令和のマイホームの建て方no7(住宅ローン)
~プロが教える土地の購入から注文住宅を建てるまで~
夢のマイホームまでのステップ4:住宅ローンの選び方
ステップ3では、マイホームづくりは常に予算との戦いだと説きました。
住宅ローンのことを考えると、本当に頭が痛くなってしまいます。
”令和のマイホームの建て方”のno1でも、土地を購入してI工務店で家を建てるご夫婦のケースについて取り上げましたが、条件やつなぎ資金、提携先の銀行の有無などによって複雑に絡み合う住宅ローンを十分に理解して選択することはとてつもない難題です。
そのため住宅ローンについて検討する際には、必ずプロに相談されることを強くおすすめします。
とはいえプロの助けを借りるにしても、自分自身で住宅ローンについてある程度の知識を持っているに越したことはありません。
どの住宅ローンを選ぶにしても、自分自身で納得した上で決めるべきだからです。何しろ住宅ローンを払い続けるのは、あなた自身なのですから。
では、住宅ローンを選ぶ際にはどんなことを考えると良いのでしょうか。
住宅ローンに関しても、ネット上には情報が溢れています。
そこでこのステップ4では、実際の現場を見てきたプロ目線から、住宅ローンを利用する際に知っておいておきたい3つのポイントについて解説していきたいと思います。
ポイント1:変動金利か固定金利か
住宅ローンについて考える時、真っ先に考えるのは変動金利と固定金利、どちらが良いのか?ということでしょう。
● 変動金利:相対的に金利が低いため、全体の返済額が安くなる可能性がある。しかし金利が上がると返済額も増えてしまう。
● 固定金利:金利は高めだが、借入時に返済額が確定するため安心して利用できる。
日本では超低金利政策がずっと続いてきたので、住宅ローンも変動金利を選択する人が多かったのですが、今後は金利も上昇傾向に移行するように見受けられます。そのため変動金利と固定金利、どちらを選択すれば良いのか非常に悩ましいのが現状です。
固定金利は一昔前なら変動金利型をベースにして一定期間の金利を固定するという「固定特約」も人気でしたが、今は検討する人も少なくなっています。
むしろ、固定金利と言えばやはり「フラット35」。住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供している住宅ローンです。
返済期間は最長35年で、金利と返済額が借入時に確定するため、ライフプランが立てやすくなります。
では、現時点でフラット35と変動金利とではどちらがお得なのでしょうか?
2023年12月現在、フラット35の金利は1.89%。5,000万円を35年ローンで借り入れた場合、月々の返済額は162,822円となります。
変動金利は金融機関によって異なりますが、0.4%で計算すると月々の返済額は127,595円。フラット35との差額は35,227円。35年の総支払額では約1,480万円も違ってくることになります。
とはいえ、これはあくまでも金利が変わらない前提での計算なのは言うまでもありません。
ただ現状においては、例えば変動金利の利息が10年後に1%になったとしても、総支払額ではやはり変動金利の方がお得になります。
なぜなら、金利は借入金額の残高に対してかかるから。
住宅ローンを借り始めた最初の時期が当たり前ですが借入残高は多いわけですから、初期はとにかく金利が低いほうが返済額も少なくなるわけです。
では、これから金利はどれほど上がっていくのでしょうか?
