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一問一答!建築のキホン⑥

このnoteでは、『月刊不動産流通』の過去の記事を紹介しています。

今回は、「一問一答!建築のキホン」
建物の構造、関連法規の基礎知識を、(株)ユニ総合計画の秋山英樹氏がQ&A方式で分かりやすく解説するコーナーです。

『月刊不動産流通2019年7月号』より、「管理する賃貸住宅で、給湯管から
水漏れが発生しました。修理発注の際に気を付けておくべきことは?」
を紹介します。

Q 管理する賃貸住宅で、給湯管から水漏れが発生しました。修理発注の際に気を付けておくべきことは?

A 築20年以上の建物の給湯管には、銅管が使用されていることも多く、腐食によって穴が空くこともあります。全面的に交換することで、再度の漏水を防げます

銅管の給湯管は、要注意!

2000年以前に建てられた建築物は、給湯管に銅管が使用されているケースが多く、その耐用年数は30年程度といわれています。しかし、銅管は早期に劣化することがあり、たびたび水漏れの原因になっています。管内を流れる水の温度や、過大な流速による摩擦で、配管の表面に小さな穴が空く「ピンホール現象」の発生により、そこから配管の腐食が進行するのです。

簡易的に穴を塞いでも、一度付いた錆びが取れるわけではありません。別
の箇所で発生する可能性も高いです。そこで銅管の場合は給湯管の全面交換
をおすすめします。ちなみに、室内の給水管が金属管の場合、同様の破損が
起きる可能性が高いので、こちらも水漏れが発生した際に全面交換した方が
よいでしょう。

建築工法でコストに差異

現在、給湯管の交換には、樹脂製の架橋ポリエチレン管やポリブデン管を使用するのが一般的です。これらの材料は「硬めの水道ホース」をイメージしていただければよいと思います。

給湯管は、床下に設置されていることが多く、床の工法によって配管の交換に掛かるコストも変わってきます。例えば、在来工法の床下補強部材である「根太(ねだ)」が組まれている場合(図表参照)、根太が邪魔で新たな配管を引き込めず、床を全面的に剥がす大規模な工事になってしまいます。一方、根太ではなくより厚い合板で床面を支える「根太レス工法(剛床工法)」は、床下に床組みを支える補強がある程度で、十分なスペースがあ
り、床の一部に穴を開けるだけで配管の交換が可能です。

これら樹脂製の管の耐用年数はメーカーによると30~40年とのこと。ちな
みに、新設する給湯管を「さや管」と呼ばれる樹脂製の管に通しておくこと
で、将来的に発生する配管交換の際、工事がスムーズになります。

水漏れ原因は、
給湯管とは限らない

鉄筋コンクリート造の賃貸マンションの天井部分で水漏れが発生した場
合、まずは上階の様子を調べると思います。水漏れが多いと、上階の床下に
水が溜まり、スラブのひび割れから下階の天井に水が漏れます。つまり、水
漏れがある天井の直上からの漏水とは限らないと覚えておきましょう。

古い建物は、給排水管が下階の天井裏に設置されており、配管が破損する
と、天井から水が漏れ出てきます。しかし、水漏れの原因は、給湯管の破損
だけとは限りません。単純に、住民が水を大量に溢れさせた場合もあるでし
ょう。また、気温が低い時に起こりやすい、配管の保温不足による結露も水
漏れの原因となります。これは配管に保温テープなどを巻き付けることで防
止できます。また、換気扇のダクト(配管)の問題もあります。通常、ダクトは雨水の浸入防止のため、外側に向かって勾配を取っています。これが内部へ下がっていると、風雨の強い時などは雨水が流入して、水漏れとなる
ことがあるのです。

◇  ◇  ◇

なお、漏水で管理物件に損傷が発生したとき、壁のシミ・汚損は火災保険、
家財の損害は家財保険の給付を請求できますが、老朽化により破損した配管
の修繕費は保険の対象とならない場合があることを知っておくと、オーナーへの提案にも生かせるでしょう。

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