見出し画像

新年おめでとうございます

あけまして おめでとうございます

しめまして さようなら!

なんて、新年早々お屠蘇気分で ご挨拶、

今年もよろしくお願いいたします

 暮れ30日の夜、息子の送ってくれた「フグ料理」で再会
父親である息子の首あたりまで背高のっぽになった孫に 背中の曲がりそうな私は「上を向いてしゃべろう!」になってしまっていた。

 盆と正月それに法事(法事もしばらくはない)しか帰って来れない孫に 何をしてあげられるか?

何にも出来ないばあちゃん 何にも出来ないけど、今回は 一味ちがった。

何が 違った?

 神棚と仏壇の掃除は 私が済ませていたので、新年の玄関飾りとカレンダーの取り換えを 息子に任せ、今回は比較的ゆったり過ごせた暮れだった。

 普通、朝昼兼用の新年元旦のお祝いの宴が済むと、その後の「いちばん暇な時間」を 息子たちは2階に上がり 昼寝をしたりゲームをしたりして のんべんだらりと時間を過ごすのが、常だ。
 1階に残された私も 年賀状を見たり うたた寝をしたりしたけれど、後、何もしなくても よい優雅な時間に、珍しくピアノを弾きたくなった。
 陽の落ちかけた気分がいい時間だから…と いうものの、耳ざわりな曲は 避けなければならない、お正月気分に沿うような 静かな曲の方がいい!と、いうことで、
まずは C. Debussyの「月の光」から入った。
 この曲は もう誰でも知っているし「ゆっくり弾ける」ところがいい!
お屠蘇気分のばあちゃんの頭でも、ま! 弾けるかあ?と、ゆっくり弾いてみる。 ところが、難問があった!
それは〈♭5つから、途中転調して#4つになり、又♭5つに戻る>という「音符読みの頭の回転」が、すんなり行けないのだ。
この時は 必死で読んで、かろうじて 弾けたけど、だんだん こないして 老いていくんかなあ…? と、ちょっと弱気になってしまう。まあ、今回は とにかく ゆっくりやけど 弾けたんで 良しとしよう!
お陰で この曲を弾いたことによって気持ちが 落ち着いた。
これで 俄然 元気になったのか、今度は 簡単なジャズを弾いてみよう!
と、いう気になって 自分でも驚いた。

ええ…?、 久しぶりのお屠蘇の影響かあ?
しかし、本人は大真面目に【こころにしみる簡単なジャズ】の楽譜本に差し替えていた。

「上を向いて歩こう」「この道はいつか来た道」などから始まり、「思い出のサンフランシスコ」や「モナリザ」等の簡単な曲に興に入る。     おお、ひさしぶり!
もちろん、完璧に弾けるわけでもなく、アレンジしたように聞こえるごまかしが出来るようになっただけで、ばあちゃんは 完全にお屠蘇気分で曲に酔っていた。と、そこへ 孫が2階から降りて来て
「ばあちゃん、台所 なんか手伝おか?」と聞いて来た。

エ?! そんなこと、はじめてやし!?
ォ、ㇹッ!ッて…!! ばあちゃんは喜んだ。

「いや~、手伝ってくれるん?」と、手を止めると
「うん」と言って、孫の白い細い指が そっと音もたてずにピアノのキイを撫でるように触った。
私は 去年のように 「弾くか?」と 敢えて聞かず
「そんなら、始めよか? 丁度 後1時間したら お寿司がくるからね」とピアノを離れた。

 ピアノが弾きたい!と、積極的になるまで、ばあちゃんの拙いピアノ曲で 孫の琴線を多少とも刺激することが出来たら、年に数回しか会えないけれど それはそれで ばあちゃんの目的は達成したことになる。

 私は平然と「ほな、手 洗おか?」と洗面所に向かい、順番に 泡石鹸で手を洗い、台所へ向かった。
冷蔵庫のドアを開けて
「なにが ええかなあ?」と 孫と二人で覗き込む 幸せ!

う~ん、こんなん 無いで~!
わたしゃ しあわせやなあ!

