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コロナ禍の地方政治は、何が変わって何が変わらなかったのか ~令和2年度の富山県議会を振り返って~

富山県議会を題材に、コロナ禍の1年を、3つのターニングポイントで振り返ってみる

皆さん、こんにちは。藤井大輔@富山県議会議員です。
気が付いたら、令和3年度が始まっていました。
新型コロナウイルスに翻弄された令和2年度は、まさに失われた1年と言えるでしょう。人との接触もない、夜の懇親会もない、地域のお祭りもなければ、オリンピックもない。
人間とは、人と人のつながりを元に社会を形成し、その生活圏を広げてきたわけですから、それとは真逆の行動をとらざるを得なかったコロナ禍の1年は、本当に難しい1年でした。とはいえ新年度になったからといって、新型コロナウイルスが消えるわけではないので、令和3年度も難しさは継続していくのですが……。

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私が所属する富山県議会を例にとって、令和2年度のコロナ禍での地方政治が、どのように機能していた(もしくは機能してなかった)のかを3つのターニングポイントで振り返ってみたいと思います。

ターニングポイント① 対岸の火事と思っていたら、緊急事態宣言発動へ(2020年3月~4月頃)

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令和2年4月7日に緊急事態宣言が首都圏を中心に発令され、富山県でも4月17日からGW明けの5月6日まで外出自粛や飲食店の休業要請が出ました。新型コロナウイルスを中国大陸での対岸の火事、もしくは横浜港の豪華客船だけのものと甘くみていた私たちに、強い当事者意識をもたらしました。

富山県では高齢者施設や公立病院でクラスターが発生したこともあり、医療介護現場では感染症防止対策がこの時期から高い意識をもって実施され、県当局もPCR検査体制や病院の病床確保等の環境整備に奔走していました。
また、飲食店や小規模事業者向けの休業協力金、従業員給与支払い等の運転資金への制度融資など、矢継ぎ早に支援策を展開していきました。富山県議会では4月28日に臨時議会を開催し、350億円規模の補正予算を承認。その中には、各議員に寄せられた県民からの要望を反映し、国の制度に富山県独自の上乗せを行ったものもありました。

この時期は、県当局と県議会(私の場合は自民党会派の政務調査会)が密に連携しながら、新型コロナ対策の方針を決めていったように感じます。私の所属する会派は30人余の大所帯でしたから、会派のLINEトークルームには連日多くの議員が、県民の声を書き込んでおりました。

ターニングポイント② 夏の第2波後の小康状態の時期に、国と県のリーダーが変わる (2020年9月~10月)

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新型コロナは暑さに弱いという前評判を覆して、夏の第2波が襲来。いったんコロナが収束したかに見えかけた6月頃に、コロナ対策よりも経済対策を、という論調が強くなり国は「Go Toトラベル」「Go To イート」等の施策を実施。しかし、第2波の襲来により再び慎重論が盛り返しました。
富山県でも8月は、4月のピーク時に迫る感染者数でしたが、9月には小康状態に。その流れもあり、富山県議会での9月定例会は「新型コロナの危機をチャンスに!」といった論調が富山県議会でも多くを占めていました。

曰く、“東京一極集中のリスクが露見した。いまこそ地方分散型社会へ”“テレワークが主流になり、どこに住んでいても仕事ができるように”“そのためにもデジタルによる社会変革(DX)を進めるべき”といったような話です。私も9月定例会の予算特別委員会で同様の主張をしたところでした。
それを受けて、当時の石井隆一県知事は、富山県でのDX推進のために光ファイバー網を県内全域に配備するなど積極投資の姿勢へと転換。それ以外にも、感染防止対策の強化、医療・介護等提供体制の整備、事業の継続と雇用の維持、県民生活への支援、経済活動の回復向けた取組みをはじめ、安全・安心の確保、社会基盤・生活基盤の整備に係る事業など、9月では異例の補正予算額、約670億円を可決しました。

しかし、9月定例会後に行われた富山県知事選挙では、積極姿勢を示した現職ではなく、行政経験のない民間出身の新田八朗氏が当選しました。この背景には、いつまでも収束する気配の見えない新型コロナ対策に、県民の多くが先の見えない日常において疲弊し、せめて県政のリーダーには新しい変化を求めた、ということがあったのではないかと。

