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肩関節内圧と肩関節安定性の関係

どうも肩関節機能研究会の郷間です。
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みなさんもなんとなく”関節内圧”という言葉を使ったことはあるのではないでしょうか?
今回はそんな”何となく知ってる関節内圧”をしっかりと理解し臨床に落とし込んでいただければと思い、『肩関節内圧と肩の安定性』というテーマでまとめさせていただきました。


本記事を読んでいただくことで
・関節内圧とは
・関節内圧を調整組織とは
・関節内圧調整が破綻して起こる病態
について理解することができます。


では早速、普段とは少し違った視点で肩関節をみていきましょう。



肩関節内圧と安定性の関係

肩関節は基本的には陰圧です。
陰圧とは関節の内部の圧力が外部の圧力よりも低い状態であり、通常はこの”陰圧”により肩関節は安定しています。

実際、肩関節内に造影剤・生理食塩水・空気を注入後に、亜脱臼やApprehension(関節不安感)を訴える例も少なくありません¹⁾。

つまり、肩関節内圧は肩関節安定性に関与しているということがわかります。


ここで気になるのが関節内圧の正常と異常です。
関節内圧に関するいくつかの報告をありましたのでまとめてみました。

不安定性と非不安定性の関節内圧

Josephら(2019)は肩関節に不安定感または疼痛の伴う18~45歳を対象に、関節内に10㏄の造影剤(Contrast)を注入後、圧力トランスデューサーを使用して関節内圧を記録しました²⁾。

結果は
非不安定性 60.8±37.6mmHg(15-117mmHg)
不安定性  41.9±14.0mmHg(30-64mmHg)
でした。

ここで注目すべきポイントは圧の平均ではなく変動数値です。
非不安定性は30-64㎜Hgと変動数値は30前後ですが、不安定性は15-117㎜Hgでありその変動数値は102です。

こちらの報告では対象が少ないため対象者が増えれば数値も変わる可能性もありますが、”不安定性の場合は関節内圧の変動数値が大きい”ということは非常に重要なポイントだと思います。

私なりの解釈も含みますが、肩関節に不安定感を訴える非外傷性肩関節不安定症、反復性肩関節脱臼などは、脱臼・亜脱臼の繰り返しにより常に肩関節周囲の緊張が高く、一見”緩そう”にみえて”硬い人”が多いです。

無意識化で脱臼を避けるために肩関節周囲の緊張が高くならざるを得ないのは非常に理解できますが、機能面を考慮すると”良く動くけど安定している肩関節”というのは必須の条件と考えています。

話は戻りますが、不安定性を訴える例で関節内圧の変動数値が大きい理由として、単に関節が弛緩している例普段から筋緊張が高く、筋が短縮している例が混在していたと考えています。

疾患別の関節内圧変動

こちらでは結果だけまとめさせていただきます

癒着性関節包炎いわゆる凍結肩群は造影剤注入(Contrast injection)によって正常群よりも関節内圧が有意に上昇し、回旋腱板筋断裂群は正常群よりも関節内圧が有意に低値を示しました³⁾。

腱板断裂群で関節内圧が低値を示した背景として、その断裂により造影剤が関節内から関節外に漏れた(Leak)ことが原因としています。

また、Hashimotoら(1990)も腱板疎部損傷や動揺性肩関節症も正常群と比較して関節内圧上昇のピーク値が低いことを報告しました。

造影剤注入後の圧も変動する

一つ非常に興味深い話をしたいと思います。
ここまでの内容はあまり臨床的ではない話でしたが、下記の内容は非常に臨床的であり理学療法士にも関わり深い内容となっています。

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