昨年から今年にかけて、日本を除く先進国では物価上昇(インフレ)を抑えることを目的とした大幅な利上げが行われました。
その結果、日本とその他の国での金利の差が非常に大きくなっています。
<2023年現在の各国の政策金利>
● 日本:-0.10%
● アメリカ:5.25%~5.50%
● ヨーロッパ(ユーロ圏):4.25%
● イギリス:5.25%
● オーストラリア:4.10%
日本でも物価上昇や各国との金利差が円安を招いているという指摘を受けて、今後は政策金利が上がる公算が高いでしょう。政策金利が上がると、住宅ローンの金利にも影響が及びます。
ただし、日本で住宅ローンの金利が急に2~3%も上昇するとは考えにくいので、今後も引き続き変動金利の方がお得という状況が続くかもしれません。
というのも、日銀は10月31の金利制作決定会合で、最大1%としていた長期金利の変動許容幅を修正し、1%を一定程度超えることを容認すると発表しました。
しかし変動金利が指標としているのは長期金利ではなく短期金利であり、短期金利は引き続き超低金利が続いています。
それに加えて、顧客獲得のために各銀行が住宅ローンの金利を抑えていることも大きく関係しています。
住宅ローンは各銀行にとって重要な金融商品であるため、様々な優遇措置が取られているのです。
例えば、じぶん銀行では住宅ローンの変動金利は0.169%(2023年12月現在)となっています。
しかしこれは色々なオプション(優遇措置)をつけた結果で、0.169%の金利で住宅ローンを借り入れれるためにはau回線、電気サービス、J:COMなどのサービスをセットで契約しなければなりません。
じぶん銀行の変動金利の基準金利(各銀行の原則的な住宅ローン金利)は2.341%で、そこからの引き下げ幅が-2.022%ですから実際の金利は0.319%、そしてさらにセット割引を適用することによって0.169%になるという仕組みになっているのです。
私の記憶の限りでは各銀行ともここ25年位は基準金利はほぼ上がっていませんから、こうした各銀行の独自のサービスによって住宅ローンの金利がむしろ下がっている現状になっているのです。
もしこれから仮に金利が1%上昇したとしても、じぶん銀行で最大の引き下げ幅を受け続ければ、実際の金利は1.169%となります。
フラット35の1.89%と比較すると、それでもまだ変動金利の方がお得ということになりますね。
もちろん将来の金利のことを確実に言い当てることはできませんが、今のところは変動金利の住宅ローンの方がおすすめと言えそうです。
<プロからのアドバイス>
● 住宅ローンは引き続き変動金利の方がお得に思える。しかし変動金利のメリットを最大限に受けるには各銀行が設定した条件をクリアする必要があるため、しっかり確認することが重要。
ポイント2:ネット銀行かリアル銀行か
住宅ローンを検討する際にもう一つ考えなければならないのは、ネット銀行とリアル銀行のどちらで借りるのが良いか?という点です。
ネット銀行とリアル銀行にもそれぞれメリット・デメリットがあるため、一概にどちらが良いかと言い切ることはできません。
そのため、自分の状況にあった銀行を選ぶことが大切です。
ネット銀行を利用する一番のメリットは相対的に金利が安いこと、そしてWeb上で契約が完了できることです。
平日の昼間に銀行を訪れるのが難しい人でも、ネットで簡単に住宅ローンの事前審査ができる時代になりました。
どうせ借りるのなら、少しでも金利が低い方がいいに決まっています。
とはいえ、ネット銀行にはあまり知られていないデメリットがあります。
それが、申込みの煩わしさです。
昔は不動産会社が提携している金融機関以外はお客様からの申込書をお預かりできなかったので、私たちのような中小企業は苦労しました。今はその点、とてもありがたい時代です。
しかしネットで住宅ローンの事前審査を申し込むと、本審査もお客様自身で申し込まなくてはなりません。
不動産に関して銀行から聞かれても、普通の人はうまく答えられないことも多いですよね。そういうときのために私たちのようなプロが控えているのですが、ネット銀行では、本審査の終了後でないと私たちがお客様に代わって金融機関と話すことはできないのです。
これが、お客様にとってはかなり面倒になってしまう。
もちろん銀行からすると本人確認や個人情報も含めて、他者を間に挟むわけにはいかないという理屈も良く分かります。
no1で紹介したI工務店にお願いしたご夫婦のケースでは、提携先のネット銀行Sで住宅ローンを申し込む場合、最初から最後まで私たちのような不動産会社が銀行担当者と話すことはできませんでした。
さらにそのご夫婦は、自分たちで事前にI工務店の提携銀行でるネット銀行Sで事前審査を申し込んでいたのですが、それも破棄しなければなりませんでした。
一度ネットで申し込んでいる事前審査をキャンセルし、改めてI工務店経緯で事前審査をやり直さないといけない。