「今晩、お寿司が来るけど、何がええ? 煮物は飽きたやろ? あ そや、 生協のんやけど『サラダキッチン』美味しいえ!」と、取り出した私の手の中の真空になった品を 物珍しそうに見つめる孫、これは 説明が必要やな
「これな、鳥の胸肉で 柔らかいし黒コショウが効いてておいしいんよォ ばあちゃん これ好きやねん」と言うと、「鳥なら『サラダチキン』かと思うけど…」と言って にっこり笑って即座に「これにしよう!」と答えてくれる。 
ばあちゃんの心は踊った。
いいぞ、いいぞ!
「ほな、野菜が いるなあ」と言いながら、野菜室を引き出して
「どれにする? 好きなん 決めてえ!」
袋に入った出来合いの野菜サラダを2袋を 見比べて
「これにしよう!」と、男らしく決まった。
「ほな、この大皿の真ん中に出してくれるか?スプラウトもあるけど」
「うん、これものっけよ!」いいぞ、いいぞ!
「そんなら、ばあちゃんは チキン切るからな! ああ、イチゴが残ってるの あれ 使うてしまわな あかんなあ」
あたふたと冷蔵庫から イチゴの入ったタッパを出し
「野菜サラダの上に チキンを置くから その間の適当な所にイチゴを置いてくれるかあ?」
「うん、そうする」
そんな調子でサラダチキンの盛り付けが出来た。
「いや~、きれいやなあ!上手に盛り付けたなあ、ほな、これ 炬燵に持って行ってくれるかあ?」
「うん!」
孫が 手盆で大皿を運んでいると、2階から息子が降りてきた。
と、同時に「ピンポ~ン!」とチャイムがなった。
「お寿司の配達や~、は~い!ごくろうさまあ!」と、ばあちゃんは玄関へ猛ダッシュ!で 走って行った。

と、言うようにして 元旦の夕食がはじまった。
おせちの残りとお寿司の横にチキンサラダが 赤いイチゴが可愛く散らされている。
「これ、00(孫)が盛り付けてくれたんよ、きれいやろ?」
すると、息子が
「ゲームするんやったら、下行ってばあちゃん手伝ってあげ!って、言うたんや」と言ったんで、私は間髪入れずに「それは ええアドバイスやな!」
と言えた。 80になると、褒めるタイミングも ばっちし! ばあちゃんも成長したんやなあ! 自分で感心する。

そして 食事の間に分かったことは
手伝いの合間に 孫が勉強していたことだった。
「へ~、偉いねえ!」と褒めると「遅れを取り戻してるんや」と息子が言う 「そやな、この春中学3年生やもんな、どこ行きたい?」
「まだ、決めてない」と孫
「そんなん、ゆっくり決めたらええわ、えらいえらい!」
ばあちゃんの役目は 「ほめること」と「自信をつけてあげること」
それしか 出来ない。
「ばあちゃんの【右腕は息子命】【左腕は孫命】」と 言うばあちゃん、 それを聞くと、息子が
「そんなん聞くと、なんや 肩の荷が重いわ!」と、言って苦笑いした。

 翌日2日の朝は8時に起きて、朝食を取り バタバタと帰りの荷物を車に積みはじめた。ばあちゃんは 頃を見計らって孫に「お別れやから、ハグしようか!」と言うと、今までは 恥ずかしそうにしていた孫が「うん」と言って、しっかりハグをしてくれた。お別れにもう一度孫と握手して、それから 車に乗る前に硬い握手をした息子は
「ほな、到着したら連絡します。火の用心と戸締り 忘れんとな!」
昔 息子に言ったように、息子が私に言う。
「わかりました。忘れんとやります」ばあちゃんが しおらしく言うと、 「うん」と 息子は満足気に大きく首を縦に振った。
孫は じっとその様子を見ている。

シートベルトをして
「じゃ!」と 運転席の窓ガラスを半分上げながら、息子と孫は二人同時に 片手をあげて車を発進させた。
「安全運転でな!」
聞こえたのか聞こえなかったのかわからないけど、小さくプッと合図をならして いつもの角を曲がって行った。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?