら近づいてくる店主らしき
オジちゃんの運転席からは軽快なロックが流れている。

私とエースの目の前にバンを停めると
ハットを被った190cm以上ある大男が降りてきて言った

オジ 「ごきげんよう!すまんな、待ったかい?」

私  「おはよう! 散歩してたから大丈夫だよ」

オジ 「オーストラリアンシェパードか ワシも昔飼っていたよ
    賢くて、最高だろう!」

ガシガシ頭を撫でられて嬉しそうに短いしっぽをプリプリ振るエース。

オジちゃんは犬を4匹かっているそうで
エースを見て喜んでいた。

昔、奥さんが不妊症で子供は産めないだろうと
医者から言われたのがきっかけで犬を飼い始めたらしい。

その後、
子宝に恵まれて今では3人の子供と4匹の犬がいる
ビックファミリーで大変だよー!
ワッハッハ

と嬉しそうに話すこのオジちゃんがカヤックショップの店主だった。

開店時間に遅れたことを謝るでもなく
レンタルカヤックと保険手続きなどをさっさと済ませて
私を港へ送り出してくれた。



Lake Powell(レイクパウエル)という
Arizona州とUtah州をまたぐ大きな湖が今日の
カヤックスポットだ。


どこまでも続く巨大湖Lake powell


港に着くと若い兄ちゃんが私のカヤックを準備して待っていてくれた。


カヤック初心者だと言う私に
簡単に乗り方の説明と
おすすめの見どころポイントを教えて

「じゃ、夕方5時までに戻ってきてね!」

と言って去っていった。



愛犬エースはSUP経験はあるけど
カヤックは初めてなのでビビって
なかなか乗り込んでくれず


苦戦しながら、いざ出航!!


目の前に広がる湖と、
その向こうに立ちはだかる岩に向かって漕ぎ出すと
冒険映画の主人公になった気分で心が躍った。



開始早々さっそく落ちてずぶ濡れになったエース


出発したのが午前10時で
夕方5時までに港に戻れば良いから時間はいっぱいあるし

ゆっくり絶景を楽しみながら
店の兄ちゃんが教えてくれた無人島を目指すことにした。


Ice cream canyon(アイスクリームキャニオン)という
可愛い名前のついた無人島ならカヤックを砂浜に乗り上げて
島に上陸できるらしい。


1時間ほど景色を堪能したので
早速その島へ向かってみようと思い
水上で地図アプリを開いてみる。


ice cream canyon
ice cream………


めちゃくちゃ遠いがなっ!!!!


想像していた5倍の距離に絶望を覚えたが、
この湖でカヤックをできるのは今日しかない!


と自分を奮い立たせ
2時間かけて無人島を目指す。


濡れたせいか絶景を前にテンション低めの愛犬エース

こんなことになるなら
カヤックを漕ぐコツをちゃんと聞いておけば良かった、、、涙

すでに肩も腕もパンパンの状態で
無心で漕ぎ続けなんとかice cream canyonに到着した。


ice creamという可愛い名前とは全然違う
ヘドロに覆われた島。


これのどこがアイスクリームやねん!

島はヘドロのせいか少し臭くて、
”頑張って漕いだ2時間を返してくれぇ!”と本気で思った。

私の気持ちとは裏腹に
カヤックから降りれたのが嬉しいエースは
島内を笑顔で走り回っている。


予想以上に体力を消耗していたので
さっそく持参したカップラーメンを食べて腹ごしらえをしよう。
今日の朝キャンプしていた荒野でお湯を沸かして水筒に入れてきたのだ。


あ、ハシ持ってくるの忘れた。


木の枝でも落ちていたら箸代わりに使いたかったが
何も代用できるものは探せなかった。


エースのために持ってきた犬用ジャーキーがある!

っと気づいてフォークがわりに使ってみるが
カップラーメンの味を全てかき消すほどの強烈な臭さで


とてもじゃないけどジャーキーを使って食べることはできなかった。



結局飲んだ無人島カップラーメン



詰めが甘い自分にがっかりしながら
帰路のことを考えると頭が痛くなった。


まだ1時30だったが、
嫌なことはさっさと終わらせようと思い
カヤックに乗り込み港を目指す。


無人島滞在時間: 15分。



さっきまで曇っていた空が晴れたことで
肌に突き刺さる太陽の光が追加され
地獄のカヤック帰路が
より過酷になってしまった。



暑さよけに濡らした布をかぶるエース


その上
朝は無かった風が出てきたせいで
向かい風の中2人乗りカヤックを漕ぐ羽目になった。

漕ぐ手を少しでも休めると
逆方向に流されてタイムロス&体力ロスしてまうので
とにかく漕ぎ続けるしかない。


途中本当に辛すぎて、
”辛い時に泣ける曲プレイリスト”
をスピーカーで流しながら大声で歌う。


誰もいない広い湖の上で
泣きながら熱唱する私は

”これが人生最後のカヤックにしよう”

と誓うのだった。



ヘドロに侵入されたカヤック



向かい風と波もあって
港に戻るまで3時間以上かかり
戻った頃には返却時間ギリギリの5時になっていた。


延長料金から免れ、
ヘトヘトで人に気を遣う気力も無くなった私は

クーラーを効かせた車の中で
気持ちよさそうに昼寝するカヤック屋の兄ちゃんを叩き起こし

「カヤック、元の場所に置いたからね! バイバイ!」


と言い捨て、
港の日陰に倒れ込んだ。



マラソンランナーってこんな感じなのかな?
とか思いながら
道路に寝そべって全身の力が抜けていくのを感じる。


特に腕と背中の筋肉が痛かったし、
腕と足の日焼けもやばかった。
手は腱鞘炎になりかけてピクピクしていた。

通り過ぎるファミリーに変な目で見られても

”すんませんこんなところで寝てしまって”

と思うだけで体を動かせなかった。



10分ほど道路に倒れ込み、
水を飲んだら一気に回復したので車に戻る。


無性に肉が食べたくなったので
スーパーへ行きBBQができるキャンプ場を探すことにした。


乗ってただけなのに疲れて撃沈するエース


つづく



(読んでいただきありがとうございます
最新状況や写真はインスタグラムに
旅の動画はYoutubeにて公開しています。)





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