国においても、9月に安倍首相が退任し、菅首相が誕生しました。安定した政権運営の手腕が買われたものと思いますが、新型コロナによる閉塞感の打破を求める国民の声は、徐々に菅総理に厳しい評価を下すようになります。このあたりは、富山県知事選と同じような心理が働いたのではないかと推察します。

ターニングポイント③ 冬の第3波で再び緊急事態宣言。令和3年度は過去最大規模の予算編成へ (2021年1月~3月)

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年末年始を経て、感染拡大が全国に波及し、2021年度年明け早々から緊急事態宣言が発令。富山県でも1月18日から31日まで、飲食店を中心に時短営業等の要請を行いました。第1波の休業協力金の反省を踏まえ、対象事業者や支払い金額等の見直しをしたところですが、富山県では同時期に降った災害級の大雪対策の不備もあったため、行政の対応に疑問を呈する声が、私のような議員の元にも数多く届きました(この時期に私も立候補した、富山市長選の予備選が重なっていたことも関係ありますが)。

コロナ禍と大雪で炙り出されたのは、一人暮らし高齢者世帯や、ひとり親を始めとする生活困窮にある子育て世帯、高齢の親と障がいを持つ子を抱える世帯、常時在宅医療や介護が必要な世帯など、これまでの医療や福祉の制度では支援の行き届きにくかった世帯の実情です。

令和3年度に組まれた予算は、国が約107兆円、富山県が約6300億円と、どちらも過去最大規模となっています。増額の理由は、ワクチン接種や危機管理体制強化などの新型コロナ対策があるから、と納得しがちですが、予算の多くはデジタル化や事業再構築など企業への融資促進や、国土強靭化加速化計画による公共工事など経済対策が中心。
医療や福祉のはざまで苦しんでいる世帯への支援にも配慮は見せていますが、その予算額は全体から見ると小さく感じてしまいます。

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富山県議会の令和3年2月定例会では、代表および総括質問、一般質問と予算特別委員会を併せて34名が登壇し、予算編成方針を中心に知事や県当局を質しました。
新田知事におかれましては、私のメモによると、全部で165回の答弁をされましたが、富山県を起業数で日本一にしたい、トップセールスで企業誘致を行う、15億円規模の中小企業向けリバイバル補助金を創設し、令和のニューディール政策として公共事業費を確保する等、民間出身というご経歴もあって経済対策への答弁に力が入っていたように感じました。
私が未熟なのだと思いますが、知事の答弁を聞いても、知事が目指す「ワンチームでビヨンドコロナのワクワク」という富山の姿がよくわかりませんでした。コロナで炙り出された行政の構造的な弱点について言及が少なかったことも、正直残念な印象となりました。

コロナ禍は、一般生活者と政治が近づく大きなチャンスだったのではないか


コロナ禍の“異常な”1年を振り返るには、あまりに拙い情報と文章だったと思いますが、私は地方政治にとってコロナ禍は、一般生活者と政治が近づく大きなチャンスだったと感じています。行政、特に中二階と揶揄される県の行政に対し、これほどまでに要望が個人から寄せられることはなかったはずですから。

私としては、一般生活者の声を重視するのはもちろん、声をあげることのできない困窮した生活者へも想いを寄せる機会だと感じています。このあたりは、1月の富山市長選予備選でも主張させていただきました。そのためには、マーケティングやソーシャルワーク、データアナリティスク等の体系化された基礎的な技術が大切だとも考えています。その姿勢を崩さずに、令和3年度も「コロナを乗り越え、未来への礎を作る大事な1年」として頑張っていきたいと思います。
まずは4月18日投開票を迎える、富山市長選・富山市議会議員選のダブル選挙で、党の推薦候補者を中心に、しっかり支援してまいります。

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最後に。
藤井大輔の富山県議会での令和3年2月定例会一般質問が、動画で見られます。私にとって、初めての新田知事への議会質問ということで、ずいぶん気負ってしまいました(涙)。自分としては、令和2年度を総括しつつ未来への展望につながる質問をしたつもりでしたが、知事からのご答弁は、やや塩対応であったように感じます。

よろしければご視聴ください(1時間ありますが……)。
https://toyama-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=1214

令和3年2月定例会


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富山県議会 インターネット議会中継
令和3年2月定例会 3月8日 本会議 一般質問
自由民主党 藤井大輔 議員
1 富山県が目指す経済施策の成果目標について
2 平常時と災害時のギャップに対応するための行政構造改革について
3 地域共生社会の実現と住民主体のコミュニティ形成について
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以上です。
長文駄文に、お付き合いいただきありがとうございました。