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お家時間を 楽しく!

<蜜蜂と遠雷(恩田陸)の本と映画を見て> 

 この本を読んだのは6年前のことだったと思う。その時、恩田陸さんの スケールの大きさに驚いた。  ピアノコンクールの話なのだが、いろんな難解なピアノ曲が出てきて、活字で見る限りそのピアノ曲がどんな曲なのかわからず、只々 膨大な曲名と共にピアノ奏者が出てくるので、恩田陸さんの資料集めはたいへんだったろうな!と 内心労いと尊敬の気持ちが入り混じったのを覚えている。 そこで 出版社の葉書に「これは難しい!ピアノ曲を知らない私達のために 是非とも映画にして欲しい」と書いたのだ。 そういう意見が多かったのか、数年後 映画化された。

しかし残念なことに すぐ映画を見ることが出来ず、遅ればせながら 今日映画を見ることになった。それも「Amazonの見放題」で!

本を読んだ後、ピアノ曲が分からないから映画にしてよ!と言ったものの、どんな映画に仕上がるのか? それを楽しみにしていた。が これはたいへんだろうなあ!と思っていた。しかし、なるほど、すばらしい! 映画は 的を絞って描かれていた。 

コンクールをテーマにした内容の本は とても難しいと思う。 耳で聞き 目で見 音で聞いた方が 分かりやすい。とりわけ、コンクールの課題曲が「春と修羅」であることが 注目された。

宮沢賢治の「春と修羅」を 菱沼忠明が楽譜にしているとは 知らなかったどんな曲に仕上げたのかとても楽しみだった。その曲は 映像で知る限り 期待していた通りすばらしい曲だった。その上、最後の楽章を ピアノ奏者のカデンツア(即興曲)で終わらせるという作曲者の心憎いアイデアがあったのもおどろきだった。 その部分で ピアニストが 大いに腕の見せ所になるのか それとも コンクールとしての採点の要になるのか…? ハラハラドキドキ…

ピアノの神様と言われているホフマン先生がこのコンクールに送り込んで来た「ジン カザマ」と言う16才の少年は 養蜂家の父を持ち、幼いころから世界中を旅して育った根っからの自然児だった。ピアノ曲はホフマン先生の弾く曲を耳に、ピアノは手作りの木製のおとの出ないピアノ。それ以外は ミツバチの羽の音と自然界の音だけを 聞いて育ってきた。自然界の「喜び」だけを身に着け 「恐れ」を知らない少年が コンクールに加わることによって 及ぼす周囲への影響

いかに私たちが 既成概念に囚われ生きているか! この本は訴えているのだ。

審査員同志の会話:「我々の強迫観念は何処からきたのかねえ」                        「コンプレックスからよ。 歴史に名を遺すのに必死なのよ」

世界中のピアニストが 自分の限界ギリギリまで追い詰めてピアノ奏者として名を残しているか。それを知れただけでもこの本は素晴らしいとおもっているのに、映画化されたことによって 私の知らないピアノ曲を聴くことが出来、聞きたいと念願していた宮沢賢治の「春と修羅」の曲を聴けたことは本当に幸せでした。

この「蜜蜂と遠雷」と合わせて、宮下奈都さんの「羊と鋼の森」を読んでいたことはラッキーでした。この「羊と鋼の森」は ピアノ調律師さんの話だったので、ピアニストと調律師との関係が とても分かり 胸にストン! くるものがありました。

「本と映画」を 合わせて比べるのも 面白いですね。


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