【被害者支援】被害者支援は難しい、と言葉を濁さず真剣に向き合う、被害者支援に答えはない

はじめに~
被害者支援はその業務に直面するまで問題意識を持たれないことが多い。自分もそうだった。今の仕事が20年経ち、今やっと本気で被害者支援に向き合うことができた。
これから悩む方々のために参考になれば幸いだ。
※参考文献~警察庁被害者支援体験記(令和5年)

事件が発生し、いきなり、遺族対策や性犯罪被害者等に対する被害者支援を担当することになった。
そんな司法関係者、性犯罪や人身売買等の団体職員などが世の中には存在する。
それまで被害者支援について本気で学んだり、長時間の教養を受けてきた人は数少ないと思う。
警察の強行犯係などであれば、検視を通じて家族対応があるためどのような対応をすれば良いかは経験で分かると思われるが、それでは全く足りない。付け焼き刃でしかない。
性犯罪被害者対応の経験値は中々つめないので情報収集は必須。
重大な殺人、交通死亡事故、性犯罪だけではなく、飼い犬が轢かれてしまったり、傷害被害にあったり、盗難被害にあったりしても、全て被害者への「気持ち」が大切だと思う。

(1)一人目
『真摯に真心をもって、相手の心に気持ちを寄せること』
『被害者らのこれまでの経験や思いに対して想像力を働かせること』

被害者遺族の講話を聞き、自身が担うべき被害者支援とはどういうものかと真剣に考えることとなる。
被害者支援の書籍を読み漁り、講演会、研修会に参加し自分なりの被害者支援を追求、模索した。
しかし、考えれば考えるほど支援に『これ』という正解はない。
相手の捉え方や支援のやり方によって正しい支援というのは変わってくる。
前記2個の指針を胸に被害者家族と接してきたが、この姿勢が果たして正しかったのか、私の独りよがりになっていなかったか。
もしかすると「上辺だけ」と捉えられていたかも知れない。
だが、被害者家族から「どうかこれからも、あなたのその優しさと細やかさを忘れないでくださいね。」との手紙を受け、自分なりに信じてやってきた姿勢や思いは少なからず伝わったのだと実感した。


(2)二人目(住居侵入被害者)
2年前に住居侵入被害にあった被害者。
未だに当時の事件に類似する状況(夜間、パトカーの赤いランプを見る等)に陥ると、不安のあまりフラッシュバックしつつ、自身を守る行動を取り、顔をぐしゃぐしゃにして号泣する。
被害者は普段、元気に挨拶をし、笑顔を絶やさず、既に心も身体も元気になった、『立ち直っている』と周囲は勘違いする。だが、一人になると、夜間になると不安で不安で仕方がなく、安堵する場所である自宅で怯え、2年過ごしてきていた。
些細なことではあるが、自分の姿を見せるなどし、自分にもできることがあると気が付かせてくれた夜であった。
被害を実際に経験していない私達が、被害者と同じ立場になることはできない。
ただ、被害者の苦しい心の内を聞き、相手の求めていることを察して寄り添うことはできる。
被害者に対してできることは本当に少ないが、だからこそできることは精一杯やろうと心に誓うきっかけとなった。
被害者が本当に笑えるようになる日をともに目指す。
『笑っていても心は泣いている。』この言葉は忘れてはいけない。


(3)三人目
交通重傷事故。被害者は全治半年で脳に障害を負ったため退院後は施設入所が確実となっていた。そんななか被害者の妻は会うたび「相手の方にも家族がおありでしょうから。その後生活は大丈夫か。気に病まれたりしていないか。」と相手を気遣い、慈悲深い振る舞いをしていた。
そんな被害者の妻に対して『何かしてあげられないだろうか』と。このとき湧き上がった気持ちこそが被害者支援だと実感した。
支援として私ができることは、『被害者がどのような状況で事故にあったのか解明すること』や、『被害者の生活のサポートや被害者の妻の生活のサポート、介護生活を送るための窓口の提供』があった。
事件によって被害は様々で、その人によって必要としている支援も様々である。

第一 事件捜査によって被害者とその家族の気持を一段落させること
第二 被害者とその家族の気持に寄り添い、話を聞き、どのような支援が求められているのか読み解くこと
第三 つらい思いをする被害者をひとりでも減らすこと

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