一見すると便利そうなネット銀行ですが、こうした煩わしさもあるわけです。
リアル銀行なら、スタッフと相談しながら申込書類も整えられるため、お客様側のストレスはぐっと少なくなります。
便利さを取るか、安さを取るかというのはどんなサービスにも当てはまることですが、総支払額の大きな住宅ローンの場合はさらに慎重に決定しなければなりません。
基本的には金利の低いネット銀行を利用するのがおすすめなのですが、ネット銀行の住宅ローンはある程度の知識がある人でないと難しい。電話などの相談窓口を設けているネット銀行もありますが、やはり店舗の窓口で専用のスタッフと相談できるリアル店舗と比べると安心感が違います。
そのため、特にネット銀行の住宅ローンを希望する人は、必ずプロの助けを借りるようにしてください。
<プロからのアドバイス>
● 少しでも低い金利を使用したいのなら、ネット銀行の変動金利がおすすめ。ただし、その場合はプロの助言を仰ぐことはマスト。
ポイント3:団体信用生命保険をどうするか
フラット35などの一部例外を除き、住宅ローンを利用する際には団体信用生命保険(団信)をセットで申し込むことが前提となっています。
団信とは住宅ローンの返済中に契約者が亡くなったり、重篤な障害を負ってしまったりした場合にローン残高を肩代わりしてもらえる住宅ローン専用の生命保険のことです。
さらに最近は、この団信に8大疾病などの特約をつけることを勧めるネット銀行も多く存在します。
死亡や重篤の障害だけではなく、ガンや脳卒中、糖尿病などの日本人がかかりがちな病気の時にも住宅ローン返済の一部または全額免除を受けられる(条件は各金融機関によって異なる)ため、検討したいと思う人も多いでしょう。
しかしこの疾病特約が曲者で、申し込みには健康診断書の添付が必要になります。持病はなくても中性脂肪が高かったりすると、団信は通っても8大疾病特約は不可だったということもありがち。
私のお客様でも先日、奥様が妊娠中に健康診断を行ったら血圧が高く、それが原因で疾病特約が通りませんでした。色々と心配事も多かったのでしょうね。
その健康診断は事前審査用だったため、出産後の本審査で改めて健康診断してみると血圧は正常に戻っていました。本人としては団信だけのつもりだったのに、結果的に疾病特約も通ってしまったという…。
こうなるともう、健康診断の結果の良い時に住宅ローンの本審査をしましょう!ということになりますよね。
疾病特約の保険料は、基本的に住宅ローンの金利に上乗せとなります。
上乗せの額は金融機関によって異なりますが、ガンのみなら0.1~02%、8大疾病は0.3~0.4%の上乗せというのが一般的です。
仮に0.3%の上乗せとすると、フラット35で借入金額5,000万円をすると、35年の総額の差額は306万円。1ヶ月あたり約7千円の上乗せとなります。
これを高いととるか安いと見るかは人それぞれですが、団信の特約は途中解約ができません。また住宅ローンの返済が終わると特約の契約も終了となります。
そのため、自分が入っている保険の内容とよく見比べた上で特約の加入を検討することをおすすめします。
また最近はネット銀行を中心に、疾病特約を無料で追加できる住宅ローンも登場しています。
新しいサービスもどんどん出てきますので、より良いサービスを見抜く力が求められます。
この項では住宅ローンについて知ってくべき3つのポイントを取り上げましたが、これは最低限必要な情報にすぎません。
住宅ローンを申し込む際にはほかにも審査、税金の控除、乗り換え、繰り上げ返済などなど、検討しなければならないことは山ほどあります。
そうした点すべてについて独学で理解を深めるのは、時間と労力の使い方としてもったいないと言わざるをえません。
むしろ、信頼できるプロの助けを借りるのが一番の近道であることはno1でも説明した通りです。
もちろん、個人としてもできることは色々とあります。
たとえば今は、無料で住宅ローンの相談ができるサービスも提供されています。
こうしたサイトでは無料で事前審査もできますし、本審査、実行までのサポートも受けられます。
自分のケースで、どこの銀行の住宅ローンが一番条件が良いかを知るのにも、とても便利だと思います。
とはいえ、急ぎの場合や業者との対応までしてくれるかというとそういうわけでもないでしょうし、最終的な結論を下すためにもやはりプロの助けを借りることが最善と言えるでしょう。
<プロからのアドバイス>
● 団信の疾病特約や無料相談サービスも使い方しだい。自分一人で悩むのではなく、プロの力を上手に活用しよう。
数多ある住宅ローンの中で、あなたに一番ピッタリものを探し出すのは、私たちプロの仕事。
住宅ローンに頭を悩ませるくらいなら、どこに住むか、どんな家にするか、どんな生活を実現したいかに思いを馳せるほうがよほど有益です。
住宅ローンを選ぶ際にもぜひ、プロの助けを借りてください。
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