ファッション研究者がZOZO研究所に加わりたいと思った理由。

画像1

新年度が始まり、新元号が発表されましたね。私は4月1日から、ZOZO研究所に所属する運びとなりました。

「ファッションを数値化する」をミッションとして掲げる研究所に、文系のファッション研究者がジョインしてみようと思った理由を少し書き記したいと思います。

ファッション研究の現在

ファッション研究は方法論ではなく対象で括られた区分なので、非常に学際的な分野です。その分学問領域として位置付けることが難しく、中心である欧米圏でも模索が続けられています。その視座や体系、制度には地域差もあって、これは衣服やファッションという対象をめぐる価値観の歴史、"洋服"に限らずテキスタイルや身体装飾をめぐる研究や教育の歴史、文化研究の展開とその受容の仕方など様々な要因によるものだと思います。

特に日本では衣服やスタイルそのものをめぐる服飾史的な研究は蓄積がある一方で、社会学的な研究はそれほど多くはなく、教育・研究拠点や領域を超えたネットワークの構築も十分とは言えないと感じています。

ファッションは色々な産業に食い込み、日常にあるものであり特別でもあるもの。衣服であり、自己表現でもあり、時には自分そのもので、コミュニケーションでもあり、時代、都市空間、文化、そして社会そのものでもある。そんなファッションという切り口から研究をすることは単にファッションそのものを捉えることではなく、複雑な社会構造や文化を捉える良い枠組みとなると信じています。

新しいファッション研究の展開へ

今、ZOZO研究所がやろうとしてる数理科学的な視座を中心としたファッションへのアプローチ。それは私にとって、自分が触れてきた"ファッション研究"の"外側"からのアプローチでした。でも、領域外と無視できるものでは決してないと思うのです。

今日、流通や新たなテクノロジーによって、近代的な"ファッション"という概念、制度が急速に、そして劇的に変わり続けている。私自身も歴史的な研究をしてきたし、必ずしも自分が"現在"を扱う必要はないと思っています。でも、そこにインタラクションがあることが大事だと思うのです。お互いにフィードバックがあり、より豊かな成果を得られる。

こういう研究所が日本にあり、まだファッションの専門家がいない。それなら自分がそこに加わり、私の見てきた"ファッション研究"とこのファッション"の"研究を繋いでいきたい。研究所がまだコンパクトな規模の時点で、多様なメンバーのなかに私のような立ち位置の研究者を迎え入れてもらえたことは、私にとってはすごく意味のあることでした。だからこそ必ずチームとして、組織として意味のある結果にしていきたいと思うのです。

文系研究者のキャリアパス

これは文理問わないのかもしれないけど、少なくとも自分の体感としては文系院生の抱える不安はとてつもなく大きい。文系は不用と言われ今でも熾烈なのに更に過酷になりそうなポスト争い、非常勤講師すら獲得が困難、補助金や助成金の少ない。なにもかもに絶望。幸いにもファンドを得られた方だと思うのですが、それでも次のポストのあてがないと家賃も払えない、税金も払わなきゃならないのに無収入。博士課程の院生ともなると研究者としては駆け出しですが、どうしても就職した同年代と比べてしまうし、家族に迷惑かけ続けるのもつらい。

文化研究をしていると、研究者としての民間就職はあまり馴染みがありませんでした。でも、対象をよく理解した研究者なりの関わり方がもっとあるのかもしれない。チームの中にいるからこそできるリサーチや、提供できるスキルと知識があると思うのです。

耐えてても自分の環境がすぐに良くなるわけはないし、文系研究者キャリアパスの開拓の一例として試行錯誤しつつ、自分自身もより良い研究環境になれば最高ですよね。好きなことを選ぶことは不遇に耐えることではない、私自身そう思えるようになりたかった。

とりあえず頑張ってみよう。

とはいえ自分の専門を成果に結びつけていくためには、自身の研究を進めていくのはもちろんですが、分野の異なる研究者や多様な立ち位置の人が扱いやすい形として知見を提供するスキルを磨いていかなきゃと思っています。文章を書くこと、調査を組むこと、キュレーションや資料や素材集め、少し嚙った服作り、そこから必要なものをブラッシュアップさせていくと同時に、それらをプロジェクトに繋げていくことに意識的になる必要があると思っています。そしてコミュニケーションも。

まだまだ研究環境としては整備途上ですし、個性の強い企業風土で、実際にどこまで実現できるかはまだまだ未知数。ここからは自分の努力次第だと思っています。ここで何をしたいかと同時に、どこにいても研究者としてどうありたいか、自問自答し続けながら。なによりも、楽しいくやっていけたらいいな。

大学院には在籍しておりますし、執筆や翻訳などのお仕事も積極的にやっていきたいと思っています。まだまだ未熟なところだらけですが、今後ともよろしくお願いします!

※写真はうちのもふもふず。

この記事が参加している募集

入社エントリ