パーソナルトレーナー藤井自伝40

居候生活からの脱却

アルバイト生活を始めて数ヶ月が経ったある日、急に電話が鳴った。
相手はたこ焼き時代から一緒に頑張ってきた大学の同級生であった。

「俺、海外に行くことになった!」

いきなりのカミングアウトである。
どういうことなのかピンとこない。

どうやらたこ焼き屋時代からの常連のお客さんのツテで、ぜひ海外に出店する新店舗でパーソナルトレーナーとして来て欲しい、ということだった。

というのもその同級生は完全に我流ではあるが、ムキムキのトレーニーである。
大学時代にトレーニングにハマり半年ぶりに姿を見せたと思ったら、普通のスポーツマン体型から見事に逆三角形でくびれている、実際に生で見ても首のすげ替え写真に見えるほどの変貌を遂げたくらいなのである。

ボディビルのアジアチャンプとどちらが候補になるかで勝ったのだからすごい。
そしてシンガポールに行くことが決まり、これから海外生活をするのだという。

数カ月後、同級生が海外に旅立った。
それからというもの

「海外マジでいいよ」

「海外で働いたほうが絶対に良い」

などなど、度々電話がかかってくるようになる。

「お前もきなよ」

少し冗談半分本気半分で誘われるが冗談として流していた。
そして海外に行ってから数カ月後。

「本気でこっちきなよ、とりあえず代表の人と面接組むからさ」

半ば強引に海外行きを勧められるのである。
これも僕を気遣っての行為であるから断ることもできないのだ。

もうこの時点で気持ちは決まっていた。
面接はビデオ通話にて行われる。
映る上半身のみスーツでビシッと決め、下はパンツで臨んだ。

問題なく面接を終え、シンガポール行きが決まることになったのである。

続く

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